1 / 12
魔王との対面
しおりを挟む「ふーん、お前が勇者か。何だ弱そうだな。しかも1人か。」
豪華な玉座に座って肘をつき、つまらなそうに俺を見下ろすのは魔王だ。
背中には蝙蝠のような真っ黒な羽が生え、恐ろしいほどに美しい容姿をした男だった。
真っ白な肌に漆黒の髪は床につきそうに長く、俺を見据える目はルビーの宝石みたいで、真っ赤な唇の端からは、牙のようなものがチラリと見えた。
「美しい・・・」
「そうだろう?我は美しいんだ。この世の何者よりもな。」
思わず俺の口から漏れてしまった呟きを魔王はご丁寧に拾って上機嫌にそう言った。
「そうか。」
「まぁ、お前もそれなりに整っているんじゃないか?」
「そうか。ありがとう。」
「それで何しに来た?」
「とりあえず仲間を解放しろ!」
魔王城に入る時、仲間たちは吸着性の強い結界に捕まって俺しかここへ辿り着けなかった。
まずは仲間の解放が先だと思った。
「なぜだ?外部から不法に侵入する害のある奴らを排除しようとしただけだ。自分の城を守るのに当然だと思うが?」
「じゃあ俺はなぜ排除されなかったんだ?」
「害意がなかったんだろ。もしくは魔王城の意思か。」
「魔王城の意思?」
「あぁ。魔王城は魔物みたいなものだからな。その仲間とかいう奴らを解放したいなら我ではなく魔王城に頼め。我は知らん。」
「魔王城!俺の仲間を解放しろ!」
「ククク、聞いたか?」
「何をだ?」
「魔王城の言葉を。」
「俺には何も聞こえなかった。」
「あぁ、魔物の言葉が分からんのか。人間は不便だな。ほれ。」
魔王が長い爪を俺に向けると、キラキラとした何かが俺に降り注いだ。
「何をした?」
「魔物の言葉が分かるようにしただけだ。」
「そ、そうか。」
「魔王城、俺の仲間を解放してくれないか?」
『俺の仲間?それ、お前本気で言ってる?』
「当たり前だ。」
『魔王様、勇者可哀想。』
「そうだな。魔王城、説明してやれ。」
『勇者、お前、魔王様を殺したらあの3人に殺されるよ。魔王様を殺さなくても殺されるけど。』
「そんなはずないだろ。あいつらは仲間だ。」
『そう思ってるのは勇者だけ。勇者が死ねば新たな勇者が産まれる。今代の勇者は弱くて優しいから早く死ねばいいと思われてるみたいだよ。』
「そんな・・・嘘だ。そうやって仲間の間を引き裂く算段か?」
「魔王城、見せてやれ。」
魔王が不機嫌にそう言うと、俺の前に四角い何かが浮かんで、その中には俺の3人の仲間がいた。
中に閉じ込められているわけではなく、遠見の魔法のようで、城門にベッタリと絡められた3人の様子が映し出されていた。
「良かったよねー」
「俺ら安全なここで勇者が死ぬの待ってればいいんだろ?」
「直接手を下さなくても魔王が殺してくれるからな。」
「マジラッキー」
「あいつが早く死んで新しい勇者が生まれないと、俺らが怒られることになるからな。」
「魔王頑張れー」
そんな・・・
仲間だと思ってたのは俺だけ?
まさか仲間だと思っていた奴らに死を願われていたなんて・・・。
62
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説
浮気をしたら、わんこ系彼氏に腹の中を散々洗われた話。
丹砂 (あかさ)
BL
ストーリーなしです!
エロ特化の短編としてお読み下さい…。
大切な事なのでもう一度。
エロ特化です!
****************************************
『腸内洗浄』『玩具責め』『お仕置き』
性欲に忠実でモラルが低い恋人に、浮気のお仕置きをするお話しです。
キャプションで危ないな、と思った方はそっと見なかった事にして下さい…。
スパダリショタが家庭教師のメスお兄さん先生と子作り練習する話
さくた
BL
攻め:及川稜
DS5。文武両道、とてもモテる
受け:狭山由貴
稜の家庭教師。文系。数学は苦手
受けの名前出てないことに気づいたけどまあええやろ…
会社を辞めて騎士団長を拾う
あかべこ
BL
社会生活に疲れて早期リタイアした元社畜は、亡き祖父から譲り受けた一軒家に引っ越した。
その新生活一日目、自宅の前に現れたのは足の引きちぎれた自称・帝国の騎士団長だった……!え、この人俺が面倒見るんですか?
女装趣味のギリギリFIREおじさん×ガチムチ元騎士団長、になるはず。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
えっちな美形男子〇校生が出会い系ではじめてあった男の人に疑似孕ませっくすされて雌墜ちしてしまう回
朝井染両
BL
タイトルのままです。
男子高校生(16)が欲望のまま大学生と偽り、出会い系に登録してそのまま疑似孕ませっくるする話です。
続き御座います。
『ぞくぞく!えっち祭り』という短編集の二番目に載せてありますので、よろしければそちらもどうぞ。
本作はガバガバスター制度をとっております。別作品と同じ名前の登場人物がおりますが、別人としてお楽しみ下さい。
前回は様々な人に読んで頂けて驚きました。稚拙な文ではありますが、感想、次のシチュのリクエストなど頂けると嬉しいです。
おねしょ癖のせいで恋人のお泊まりを避け続けて不信感持たれて喧嘩しちゃう話
こじらせた処女
BL
網谷凛(あみやりん)には付き合って半年の恋人がいるにもかかわらず、一度もお泊まりをしたことがない。それは彼自身の悩み、おねしょをしてしまうことだった。
ある日の会社帰り、急な大雨で網谷の乗る電車が止まり、帰れなくなってしまう。どうしようかと悩んでいたところに、彼氏である市川由希(いちかわゆき)に鉢合わせる。泊まって行くことを強く勧められてしまい…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる