【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。

cyan

文字の大きさ
上 下
57 / 62

57.帰宅

しおりを挟む
 

 僕はドラータ王国に戻って、真っ直ぐにあの木に向かった。
 メレディス様と出会ったあの木。
 宿に泊まるお金も無いし、僕は今日はこの思い出の木の上で寝ようと思ってたんだ。

 それで明日起きて、メレディス様の姿を一目見たら、また国を出て別の国にでも行こうかなって思ってた。


 ドンッ

 え? 何?
 僕が登った木にぶつかられたのは今回が二度目。
 一回目はお腹を刺されたメレディス様だった。今回は誰だろう? また刺された人じゃないよね?

 僕は恐る恐る木を降りて見てみると、そこにはメレディス様が寝ていた。
 また刺されたんじゃないよね?
 そっとお腹を見てみるけど、刺されてなかった。じゃあ何でこんなところで寝てるの?


「メレディス様?」
「レスター、愛しているよ。夢でもいい。会いたかった……」

 そう言いながらメレディス様は僕を引き寄せて抱きしめると、また眠ってしまった。

 僕のこと、まだ愛してるって言ってくれるの?
 僕はそれが嬉しくて、抜け出そうと思えば抜け出せるけど、そのまま大人しく抱きしめられていた。
 何日も木の上で仮眠をとる生活だったから、温かいメレディス様の体温で急に眠気が襲ってきて、起きていられなくなった。



「レスター?」
「あ、」

 メレディス様に名前を呼ばれて意識が浮上した僕は、咄嗟に逃げようとした。


「待って。お願いだ。待ってくれ」

 でも逃げられなくてメレディス様に腕を掴まれた。
 そして腕を引き寄せてまた抱きしめられた。ギュッと力を込められて、今度は逃げられそうにない。


「ごめんなさい」
「謝らなくていい。きっと私が悪かったんだ。レスターが逃げ出したくなることをしたんだ。ごめん。どうか話してくれないか? 直すから。嫌なところは直す。結婚したくないならしなくてもいい。側にいてほしい。レスターは私の唯一なんだ」

 唯一? じゃあエイミー様は?


「エイミー様は?」
「エイミー? なぜそこで祖母の名前が出てくるんだ?」
「祖母!? ソボっておばあちゃん?」
「あぁ。私の父を産んだ人だな」

 祖母……おばあちゃん……エイミー様はメレディス様のおばあちゃんなの?

「エイミー様の花って……」
「祖父が祖母のために品種改良した薔薇だ。それがどうした? 羨ましかったのか? それなら私もレスターの花を作る。エイミーよりもっと綺麗な花を作るぞ」

 メレディス様のおじいちゃんがおばあちゃんのために作った花?
 だからメレディス様も咲くと喜ぶの?


「ソファーの下のラブレターは?」
「なんだそれは? レスターがソファーの下にラブレターを置いていったのか? すまない見つけられなかった」
「違います。メレディス様がエイミー様に宛てたラブレター」
「は? なんだそれは。そんなもの知らない。私じゃないんじゃないか?」
「そんな……」

 ラブレターはメレディス様が書いたんじゃないの?


「もしかして、レスターはそれを見つけて不安になったのか?
 私が他の者を好いていると思ったのか?」
「……はい。ごめんなさい」

「よかった。私のことを嫌いになって出ていったわけじゃないんだな。いや、それもあるのか?」
「嫌いになんてなれません。僕はきっと、一生メレディス様しか愛せない」
「うん。私もだ。後にも先にもレスターだけだ。レスターしか愛せない。
 一緒に帰ろう?」

 馬鹿みたいにあんなのを信じて逃げ出してしまった僕に、まだ一緒に帰ろうなんて言ってくれるの?


「でも、僕は逃げ出してしまった」
「そんなことなど些細なことだ。レスターが側にいてくれるなら、それ以上に望むことなどない」
「僕、帰ってもいいの? 結婚式も、もう過ぎちゃったよね?」
「大丈夫だ。レスターの帰るところはちゃんとある。私がついているから心配ない」
「うん」

 本当は結婚式に間に合うように帰ろうと思った。
 帰る場所なんてないかもしれないけど、戻れるなら戻りたいって思ったのも本当なんだ。
 でも間に合わなくて、やっと今日、王都に着いたけど屋敷には帰れなかった。
 どんな顔して帰ればいいのか分からなかったし、屋敷に入れてもらえないと思ったから、僕はこの木の上で寝ようと思ったんだ。


 メレディス様は屋敷に馬車で迎えにくるよう手紙を飛ばした。


「レスター様!」

 ゼストは僕を見つけると、涙を浮かべて僕に駆け寄ってきた。

「ごめんなさい」
「大丈夫ですよ。ご無事で何よりです。さぁ、屋敷に帰りましょう」
「うん」

 怒らないの? なんで誰も怒らないの?


