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魔王の私室

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「お前だ。お前が勇者だ。」
「え?」

俺が7歳の時に神官たちが俺の暮らす孤児院に来て、お告げが降りたと言って何も知らない俺を孤児院から連れ出した。みんなに挨拶する間も無く連れて行かれた俺は、ずっと鍛錬の日々だったし、16歳で成人を迎えると、仲間と引き合わされて修行の旅に出た。

ダンジョンにも行ったし、色んな魔物も倒した。死にそうになるようなことも何度かあった。真剣に取り組まなければいつ死ぬか分からない。いつからか笑うことなんて忘れてしまっていた。
そんな自分から笑みが溢れるなんて、しかも魔王であるディア相手に。人生とは分からないものだな。




「ユーリ、ここが我の部屋だ。ユーリもこれからはこの部屋で過ごすといい。」
「分かった。」

瘴気に満ちたどんよりと暗い部屋なのかと思ったが、全然そんなことはなかった。
木目調の家具が配置され、壁は真っ白だし窓は木ではなく氷を薄く伸ばしたような透明なものが嵌め込まれて明るい。
レースのカーテンが直射日光を和らげてくれるし、花のような優しいいい香りもする。
奥の方には大きなベッドが置いてあるが、白いレースの天蓋がふわふわと何枚もかかっていて、まるでお姫様の部屋みたいだと思った。



「ソファーに座るか?」
「あぁ、そうする。」
「お茶を用意するから少し待ってくれ。」
「分かった。」


<サモン>
「お茶と菓子を持ってこい。」
「主様かしこまりー」

50センチくらいの体長で、子供のような見た目だが羽と尻尾が生えている者が現れ、すぐに消えた。


「ディア、今のは?」
「小さい悪魔だ。我の使い魔のようなもので、呼び出して手伝いを頼んだ。」
「呼ばれない時はどこにいるんだ?」
「分からん。庭か街か、山か森か。その辺で自由に遊んでいるんだろう。」
「そうなのか。」


「主様おまたせー、持ってきたよ。」
「うん。ありがとう。」

小さい悪魔はまた急に現れて、テーブルにお茶と菓子を置くと、すぐに消えた。




「ユーリ、隣に座っていい?それか向かいか?床か?」

もじもじしながらディアがそんなことを言う。
床はさすがに可哀想だろ。

「普通に隣に座ればいいだろ?Comeおいで
「うん。」

嬉しそうに隣に座ると、俺の顔を見上げる。
褒めてほしいんだな。


「ディア、Good boyいいこ

優しく抱きしめてやると、少し照れながら満足そうに笑ってくれた。
俺の一言で、そんなに喜んでくれるなんて嬉しい。
 
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