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5.誤解 タイキ視点
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『今すぐ科学準備室にこい。』
昼休みになると、見える場所にいるのに近づけないもどかしさが苦しくて、ナギにメッセを送った。考えた末にまた高圧的な命令しているような文を送ってしまって後悔した。
来てくれないかもしれない・・・。
そう思っていたが、ナギは来てくれた。
はぁ、やっぱりナギは可愛いな。
「こっちに来い。」
「はい。」
はぁ、俺はなぜナギの前でこんな偉そうな命令口調で話してしまうんだろう・・・。
もっと優しくしたいのに。
ナギはやっぱり俺が怖いのか、ビクビクしながら俺の近くまで歩いてきた。
抱きしめるくらいいいよな?それなら痛くないし、怖くもないはず。
俺はナギをそっと抱きしめた。
昨日みたいに熱があるわけじゃないけど、やっぱりナギは温かくて、俺の腕の中にすっぽりと入るくらい小さい。あぁ、幸せだ。
そう思っていると、ナギは俺の背中に手を回してきた。
抱きしめ返してくれるなんて思っていなかった。嬉しい。
「・・・可愛い。」
「え?」
嬉しすぎて思わず心の声が漏れていた。
「何でもねぇよ。」
「ご、ごめん。」
抱きしめ返してくれたということは、心底嫌われているというわけでもないんだろう。無理矢理やったのになぜだ?俺は嬉しいが、ナギの心が読めない。
俺が目を閉じるよう言うとギュッと目を閉じた。そんなナギが可愛すぎて俺は唇に触れるだけのキスをした。
「はぇ?」
「なんだ?期待してたのか?抱かれると思ったか?」
なぜまた俺は、そんな意地悪なことを言ってしまったのか・・・
「あ、えっと、そんなことは・・・。」
「無理矢理はもうしねぇよ。」
「そっか。分かった。」
これ以上一緒にいたら、また俺は暴走しかねない。名残惜しいが俺はナギに「じゃあな」と言って部屋を後にした。
前は見ているだけでよかったのに、一度触れてしまうと、温かさを柔らかさを知ってしまうと、もう一度もう一度と求めてしまう。
俺は毎日昼になるとナギを呼び出して抱きしめてキスをした。
俺が教室に戻って、いつものつまらない取り巻きたちの自慢話を聞いていると、ナギも教室に戻ってきて、自分の机で小さい弁当を広げて食べていた。
リスみたいだ。弁当を抱えてちょっとずつ食べる姿まで可愛い。
横目でナギを見ながら暖かい気持ちになっていると、最近やたらベタベタと触れてくる巨乳自慢の女が俺にふざけてキスをしようとしてきた。
「やめろ、キモい。」
心の中は吹雪のように冷え切って、出た声も低く冷たい声だった。
本当にキモいわ。せっかくナギとキスしたこの唇に他人が触れるなど虫唾が走る。
「何よ。キスくらいいいじゃん。」
女は怒って教室を出て行った。
あんな奴はもう二度と戻ってこなくていい。
放課後になると、本当はナギと一緒に帰りたかったが、従姉妹がしばらく家に滞在するとかで、駅まで迎えに行かなければならないため、仕方なく駅に向かった。
スマホがあれば道など分からなくても辿り着けるだろ。俺のことを連れ歩きたいだけのために俺を呼び出して、本当に迷惑だ。
腕を絡められて歩き辛くて仕方ない。
門を曲がった時に、後ろに誰かの気配を感じてチラッと見てみると、まさかのナギだった。
買い物袋を持っていると言うことはスーパーにでも寄ったんだろうか。
ナギの家の近所ではないし、油断していた。
ナギには誤解されたくない。別にこいつはただの従姉妹で何も疚しいことはないんだ。俺は絡んだ腕を振り解いてナギに向かって走った。
そうしたら、なぜかナギは逃げた。何でだよ。
でもナギの足は遅かった。
間も無く追い付いて腕を掴んでこちらを向かせる。
ナギは全力で走ったのか、肩を揺らしてゼェーハァーと息が上がっている。
「何で逃げんだよ!」
「ご、ごめんなさい。誰にも言わないから。」
「はぁ?」
「あの綺麗な女の人が恋人だって誰にも言わないから。安心して。それに僕、友達とかいないし誰にも言う人なんていないし。」
「勘違いすんなよ!もういい!」
「あ・・・。」
何だよそれ。俺の恋人はナギだろ?なんであんな女が恋人だと思われなければならない?しかも誰にも言わないから安心しろという。
違う、そうじゃない。一番勘違いされたくない相手に勘違いされて、しかも一番安心させてやりたい奴に・・・。
自棄になって俺はナギに背を向けて戻った。
自分がやったことだが、その行動に自分で凹んだ。
安心させてやりたいのに、俺がナギを不安にさせて傷つけた。
全然上手くいかねぇ。
ずっとどうしようか迷っていたが、意を決してメッセージを送った。
『ごめん』
言葉、全然足りないじゃん。俺。情けねぇ・・・。
そしてそのメッセージに返事が来ることはなかった。やっぱり浮気を疑ってるのか?それで怒っているのか?
やっぱりちゃんと説明しなければいけない。あれは従姉妹で何もないんだと。
でないと、ずっと誤解されたままになってしまう。
俺は翌朝ナギの家まで行って、ナギが家から出てくるのを待った。
「よぉ。」
「おはようタイキくん。」
「なんで何の反応もないんだよ。」
「え?」
「昨日の夜のメッセ。」
「あ、ごめん。何て返せばいいのか分からなくて、そのまま寝ちゃった。」
「そうか。怒ってるのかと思った。」
また俺はそんな脅すような口調で・・・
これは不機嫌なんじゃないんだ。ナギの前に立つと、普段の俺が出せない。
ナギは怒っているわけではなかったらしい。
「え?なんで?」
「いや、いい。嫌われてないならいい。」
「??嫌う?なんで?」
嫌われてないのか?俺、実はちゃんとナギに好かれてる?んなわけないか。
もっとナギに好かれる人間になりたい。
「昨日のあいつ、従姉妹だから。別に何もねーから。」
「あ、うん。そうなんだ。」
「だから、その、心配いらないから。」
「あ、うん。」
校門まで歩いて行くと、また名残惜しいがナギと別れて歩いていく。
昼休みになると、見える場所にいるのに近づけないもどかしさが苦しくて、ナギにメッセを送った。考えた末にまた高圧的な命令しているような文を送ってしまって後悔した。
来てくれないかもしれない・・・。
そう思っていたが、ナギは来てくれた。
はぁ、やっぱりナギは可愛いな。
「こっちに来い。」
「はい。」
はぁ、俺はなぜナギの前でこんな偉そうな命令口調で話してしまうんだろう・・・。
もっと優しくしたいのに。
ナギはやっぱり俺が怖いのか、ビクビクしながら俺の近くまで歩いてきた。
抱きしめるくらいいいよな?それなら痛くないし、怖くもないはず。
俺はナギをそっと抱きしめた。
昨日みたいに熱があるわけじゃないけど、やっぱりナギは温かくて、俺の腕の中にすっぽりと入るくらい小さい。あぁ、幸せだ。
そう思っていると、ナギは俺の背中に手を回してきた。
抱きしめ返してくれるなんて思っていなかった。嬉しい。
「・・・可愛い。」
「え?」
嬉しすぎて思わず心の声が漏れていた。
「何でもねぇよ。」
「ご、ごめん。」
抱きしめ返してくれたということは、心底嫌われているというわけでもないんだろう。無理矢理やったのになぜだ?俺は嬉しいが、ナギの心が読めない。
俺が目を閉じるよう言うとギュッと目を閉じた。そんなナギが可愛すぎて俺は唇に触れるだけのキスをした。
「はぇ?」
「なんだ?期待してたのか?抱かれると思ったか?」
なぜまた俺は、そんな意地悪なことを言ってしまったのか・・・
「あ、えっと、そんなことは・・・。」
「無理矢理はもうしねぇよ。」
「そっか。分かった。」
これ以上一緒にいたら、また俺は暴走しかねない。名残惜しいが俺はナギに「じゃあな」と言って部屋を後にした。
前は見ているだけでよかったのに、一度触れてしまうと、温かさを柔らかさを知ってしまうと、もう一度もう一度と求めてしまう。
俺は毎日昼になるとナギを呼び出して抱きしめてキスをした。
俺が教室に戻って、いつものつまらない取り巻きたちの自慢話を聞いていると、ナギも教室に戻ってきて、自分の机で小さい弁当を広げて食べていた。
リスみたいだ。弁当を抱えてちょっとずつ食べる姿まで可愛い。
横目でナギを見ながら暖かい気持ちになっていると、最近やたらベタベタと触れてくる巨乳自慢の女が俺にふざけてキスをしようとしてきた。
「やめろ、キモい。」
心の中は吹雪のように冷え切って、出た声も低く冷たい声だった。
本当にキモいわ。せっかくナギとキスしたこの唇に他人が触れるなど虫唾が走る。
「何よ。キスくらいいいじゃん。」
女は怒って教室を出て行った。
あんな奴はもう二度と戻ってこなくていい。
放課後になると、本当はナギと一緒に帰りたかったが、従姉妹がしばらく家に滞在するとかで、駅まで迎えに行かなければならないため、仕方なく駅に向かった。
スマホがあれば道など分からなくても辿り着けるだろ。俺のことを連れ歩きたいだけのために俺を呼び出して、本当に迷惑だ。
腕を絡められて歩き辛くて仕方ない。
門を曲がった時に、後ろに誰かの気配を感じてチラッと見てみると、まさかのナギだった。
買い物袋を持っていると言うことはスーパーにでも寄ったんだろうか。
ナギの家の近所ではないし、油断していた。
ナギには誤解されたくない。別にこいつはただの従姉妹で何も疚しいことはないんだ。俺は絡んだ腕を振り解いてナギに向かって走った。
そうしたら、なぜかナギは逃げた。何でだよ。
でもナギの足は遅かった。
間も無く追い付いて腕を掴んでこちらを向かせる。
ナギは全力で走ったのか、肩を揺らしてゼェーハァーと息が上がっている。
「何で逃げんだよ!」
「ご、ごめんなさい。誰にも言わないから。」
「はぁ?」
「あの綺麗な女の人が恋人だって誰にも言わないから。安心して。それに僕、友達とかいないし誰にも言う人なんていないし。」
「勘違いすんなよ!もういい!」
「あ・・・。」
何だよそれ。俺の恋人はナギだろ?なんであんな女が恋人だと思われなければならない?しかも誰にも言わないから安心しろという。
違う、そうじゃない。一番勘違いされたくない相手に勘違いされて、しかも一番安心させてやりたい奴に・・・。
自棄になって俺はナギに背を向けて戻った。
自分がやったことだが、その行動に自分で凹んだ。
安心させてやりたいのに、俺がナギを不安にさせて傷つけた。
全然上手くいかねぇ。
ずっとどうしようか迷っていたが、意を決してメッセージを送った。
『ごめん』
言葉、全然足りないじゃん。俺。情けねぇ・・・。
そしてそのメッセージに返事が来ることはなかった。やっぱり浮気を疑ってるのか?それで怒っているのか?
やっぱりちゃんと説明しなければいけない。あれは従姉妹で何もないんだと。
でないと、ずっと誤解されたままになってしまう。
俺は翌朝ナギの家まで行って、ナギが家から出てくるのを待った。
「よぉ。」
「おはようタイキくん。」
「なんで何の反応もないんだよ。」
「え?」
「昨日の夜のメッセ。」
「あ、ごめん。何て返せばいいのか分からなくて、そのまま寝ちゃった。」
「そうか。怒ってるのかと思った。」
また俺はそんな脅すような口調で・・・
これは不機嫌なんじゃないんだ。ナギの前に立つと、普段の俺が出せない。
ナギは怒っているわけではなかったらしい。
「え?なんで?」
「いや、いい。嫌われてないならいい。」
「??嫌う?なんで?」
嫌われてないのか?俺、実はちゃんとナギに好かれてる?んなわけないか。
もっとナギに好かれる人間になりたい。
「昨日のあいつ、従姉妹だから。別に何もねーから。」
「あ、うん。そうなんだ。」
「だから、その、心配いらないから。」
「あ、うん。」
校門まで歩いて行くと、また名残惜しいがナギと別れて歩いていく。
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