 メレディス様は僕を膝の上に乗せてずっと抱きしめてて、全然放してくれなかった。

「メレディス様、降ろしてください。僕は歩けます」
「じゃあ、手を繋いでいていいか?」
「はい」

 メレディス様は僕を抱っこしたまま部屋へ向かおうとしたけど、僕が降ろしてほしいって言うと少し寂しそうな顔をして降ろしてくれた。


「ソファーを確認したい。レスターが不安に思うようなものは燃やしてもいい」
「そんな……。そこまでしなくていいです」

 ゼストにも手伝ってもらって、部屋の中央に置かれたソファーをひっくり返すと、メレディス様はラブレターをじっくり読んでいた。

「なるほど。大好きだと、ずっとあなただけ愛することをここに誓うと。例え叶わなくても愛し続けるというような内容が書かれているな。確かに宛名はエイミーで署名は私の名前だ。私はこんなものは知らんぞ。誰かの悪戯か?」
「もしや……」

「ゼスト、なんだ? 犯人を知っているのか?」
「旦那様が幼い頃によくエイミー様に読んでいただいていた本ではありませんか?」
「本?」
「確かエイミー様の遺品の中にあった気がします。持って参りましょう」
「頼む」

 本? 何のことだろう?


 ゼストが持ってきた本を一緒に見てみると、誰にも見つからないようにこっそり手紙をやり取りするというゲームのような内容で、その中にソファーの裏に書かれた内容と全く同じ一節があった。

「思い出してきた。書いたような気がする。本の中では宛名に女性の名前が書かれていたから女性の名前を書こうと思ったんだが、母の名前は長かったから祖母の名前を書いたんだ。それ以外に女性の名前など知らなかったからな」
「そ、そうだったんですね……」

 そうなんだ……
 勝手に勘違いして、いつの間にか家出して、恥ずかしい。
 僕は繋いでいない方の手で顔を覆って俯いて、顔を上げられなくなった。


「誤解が解けてよかったですね。私は失礼します。何か御用があればお呼びください」

 そう言うと、ゼストは部屋を出ていった。


「レスター、私はレスターのことを愛している。レスターはどうだ?」
「僕もメレディス様を愛しているけど……」
「レスター、私と結婚して下さい」

 メレディス様は僕の手を握ったまま片膝をついて僕を見上げた。


「こんな僕でいいの?」
「レスターじゃないとダメだ」
「……はい。よろしくお願いします」

 いいの? メレディス様がいいって言ってくれるなら、僕はメレディス様の隣に戻りたい。
 
 
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

聖女の力を搾取される偽物の侯爵令息は本物でした。隠された王子と僕は幸せになります!もうお父様なんて知りません!

竜鳴躍
BL
密かに匿われていた王子×偽物として迫害され『聖女』の力を搾取されてきた侯爵令息。 侯爵令息リリー=ホワイトは、真っ白な髪と白い肌、赤い目の美しい天使のような少年で、類まれなる癒しの力を持っている。温和な父と厳しくも優しい女侯爵の母、そして母が養子にと引き取ってきた凛々しい少年、チャーリーと4人で幸せに暮らしていた。 母が亡くなるまでは。 母が亡くなると、父は二人を血の繋がらない子として閉じ込め、使用人のように扱い始めた。 すぐに父の愛人が後妻となり娘を連れて現れ、我が物顔に侯爵家で暮らし始め、リリーの力を娘の力と偽って娘は王子の婚約者に登り詰める。 実は隣国の王子だったチャーリーを助けるために侯爵家に忍び込んでいた騎士に助けられ、二人は家から逃げて隣国へ…。 2人の幸せの始まりであり、侯爵家にいた者たちの破滅の始まりだった。

【完結】最初で最後の恋をしましょう

関鷹親
BL
家族に搾取され続けたフェリチアーノはある日、搾取される事に疲れはて、ついに家族を捨てる決意をする。 そんな中訪れた夜会で、第四王子であるテオドールに出会い意気投合。 恋愛を知らない二人は、利害の一致から期間限定で恋人同士のふりをすることに。 交流をしていく中で、二人は本当の恋に落ちていく。 《ワンコ系王子×幸薄美人》

婚約破棄?しませんよ、そんなもの

おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。 アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。 けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり…… 「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」 それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。 <嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>

天使の声と魔女の呪い

狼蝶
BL
 長年王家を支えてきたホワイトローズ公爵家の三男、リリー=ホワイトローズは社交界で“氷のプリンセス”と呼ばれており、悪役令息的存在とされていた。それは誰が相手でも口を開かず冷たい視線を向けるだけで、側にはいつも二人の兄が護るように寄り添っていることから付けられた名だった。  ある日、ホワイトローズ家とライバル関係にあるブロッサム家の令嬢、フラウリーゼ=ブロッサムに心寄せる青年、アランがリリーに対し苛立ちながら学園内を歩いていると、偶然リリーが喋る場に遭遇してしまう。 『も、もぉやら・・・・・・』 『っ!!?』  果たして、リリーが隠していた彼の秘密とは――!?

政略結婚のはずが恋して拗れて離縁を申し出る話

BL
聞いたことのない侯爵家から釣書が届いた。僕のことを求めてくれるなら政略結婚でもいいかな。そう考えた伯爵家四男のフィリベルトは『お受けします』と父へ答える。 ところがなかなか侯爵閣下とお会いすることができない。婚姻式の準備は着々と進み、数カ月後ようやく対面してみれば金髪碧眼の美丈夫。徐々に二人の距離は近づいて…いたはずなのに。『え、僕ってばやっぱり政略結婚の代用品!?』政略結婚でもいいと思っていたがいつの間にか恋してしまいやっぱり無理だから離縁しよ!とするフィリベルトの話。

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

処理中です...