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二章
82.白状 ※
しおりを挟むタルクとルーベンとの訓練を終えてルーベンと共に家に向かっていると、門の前にラルフ様が仁王立ちしているのが見えた。
「ルーベン、お前はもう寮に帰れ」
「はい、お疲れ様でした」
ラルフ様に言われると、ルーベンはあっさりと帰っていった。なんだかラルフ様が不機嫌な気がする。
「ラルフ様、今日は早いんですね」
「マティアスは遅いな。帰ってきたのにマティアスがいないから仕事が長引いているのかと思って花屋へ行った。そうしたらタルクとルーベンと一緒にもう随分前に帰ったと言われた」
「そうでしたか」
怒っている理由はそれだろうか? やっぱり黙っていたのは失敗だったかもしれない。もうかれこれ二ヶ月ほど大丈夫だったから、もうバレることはないと油断していた。
「マティアス、後で話がある」
「分かりました」
「今日は優しくしてやれないかもしれない」
「分かりました」
相当怒っている気がする……
決して疚しいことはしていないんだけど、黙っていたことは少し後ろめたいとも思ってる。
無言で夕食を終えラルフ様の部屋に向かった。シルは今日も昼間は騎士団の見学に行っていたようで疲れてぐっすり眠っている。
「マティアス……俺の何がいけなかった?」
「え? ラルフ様にいけないところなんて無いですよ」
「ルーベンと何をしていた?」
もうこれは言うしかない。黙っていた僕がいけない。
「ルーベンとタルクの訓練に参加させてもらっていただけです。体力をつけたいと思って」
「なぜだ? それは俺ではダメなのか? 海の街で一緒にスクワットをやった時は楽しかった。俺が無理させたからか?」
楽しかったんだ。僕はかなりキツかったんだけど……
不安そうに見つめられると、本当に僕はラルフ様に悪いことをしてしまったのだと実感した。黙っているべきではなかった。僕だってラルフ様がこっそりそんなことをしていたら嫌だと思うし、ラルフ様を悲しませたいなんて思っていないんだ。
「ラルフ様に黙っていたこと、ごめんなさい。ラルフ様を驚かせたくて」
「驚いた」
「そうじゃなくて……ラルフ様が戦うことになった時、僕は足手纏いにしかならないから、せめて逃げることくらいできるようにならないといけないと思って」
「早く走ってみせて俺を驚かせるつもりだったのか?」
一瞬で移動できるようなラルフ様に僕が走ってるところを見せても首を傾げられるだけだ。
「それだけじゃなくて……ラルフ様、耳を貸してください」
これ、言うの恥ずかしいんだけど……
ラルフ様は訝しげな表情のまま、僕に耳を近づけてくれた。
『ラルフ様の上に乗って僕が動きたかったんです。だからそのためにこっそり足腰を鍛えてたんです。ラルフ様に喜んでもらいたかっただけ』
ぐはっ
僕はラルフ様に勢いよく抱きしめられて、肺の中の空気が全部吐き出された。その衝撃に一瞬殴られたのかと思ったほどだ。
「心配した」
「ごめ、な、さい……」
苦しすぎて言葉を発することも難しい。ラルフ様、本当にごめんね。
「すまない、きつく抱きしめすぎた」
ラルフ様は腕を緩めて、なんだか怪しい手つきで僕の背中からお尻にかけてを撫でている。
「いいんです。ラルフ様を悲しませるようなことは何もしてません。僕が愛してるのはラルフ様だけ」
「分かってる。分かってるんだ……」
「する?」
「いいのか?」
僕はまた失敗してしまった。前に自分で準備しようとした時もラルフ様を悲しませて、今回もまた……
上手くいかないものだ
「マティアス、愛してる」
いくら早く走れるようになったとしても、僕は一生ラルフ様の域には到達できない。一瞬で僕を攫ってベッドに行くと、もう僕は裸になっていた。
「僕も愛してます」
重なる唇。いつもは僕の唇で遊ぶように啄んでいるのに、今日は待てなかったみたい。すぐに舌がヌルリと侵入してきて、熱い舌が絡んでくる。
ーー優しくしてやれないかもしれない
ラルフ様はそんな風に言っていたっけ?
「やっ……らる、さま……もう、きて……」
「……マティアス、上に乗りたいんだろ?」
「え? でも……まだ練習が……」
足腰はちょっとは鍛えていたけど、まだ練習してないから上手く動けると思えない。
「練習? 誰かと練習する気だったのか?」
「そんなことしません」
僕はどうやって練習するつもりだったんだろう? クッションに跨って腰を振る? それ合ってる?
「上に乗りたいなら乗ればいい」
「上手くできないかも」
上手くできたらできたで要らぬ疑惑を生んでしまいそうだけど、どう考えても上手くできる気がしない。
そう思っていたのに、ラルフ様は座った状態でヒョイっと僕を持ち上げて、僕の窄みにラルフ様の昂ったモノの先端をヌルヌルと当てている。
「自分で沈んでみろ」
「ん……」
ラルフ様の肩に掴まって、ゆっくりと腰を沈めていく。ゴリっと気持ちいいところを通り過ぎると、快感が体を巡って力が抜けていく。
「ああ……」
力の抜けてしまった僕をラルフ様が支えてくれているから、一気に奥まで飲み込むことはなかった。
上手く動けなくても、ラルフ様に支えてもらえばなんとかなりそうだ。ラルフ様頼りだけど、いいよね?
「動けるか?」
「ん、やってみる」
本当にゆっくりなら、なんとか動けそうな気がしてきた。上で乱れるってほどじゃないけど、できなくはない。合ってる? これでいいんだよね?
座っていたラルフ様がゆっくり後ろに倒れて仰向けになると、僕はラルフ様の硬い腹筋に手をついた。
「手、放すぞ」
「え、待っ……ああ……!」
ラルフ様の支えを失った僕は、自分の体重を支えられずに一気に奥まで飲み込んだ。
喉元を反らせ、体は突っ張ったままカタカタと震えることしかできなかった。その衝撃でラルフ様のお腹に僕の精が吐き出されてトロリと乗っていた。
「ふかい……」
「全部入っているからな。もう動けないか?」
「うごけな……」
「そうか。じゃあ俺が動いてやるから大丈夫だ」
ラルフ様はそう言うと、僕の腰を浮かせて下から突き上げてきた。
「あっ、や……だめ……」
「マティアス、愛してる」
「待っ……ああ……やぁ……」
入っちゃいけないとこまできてる……
起きていることもちょっと辛くて、ラルフ様の上に倒れ込みそうになるのに、ラルフ様はそれを許してくれない。
逃れようとしても、ラルフ様にしっかりと腰を掴まれているから逃げることもできない。
「だめ……ほんとに、ダメだからっ!」
プシュッ
上下に揺れていた僕のものから、精じゃない透明な液がでた。
「やだやだ、ラルフ様、なんか出た。おしっこかもしれない」
「大丈夫だ」
「大丈夫じゃない。恥ずかしい。もう……ああっ……」
顔を手で覆ってみたけど、ビクビクと痙攣したままで力が入らなくて、絶頂が続きすぎて死ぬかと思った。
腹上死って本当にあるんじゃないかとちょっと怖くなるくらいの快感の連続に、僕は延々と喘ぐことしかできなかった。
「マティアス、よかった。最高だ」
「うん……」
僕って鍛えた意味あったの? ラルフ様に支えられてラルフ様が動いてくれたから、僕はただただ喘いでいることしかできなかった……
ラルフ様を驚かすなんて、今後もできないんじゃないかと思った。
でもいいんだ。ラルフ様に『最高』って言ってもらえたから。
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