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44.求婚
しおりを挟む朝日が眩しくて私は目を覚ました。
久しぶりによく眠れた気がする。
そして隣を見るとノア?ノアに見える人が私のベッドで、私の横に寝ていた。
は?ノア?
私は驚いてベッドから落ちそうになって、冷や汗をかきながらベッドから降りると深呼吸を何度かした。そしてその人物の顔をじっくり眺める。
ノアの匂い、ノアの魔力、姿もノアに見える。でも俄かには信じられない。
「・・・ノア、なのか?」
「うーん?エリオ?起きた?」
「ノア、なんでここにいる?」
「えっと・・・その件またやるの?」
「また?」
「エリオ、夢じゃないからね。何度も言うけど、夢なんかじゃないからね。ずっと側にいるし、絶対結婚するからね。僕はエリオを愛してる。
昨日の夜はたっぷり愛し合ったし。僕はエリオを迎えにきたんだよ。」
「え?」
言おうと思ったことを全部ノアに先に言われて、私はどうしたらいいのか分からなくなった。
でも、それでも、ちゃんと言わなければいけない。
「ノア、私と結婚してください。
どうしてもノアでないといけない。他の誰かとなど結婚できない。触れられるのも、キスをするのも、隣に立つのも、ノアでないとダメなんだ。
弱くて、情けなくて、こんな私だが、ノアを誰よりも愛する自信はある。ノアを真剣に愛してます。
だから、私と結婚してください。」
「うん。エリオ結婚しよ。」
「いいのか?」
「うん。いいよ。
それよりさ、エリオは綺麗で格好いいからいいんだけどさ、求婚を全裸でするってどうなの?」
「あ・・・」
確かに今の私は全裸でベッドの横に立っていて、ベッドに寝そべっているノアに向かって・・・。
「ノア、その・・・後でもう一度ちゃんと言う。風呂に入って髪をセットして、正装をして、何か贈り物も買おう、あと、あと、あと、婚約の書類を・・・父上と母上にも、ノアの両親にも、言わなければ、ゆ、許してくれるだろうか?
あと、あと、陛下にも、エディーにも、団長にも、言わなければ・・・あと、あと、あと・・・」
「エリオ、落ち着いて。大丈夫だから。まずは一緒にお風呂に入ろうね。」
「分かった。」
「それから食事をして、心配しているエリオの両親に挨拶に行こう。」
「分かった。」
ノアは私が半分パニックになっているのを一つ一つ整理して順序を決めてくれた。
本当に私はノアがいないと何もできないらしい。
全部一緒にやってくれるノアは本当に優しいな。
ノアは本当に非の打ち所がない素晴らしい人だ。きっと私以外にもたくさんの好意を向けられてきたのだろう。
「私はノアと結婚できるだけで幸せなんだ。ノアが望むなら、側室を娶っても文句は言わない。」
「エリオ・・・何言ってるの?あり得ないからね。」
「そうか。」
「僕はエリオだけが好きなんだから、馬鹿なこと考えないで僕の愛を受け止めてよ。」
「分かった。ありがとう。」
「それにさ、文句言わないとか言ってるけどさ、エリオは僕が他の人を抱いても本当に平気なの?」
そうか。側室を娶るということは、その側室を抱くということで、ノアが他の誰かに触れて、キスをするなど・・・。
「ほらね。そんな顔して。平気じゃないんでしょ?」
「・・・ごめん。」
どうやら私は情けないだけでなく心も狭いらしい。
「ふふふ、エリオ大丈夫だから。僕もエリオだけでいいんだからね。」
「そうか。ノアに嫌われないよう精進する。」
「エリオはそのままでいいんだけどね。
じゃあ各所へ挨拶にいこうか。みんなに心配かけてるし。」
「あぁ、行こう。」
緊張しながら両親の元に向かい、反対されるのだろうかとドキドキしながらノアとだけ結婚したいと言ったら、あっさりと了承してもらえた。
ノアの両親が王都に来ているということで、私は緊張しながらコックス子爵邸に向かうと、苦手な兄2人まで揃っていた。
この2人がいるということは反対されることは確実で、両親も私のような相手など認めてくれないかもしれない。
「コックス子爵殿・・・その、ノアさんと結婚をしたい。至らぬ点があることは重々承知しているが、どうか認めていただきたい。」
「エリオット様、こちらとしては反対する理由はありませんが、ノアで本当によろしいのですか?」
「はい。ノアさんがいいんです。」
「分かりました。こんな息子ですが、どうぞよろしくお願いいたします。」
隣に座っているノアをチラリと見ると、ノアはニコニコしていた。
そしてノアの両親が座るソファーの後ろに直立不動の兄たちの圧がとても怖い。
私をやる隙を窺っているのではないよな?
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