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二章
201.旅の終わりとハリオと子供たち
しおりを挟む「これが水車か」
「ふむ」
え? ラルフ様、それだけしか感想ないの?
木でできた水車が目の前で回っている。シルはしゃがんで水車が運んだ水を触っているけど、ラルフ様はただジッと眺めているだけだ。僕はというと、うん……特に感想はない。なるほどって感じだ。
作るのは大変だろうなとか、そんな感想はあるけど、遺跡と比べたらそれだけだ。
でも、水が流れている音を聞いているのは心地いいと思った。
僕もシルの横にしゃがんで水車が運んできた水を触ってみる。冷たくてとても綺麗な水だ。
チャプンッ、ドボンッ
とっても嫌な音が聞こえた気がした。まさかシルが川に落ちたんじゃないよね?
恐る恐るシルを見ると、シルはそこにいた。だけどその向こうに立っていたはずのラルフ様の姿がない。まさかラルフ様が!?
そう思って川を見てみると、ラルフ様が膝まで川に浸かっていた。
えー!?
「ラル、ぼくもはいっていい?」
「ダメだ」
シルが川に入りたいと言ったけど、ラルフ様はダメだと言った。じゃあなんでラルフ様は川に入ったの? しかも膝下はずぶ濡れだ。一体なぜ?
「マティアス、これは落とさないよう俺が持っておくか?」
ラルフ様に差し出されたピエール二号を見て、僕は分かってしまった。
もしかしてラルフ様は僕のポケットから落ちたピエール二号を拾ってくれたの?
最初のチャプンッは、ピエール二号だったのか……
「ラルフ様、ごめんなさい。すぐに上がって。公衆浴場に行きましょう、川の水は冷たいので風邪をひいてしまいます」
「大丈夫だ」
大丈夫だとしても、とりあえず宿に戻って着替えた方がいい。
水を滴らせながら歩いていくラルフ様を、みんながジロジロ見ている。「あの人川に落ちたんじゃない?」って噂されてるんだ……「ラルフ様は僕のチンアナゴを拾ってくれただけなんだ!」そう大声で言いたい気持ちはある。しかし言えるわけもなく、ラルフ様ごめんねって思いながら宿までの道を歩いた。
そんなこともあったり、夜には公衆浴場で僕がのぼせてラルフ様に抱えられて帰ったりなんてこともあったけど、無事王都の家に帰ってきました。
みんなへのお土産はジャムだ。二日目の朝に食べたパンケーキのジャムが美味しかったからお店の人に聞いたら、ジャムを卸しているお店を教えてくれた。
ラルフ様がお気に入りの栗のジャムは残りが少なくて、今年の分はもうここにあるだけだと言われた。無事買えてよかった。
シルは水車のミニチュア模型をお土産に買った。興味ないのかと思ってたのに、意外と気に入ってたのか。エルマー様にもあげるそうで、同じものを二つ買った。そういえばずっと前にラルフ様がエドワード王子にあげた、緑の気持ち悪い人形はまだ持っているんだろうか? あれの行方がちょっと気になる。
日常に戻り、平穏な日々。
いつもと変わらぬ毎日だ。今日もフェリーチェ様が訪れて一緒に刺繍の続きをしている。
今日はエルマー様が来ていて、シルはお土産の水車の模型をあげた。水を流さなくてもクルクル回るからエルマー様も楽しめるかな?
相変わらずシルとパンとエルマー様は仲良しみたいだ。シルはエルマー様に剣を自慢するのかと思ったんだけど、そんなことはしなかった。小さい子が触ったら危ないと思ったんだろうか?
だけど、買った日にパンには自慢していた。シルにとってパンは対等な存在なのかもしれない。
「「ハリオー!」」
今日はハリオがお休みで、シルとエルマー様がハリオを呼んだ。たまにシルとエルマー様とパンの二人と一頭のところにハリオが加わっているのを見かける。なぜか二人に懐かれているハリオは、今日はどうやら二人から逃げようとしたようで、リーブが首根っこ掴んで庭に連れてきた。一体何があったのか気になる。
子どもたちから逃げようとするという不思議な行動をとったハリオが気になって、僕はシルたちを眺めていた。
ハリオは二人の前でペコペコと頭を下げていて、本当に何があったの?
「面白いことになってるね」
隣からフェリーチェ様に話しかけられた。フェリーチェ様もハリオとシルたちの関係が気になって眺めていたようだ。
フェリーチェ様と二人でハリオの様子を眺めていると、何か恥ずかしかったのかハリオは顔を両手で覆った。ハリオに頭を下げさせて、羞恥心を煽るなんて……
その後はなんとなく見てはいけないような気がして、僕は手元の刺繍を進めた。教えてくれるかは分からないけど、後でシルに聞いてみよう。
「ふふふ、ハリオね、きょうはルカくんと三かいキスしたんだって」
「へ?」
シルたちは一体ハリオになんてことを聞いているのか……
ペコペコしていた理由は分からなかったけど、ハリオが両手で顔を覆って恥ずかしそうにしていた理由は分かった。子どもは無邪気で、時にとんでもない無茶振りをしてくる。
ハリオ、ルカくんが帰ったら癒してもらってください。
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