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4.最悪の始まり タイキ視点

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可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い。
前から可愛いと思ってたけど、もう俺、心臓爆発する。

本当は空き教室に呼び出して、告白するつもりだった。
ちゃんと交際を申し込むつもりだった。
でもあいつは、めちゃくちゃ怯えた様子で、俺の目さえ見なかった。

腹が立った。俺の方を向けよ。まさか俺のこと知らないとかじゃないよな?
俺のこと好きになれよ。俺のことを嫌でも意識するように、忘れられないよう体に教え込みたいと思った。
その怯えた小動物のような顔が涙に濡れるところを見たいと思った。

「やめて・・・・」

気づいた時には、床で小さく丸まって震えるこいつを見下ろしていた。
膝の辺りまで脱げたズボンと、シャツがはだけた白い胸、千切れたボタン。
そして、静かに涙を流すこいつと、尻からは血と混ざった俺の精液がトロッと流れていた。

そんなつもりじゃなかった。今更そんなことを言っても遅い。
俺は、嫌がるこいつを苛立ちに任せて、欲望に任せて、無理矢理犯した。取り返しがつくわけもない。
そして俺は出しかけた手を引っ込めて逃げ出した。ポケットティッシュと、取り上げたメガネをナギのところに置いて部屋を出た。

次の日、ナギは学校を休んだ。
そりゃあそうだよな。俺と会うのは怖いよな。

『明日は学校に来い』

あの日スマホを奪って勝手に登録したナギの番号。何度も打ち込んで消してを繰り返して、そして最終的に送信したメッセージは、そんな何の気遣いもない冷めた内容だった。
返信は来ない。当たり前か・・・。

そしてその次の日もナギは休んだ。
さすがに心配になって朝からどうしようか迷った挙句、俺は熱を出しているらしいと担任から聞いて、冷却シートやゼリーやレトルトのお粥、スポーツドリンクなどを買ってナギの家に行った。
玄関のチャイムを押すときなんか、少し震えていたと思う。

親が出てきたら、ナギの様子だけ聞いて買ってきた物を渡して帰ればいいと思った。
でも、出てきたのはパジャマ姿のナギだった。

可愛い。ナギってパジャマで寝てるんだ。

玄関を開けて俺を見た瞬間、ナギはドアを閉めようとした。
俺は咄嗟に靴を玄関の隙間に挟んで閉められないようにしたけど、これ、余計に怖くないか?

ナギは渋々といった感じで家に入れてくれた。
でも、まだ熱があると、少し赤い顔で言った。
俺のせいだよな・・・血も出ていたし。

俺はナギを横抱きにすると、ナギを部屋まで連れていった。
軽い。俺より15センチくらい背が低いナギだが、体も華奢で軽かった。
熱があるからか、温かくて、これがナギの熱かと思うとドキドキした。

ナギは、また俺が何かするのではないかと怯えた様子を見せていたけど、もうナギが望まないのにそんなことしねぇよ。
もう地の底に落ちたくらい嫌われているかもしれないが、これ以上嫌われたくはない。

俺は甲斐甲斐しくナギの世話を焼いたけど、ナギは戸惑ってもういいと言った。
いや、そうだよな・・・。
俺はナギに背を向けて、どうしても言わなければならない言葉を口にした。

「・・ごめん・・・。」

喉から搾り出した言葉は、想像以上に小さくて、ナギに聞こえなかったかもしれない。

「え?」
「無理矢理したから。」
「あ、、うん、、。」
「ナギはの彼氏は俺だからな。それだけ言いにきた。」

ちゃんと謝らなきゃと思っていたのに、なぜかまた高圧的な態度をとってしまった。
でも、他の奴に取られるくらいなら、恐れられたとしても恋人という鎖で繋いで隣に置いておきたい。

「僕、男だけど。」
「はぁ?そんなこと言われなくても知ってる。」

なんだ?俺がナギのことを女だと勘違いしたと思っているのか?そんなわけないのに、ナギの思考は分からないな。

俺は彼氏という宣言をしたことで、浮かれながら家に帰った。
そして、翌朝は彼氏面してナギを家まで迎えに行った。
ナギは戸惑っていたけど、逃げたりはしなかった。
本当は手とか繋いでみたいが、それはまだやめておこう。

校門を抜けると、ナギから離れた。
このままナギと一緒にいたいが、俺の周りのアホな奴らがナギにちょっかいを出したら困る。
ナギを余計なことに巻き込まないためにも、学校では人目につく場所では離れていた方がいいだろう。
俺の周りの奴らは、皆自信過剰なんだよな。馬鹿みたいにプライドが高くて、俺の外見しか見てねぇ。俺を連れ歩いたり、俺と仲がいいことを周りにアピールしたいだけなんだ。くだらねぇな。
媚びてくんのも気持ち悪いし、ベタベタと触れてくるのも不快でしかない。
どうでもいいんだ。こんな奴らは。早く離れて行ってくれればいいのに。

冷たい態度を取れば、それはクールだと言われた。ちげえよ。お前らがウザいだけだっつーの。
ナギの透明感に比べたら、お前ら濁ったドブみたいだ。臭くて堪らねぇ。


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