49 / 62
49.王太子様と僕
しおりを挟む「レスター、ちょっと相談がある」
メレディス様が陛下と話が弾んでいる時に、王太子様が小声で話しかけてきた。
「この場では言い難いことですか?」
「できれば、部屋で2人で話せないか?」
「分かりました」
王太子様は僕より3歳上で、妃が2人いる。でもまだ子供はいないみたい。
「メレディス様、僕は王太子様とお話があるので、お話が終わったら部屋に戻ります」
「いいが、気を付けるんだよ」
「はい」
僕は王太子様と連れ立って歩いて行った。
部屋に入ると、人払いされて、王太子様とテーブルを挟んで向き合って座った。
「レスターは、その……宰相殿とはどうなのだ?」
「どうと言われても、仲良くしているとしか言えないのですが」
「その、夜のことなんだが」
「夜? 夕飯はだいたい一緒に食べて、その日にあったことをお話ししたりして、一緒の部屋で寝てます」
「あぁ、閨事という意味で……」
「それは内容やテクニックのことですか? 頻度とか、それ以外ですか?」
王太子様は一体何を聞きたいのだろうか?
もしや、前に僕が悩んでいたように性欲が強すぎるとかそういうことだろうか?
「頻度は、どうだ?」
「今は2日置きかそれくらいですかね」
「か、回数は?」
「それは射精の回数ということですよね? うーん、僕のは数えたことないな。普通の日はたぶん3回くらい、お休みの前はもっと多いと思います」
「そ、そうか」
回数を話すのは少し恥ずかしい。
お休みの前とか、本当にたくさん出ちゃって途中からイッてるのに出なかったり、ほんのちょっとしか出なかったり、何回出てるのか分からないし。
「僕ももしかしたら同じことで悩んでいたかもしれません。
性欲が強すぎて魔法か薬で抑えないといけないくらい異常なのかと思って悩んでいて、それでメレディス様に相談したら大丈夫でした」
「……」
あれ? 違ったのかな?
急に黙ってしまった王太子様をジッと見てみたけど、俯いたまま固まっている。
「僕の悩みとは違いましたか?」
「あ、あぁ、すまない。逆なんだ」
「逆? 性欲が弱い? もしくは奥方様が強すぎるとかですか?」
「2人の妃は正直分からない。私がその、気分が乗り切らないというか、断念する日もあって、義務だと思うと尚更」
そっか。そういう悩みもあるのか。
確かに王族は世継ぎを作らなければならないから、プレッシャーが凄いのかも。
「僕が前に間違えて作ってしまった魔法陣を試してみますか?」
「間違えた?」
「そうなんです。記号の角度が違っていて、体力回復の魔法陣なんですが、性欲を高める効果がついていたんです。
それで、その魔法陣を強化したものを使った時は、朝までということになってしまって」
「それは凄いな」
「強化していない方をまず試してみますか? 体力回復の効果もあるので、疲れている日でも臨めると思います」
「レスター、頼む」
「分かりました。ベッドに貼るんですが、裏側に貼れば誰にも見つからないと思います。
明日持ってきますね」
「ありがとう」
王太子様に真剣な顔で、物凄くギュッと握手をされた。
そんなに悩んでたんだ。
そっか、相談しにくいよね。僕はメレディス様も男だから相談して分かってもらえたけど、女の人相手だと相談も難しいのかもしれない。
「このことは、他言無用でお願いしたい」
「分かりました」
そうだよね。たくさんの人を相手したとか自慢する人はいるみたいだけど、できなかったことを自慢するなんてないもんね。
翌日、僕は魔法陣を持って王太子様の元を訪ねた。
「もし効果が薄いようなら、少しずつ強化していきましょう」
「あぁ。そうだな。こんな相談に乗ってもらってすまない」
「気にしないで下さい。相談し難いですよね。分かります」
「レスター、君は本当に優しい。……そして美しいな」
「ダメですよ。僕はメレディス様以外の人とはできません」
僕は王太子様が僕の頬に伸ばした手を阻止した。
「そうだよな。すまない」
「冗談だってことにしておきますね」
「あぁ。そうしてくれ」
僕はそのまま王太子様の部屋を出て、メレディス様がいる執務室に向かった。
王太子様は僕を揶揄ったのか、それとも一瞬だったとしても本当にその気になったのかは分からない。
相談内容のこともあるし、誰にも相談できないから困る。
その後も何度か魔法陣の調整のために王太子様の部屋を訪れたけど、王太子様に怪しい動きはなかった。
なんだ。僕が過剰に反応しただけかも。
頬に髪が掛かってたとか、髪が乱れてたとか、そんな理由だったのかも。
自意識過剰? 恥ずかしい。
その後、王太子様の妃は2人とも懐妊して、王太子様からこっそり金貨を渡された。
「王家の未来を繋いだレスターの功績を、本当はもっと堂々と称えたいんだが、今はこれで我慢してほしい」
「気にしなくていいですよ。このことは内緒ですし、僕が色々な効果の魔法陣を作れるということも公にはしていないですから」
僕が王家に魔法陣を提供していることも、王家が身を守るために魔法陣を使用していることも秘密だ。僕が狙われるかもしれないという理由もあるけど、悪意あるものが盗んで対抗できるものを作り出したり、擦り替えられたりしないため。
それに、このことは王太子様と僕2人だけの秘密でメレディス様にも言ってないから。
金貨か。何に使おうかな。
145
あなたにおすすめの小説
過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます
水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。
家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。
絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。
「大丈夫だ。俺がいる」
彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。
これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。
無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
ぼくの婚約者を『運命の番』だと言うひとが現れたのですが、婚約者は変わらずぼくを溺愛しています。
夏笆(なつは)
BL
公爵令息のウォルターは、第一王子アリスターの婚約者。
ふたりの婚約は、ウォルターが生まれた際、3歳だったアリスターが『うぉるがぼくのはんりょだ』と望んだことに起因している。
そうして生まれてすぐアリスターの婚約者となったウォルターも、やがて18歳。
初めての発情期を迎えようかという年齢になった。
これまで、大切にウォルターを慈しみ、その身体を拓いて来たアリスターは、やがて来るその日を心待ちにしている。
しかし、そんな幸せな日々に一石を投じるかのように、アリスターの運命の番を名乗る男爵令息が現れる。
男性しか存在しない、オメガバースの世界です。
改定前のものが、小説家になろうに掲載してあります。
※蔑視する内容を含みます。
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
翼が生えた王子は辺境伯令息に執心される
尾高志咲/しさ
BL
「ふわふわな翼が!背中に?」
慌てる僕の元にやってきたのは無表情な美形婚約者。どどどうする!?
――ファンタン王国の第五王子ミシューの背中に、ある朝目覚めたら真っ白な翼が生えていた。原因がわからずに慌てふためいていると、婚約者の辺境伯令息エドマンドが会いにやってくる。美形でいつも無表情なエドマンドは王都から離れた領地にいるが、二月に一度は必ずミシューに会いにくるのだ。翼が生えたことを知られたくないミシューは、何とかエドマンドを追い返そうとするのだが…。
◇辺境伯令息×王子
◇美形×美形
◆R18回には※マークが副題に入ります。
◆誰にも言えない秘密BLアンソロジー寄稿作品を改題・改稿しました。本編(寄稿分)を加筆し続編と番外編を追加。ほのぼの溺愛ファンタジーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる