上 下
43 / 49

43.再会※

しおりを挟む
 
  
>>>ノア視点

 エリオ・・・

 ホワイト公爵家の屋敷に着いてエリオの部屋まで行ったけれど、ノックをしても返事はなかった。ドアノブに手をかけてみたけど、鍵がかかっている。
 こんなことは初めてだ。

 今までだって何度かエリオが疑心暗鬼になったことはあったけど、完全に拒絶されたのは初めてだった。
 侍女のリーナさんに話を聞いてみたけど、もうずっとこのような感じなのだとか。


 僕はエリオが聞いていると信じて、扉に背中をつけて話し始めた。

「僕はエリオに無理を言った。ごめんね。
 エリオの才能を継ぐ子どもがいた方がいいって思ったんだ。僕ではエリオとの子どもが作れないから。」

「でもそれってさ、僕の勝手な意見で、エリオの気持ち無視してた。エリオがそんなに追い詰められてたなんて知らなくて、さっきエリオの両親が来て初めて知った。」

「エリオはまだ僕と結婚したいと思ってくれる?
 エリオが望んでくれるなら僕はエリオと結婚したい。」

「嘘だ。」

 低い掠れた声で、ドアの向こうから微かにエリオの声が聞こえた。
 やっぱりエリオは聞いてくれてたんだ。

「嘘じゃないよ。僕はエリオのこと愛してる。好きだよ、エリオ。誰より好き。」
「遠回しに断ったんだろ?私なんかと結婚したい者がいるわけない。」

 僕は分かってしまった。
 エリオの父である公爵様はエリオが僕と結婚するために正室探しを頑張ってたと言ってた。でも、今は誰にも姿を見せないで心を閉ざしていると。

 上手くいかずに落ち込んでいるのではなく、心を閉ざしたのはそれだ。エリオの中で僕が断ったんだと結論付けたんだ。
 きっとエリオは、周りもそれを知っているのに言わなかったと思って心を閉ざしたんだな。

「エリオ、僕は断ってない。結婚したいって言ってくれたこと、本当に嬉しかったんだ。断ったりしない。
 エリオ、結婚しよう。」

「・・・それが本当だとしても、私はダメな人間なんだ。ノアを愛しているし一緒にいたいから頑張ってみたけど、ノアを迎えに行けそうにない。」
「いいよ。エリオが迎えにこないから、僕が迎えに来た。だから顔を見せて。僕が好きなエリオの顔を見せて。」

「本当か?」

 カチャリと鍵の開く音がした。
 僕はその音を聞き逃さなかった。すぐにドアを開けてエリオを抱きしめる。

「エリオ、ごめんね。本当にごめんね。もう苦しまなくていいから。ずっと側にいるから。」
「ノア、こんなに情けない私なのに、いいのか?」

「情けなくない。僕と結婚するために頑張ったんでしょ?」
「でも・・・ダメだった。
 ノアのこと、迎えに行きたかった。」

「うん。」



>>>エリオ視点

 両親がどこかに出かけたのは知っていた。
 しかしノアの屋敷に行くなど知らなかった。

 ノアは、結婚したいと言った。それはやはり私の両親が権力を振り翳したんだろうかと申し訳ない気持ちでいっぱいになったが、ノアは迎えに来たと言う。私のことを好きだと言う。

 不安しかないけど、私にはノアしかいないし、信じたいという気持ちもある。
 こんなに情けない私でもいいのか?本当に私なんかでいいのか?

 恐る恐る鍵を開けると、その瞬間に勢いよくドアが開いてノアに抱きしめられた。
 もう一度ノアに抱きしめてもらえるなんて思っていなかったから、じわじわと涙が滲んでノアの姿が霞んでいく。

「エリオ、ごめんね。本当にごめんね。もう苦しまなくていいから。ずっと側にいるから。」
「ノア、こんなに情けない私なのに、いいのか?」

「情けなくない。僕と結婚するために頑張ったんでしょ?」
「でも・・・ダメだった。
 ノアのこと、迎えに行きたかった。」

「うん。」

「ノア、好き。私は、ノアだけがいい。」
「うん。僕もそう思ってる。エリオだけがいい。」

 頬に添えられた手が柔らかくて温かくて、ノアがここにいるんだと実感できた。
 唇が重なって、優しく私の口内を撫でていく。逃げなくても追いかけてこないなんて初めてで、どうしたらいいのか分からなくなった。

「エリオ、会いたかった。」
「うん。私も会いたかった。」
「エリオ、騎士団でも頑張ってたんでしょ?」
「大したことはしていない。」
「そんなことないと思うよ。」
「私でも役に立てることがあるなら嬉しいが・・・」
「うん。役に立ってるよ。」

 涙が止まらなくなってしまった私のことをノアは抱き抱えて運んで、一緒にベッドに横になった。
 抱きしめられたままずっとノアは私の背中を摩ってくれていて、たまに額や頬や唇にも触れるだけの優しいキスをしてくれる。

 ずっと眠れなかった。用意された食事も半分くらいしか食べれなくて、悲しくて苦しかった。
 それなのに、ノアがいるだけで私の心は解れて、力が抜けていく。
 もっとノアを感じていたいのに、瞼が重くて、意識がトロリと溶けていく。


 目が覚めると暖かくて柔らかいものに包まれているような感触があった。
 夢か。そう思ったのに、ノアの香りがするんだ。ノアの魔力を感じるんだ。
 これは夢じゃないのか?

「・・・ノア、なのか?」
「うーん?エリオ?起きた?」
「ノア、なんでここにいる?」
「えー?忘れちゃったの?エリオが迎えにきてくれないから、僕がエリオを迎えに来た。」
「そんな馬鹿な。夢か?これは夢なのか?」

 ノアがここにいるわけない。これはきっと夢だと思った。
 とうとう私は頭がおかしくなってしまったのかもしれない。

「エリオ、夢じゃないよ。僕はエリオを愛してる。夢じゃないってどうしたら信じてくれるかな?」

「あぁ、、」

 幻かもしれないノアの指先が、私の上衣を捲り上げて胸の先端をキュッと摘んだ。

「エリオが好きなここ、気持ちいいでしょ?夢じゃないでしょ?ほら、キスだってしてあげるし、こっちだっていっぱい触ってあげるよ。」

「んん、、ぁ、、、」
「可愛い。逃げても捕まえるから。」
「ノア、夢ならもっといっぱいキスして?」
「いいよ。夢じゃないけどね。」

 本物みたいな感触。追いかけてくる舌から必死に逃げても、やっぱりノアに捕まって、ジュッと吸われると気持ちよくて震えてしまう。

「エリオ、好きだよ。愛してるよ。」
「私も。ノアのこと愛してる。ずっと側にいてほしい。ずっとずっと。」


「ぁああ、のあ、、、ゃ、、、だめ、、」

 ノアは私の胸の先を指でフニフニと摘みながら、私の中心で立ち上がったものを咥えた。
 いやらしい音がジュルジュルと響いて耳まで甘く溶けてしまいそうになる。

「あ、、だめ、、、」

 私が我慢できずに吐き出した精をノアはゴクリと音を立てて飲み込んだ。
 あんなものをまたノアに飲ませてしまった・・・。

「ごめん、、ノア、、」
「謝らなくていいんだよ。僕がしたくてしてるんだから。」

 いつも優しいノアは夢の中でも変わらず優しいらしい。
 でも、少し意地悪なノアはやっぱり夢の中でも少し意地悪だった。
 私の急所ばかり執拗に攻め立てる。

「のあ、、ぁ、、あ、、やぁ、、そんなにだめ、、あ、、」
「夢じゃないよ。エリオ、ほら僕はここにいるでしょ?」

「うん、、のあ、、ノアをください、、ノアの全部をください、、」
「いいよ。あげる。エリオに全部あげる。全部受け止めてね。」

「あぁ、、のあ、、」
「エリオ、大好きだよ、愛してるよ。ずっと一緒だからね。」

「のあ、、、愛してる、、ずっと側にいてください、、」

 私はノアに抱かれながら、ずっとノアに愛していると側にいてほしいと言っていた。
 これが夢でもいい。私の気持ちはやっぱりノアだけに向いていて、ノア以外を抱くとか抱かれるなんて無理で、だから起きたらちゃんとノアに会いに行って言おうと思った。

 私は弱くて情けないけど、ノアのことを真剣に愛していて、ノアが必要だと。
 どうしてもノアでないとダメで、ノアと結婚したいと言おう。
 許してくれなくても、怒られても、伝わるまで何度でも何度でも言おうと思った。
 すぐに弱音を吐いて、逃げてしまいそうになる私だけど、ノアだけは諦められない。

 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました

海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。 しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。 偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。 御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。 これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。 【続編】 「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

処理中です...