【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。

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27.帰国と再会(メレディス視点)

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 ヤバイ、本当に離れがたい。
 大人の余裕で待っていると告げたけど、私の方が寂しくて仕方ない。

 ずっと可愛いと綺麗だと、愛しいし大好きだと思っていたが、抱いてしまったら臨界点を超えてきた。
 レスターが可愛すぎた。
 声も反応ももちろん可愛いが、幸せだと涙を流したレスターに心臓をギュッと鷲掴みされて少し苦しいほどだ。

 本当はもっと何度も求めたかったが、初めてのレスターにそんな無理をさせてはいけない、まだこれから結婚して時間はたっぷりあるんだと自分に言い聞かせてグッと堪えた。


 レスターの成人まであと1ヶ月半。そんなに私は耐えられるのか?

 レスターは私を心配して色々な魔法陣を渡してきた。
 こんなに色々と揃えていたのか。

 帰りの道中はレスターが私のために用意した護衛と一緒だったが、その護衛に揶揄われるほどの落ち込み具合だった。

「メレディス様は本当にあの子のことが好きなんですね~」
「…………」
「顔に寂しいと書いてありますよ」
「当たり前だ。お前らには彼の愛くるしさが分かるまい」

 寂しい。見送られてから数時間しか経っていないというのに、もう寂しい。
 しかし、レスターに格好悪いところなど見せたくないと自分に喝を入れてなんとか仕事に取り組んだ。



「旦那様、レスター様はここにお戻りになられるんですよね?」
「あぁ、そうだがどうした?」
「それならいいのです。皆が寂しがっておりまして」
「皆とは?」
「私を含めこの屋敷の使用人たちです」
「なぜ使用人たちが寂しがるんだ?」
「旦那様が仕事に連れ歩かれる前はずっと屋敷におられましたので」
「まぁそうだな」

「レスター様には色々よくしていただいたのです」

 家令のゼストに話を聞いてみると、使用人にも色々な魔法陣を提供してくれたり、魔法をかけてくれたり、挨拶もしてくれるし気軽に話しかけてくれていつも癒されていたのだとか。

 住み込みの使用人のベッドだけでなく、私のベッドにも回復の魔法陣が仕込んであると言われた。
 知らなかった。確かに何ヶ月か前から睡眠時間が短いのに朝スッキリと起きれるとは思っていた。それはレスターがいるからだと思っていたが、魔法陣の効果だったのか。


「レスター様は連日帰りが遅い旦那様を心配されていたんです。それで私に相談に来られたんですよ」
「そうだったのか」
「治癒の魔法陣も作っていただいたので、それで腰痛がかなり楽になりました。
 直接治癒をかけてもらうより、魔法陣でじっくり治癒を流される方が腰痛には効果があるようです」

 全然知らなかった。

 よく見てみると、私が一人でいた時と比べて屋敷の中の空気が軽い。
 使用人たちの表情も明るいし、以前は私の顔色を窺っていた者たちも気軽に声をかけてくるようになった。
 私が家の中でピリピリした空気を出さなくなったということもあるかもしれない。
 いずれにしてもレスターの影響が大きい。
 あぁ、会いたいな。


 レスターからは5日に1度手紙が届く。
 レスターの兄が領地のために考えていたことを実行することにしたと。
 領主邸はどうせ僕は住まないんだからと、修理と内装を変えることで孤児院と学校を作るのだとか。墓の再建は領民も手伝ってくれたと書かれていた。
 街道の整備や、川の堤防も作っているらしい。
 農家の支援などもしているとか。

 私の秘書官で終わらせるのはやはり勿体無いな。
 彼は爵位を返納して私の元に来ると決めているようだが、本当にそれでいいのか?
 ベリッシモ伯爵家をこのまま終わらせていいのか?
 どうにかして存続できないものか。

 私とレスターの婚約はもう受理されている。
 レスターの考えを叶えてやりつつ、私にできることを探し始めた。



 
「陛下、私は婚約者を迎えに行ってきます」
「は?」
「隣国で成人の儀がありますよね。招待状が届いていたでしょう?私が行ってきます」
「ふぅ。まぁいいだろう。しかしまぁ誰も信じない誰も側に置かない孤高の宰相と呼ばれていたお前が変わるものだな」
「…………」

 結局私は待てなくなってレスターを迎えに行くことにした。

 急なことでかなり日程はギリギリになってしまったな。
 成人の儀には間に合わず、その後の成人のお披露目を兼ねた夜会にはなんとか間に合ったが、レスターが見当たらない。
 いないはずがないんだが、どこかと探していると、腕を掴まれ引きずられるように連れて行かれるレスターを見つけた。
 私が相手との間に入っても良かったんだが、レスターを悪目立ちさせてもいけないし、他国からの賓客である私が問題を起こすのも憚られたため、仕方なく騎士を呼んだ。


『貴族家当主に向かっての暴力行為だ!すぐに捕まえろ!』


 相手の男は拳を振り上げていたし、すぐに騎士に左右を固められて連れて行かれた。
 それをレスターは呆然と眺めていたが、急に笑い出した。

 ふふふふふ


「レスター」
「え?」

 私が呼びかけると、彼は振り向いて目を見開いた。

「ぇええ!?」
「ははは、驚いたか?待ちきれなくて迎えにきたよ」

 レスターのそんなに驚いた顔は初めて見たな。


「もしかして、騎士を呼んでくれたのはメレディス様?」
「そうだよ。遅くなってすまない。掴まれた腕は大丈夫か?」
「大丈夫です」

「レスター、成人おめでとう。会いたかったよ」
「ありがとうございます。僕もメレディス様に会いたかったです」

 もう我慢できなかった私は、レスターを引き寄せてギュッと抱きしめた。
 そうしたら、彼は当然のように私の背中に手を回して、私の胸元に顔を埋めた。


「あ!」
「ん? どうした?」
「ちょっと失礼します」

 レスターは私の後ろに回ると上着をペラっと捲った。

「ふぅ。よかった」
「レスターが心配すると思ってちゃんと魔法陣を貼ってきたよ」

 私が国に帰る時にもとても心配していたから、ちゃんとレスターにもらった防御結界の魔法陣を上着の内側に貼っている。

「はい。夜会会場には魔法陣を持ってきていないので、もし貼られていなかったら、僕がずっと魔法をかけておこうかと思っていました」
「そんなことをしたらレスターが魔力切れで倒れてしまうだろ?」

 私のことよりも自分のことを大切にしてもらいたいんだがな。
 しかし、私のことを心配して大切に思ってくれることが嬉しい。
 キスをしたい。レスターの甘い声を聞きたい。幸せで潤んでしまうエメラルドの瞳が見たい。

 今は我慢だ。私の最後の仕事がある。


「レスター行こうか」
「はい」

 レスターの顔はまたポーカーフェイスに戻り、私と共に会場へ戻った。

 
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