【完結】うちの子は可愛い弱虫

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31.ノアとの夜1/2

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 今日は帰りにノアと待ち合わせして飲みに行くんだ。楽しみだな。

「ノア!」
「エリオ~、お疲れ様。」

 手を繋いで歩いていく。ノアは私なんかと手を繋いで歩くのは恥ずかしいだろうか?

「エリオどうしたの?」
「ノアは、私と手を繋いで歩くのは嫌じゃないか?恥ずかしいとか・・・。」
「なんで?全然そんなことないよ。」
「そうか。」

 そうか、よかった。嬉しい。

「あ、ダメ。」
「え?」
「その顔は、僕だけのエリオだから。」

 私はノアの腕に包まれた。
 見るに耐えないような顔をしてしまったのか・・・。気を引き締めなければ。

「すまない。おかしな顔をして・・・。」
「別におかしくはないんだけどね。僕が他の人に見せたくないだけ。可愛いから。」
「かわ・・・」

 そんな話をしながら個室の店に入った。

「ノアありがとう、ノアに言われたように魔法騎士のレベルを見てみたんだ。ノアの言う通りだった。私は遠征の時に彼らに無理難題を押し付けていたようだ。」
「そっか。」
「気付かせてくれてありがとう。」
「よかった。エリオは凄いんだからさ、副団長として認められてないなんてことないんだからね。」
「そうだろうか?それはまた話が別じゃないか?」
「そんなことないよ。僕はエリオが凄いってこと知ってるし。」
「ノアにそう言ってもらえると嬉しい。」

 全然凄くなんかないけど、ノアがそんな風に言ってくれると、何とか今まで頑張ってきた甲斐がある。キスしたいな。優しいノアとキスしたい。抱きしめてほしい。

 私はいつからこんなに淫らになってしまったんだろう?
 恥ずかしい。

「エリオ、どうしたの?顔が赤いよ。酔っちゃった?」
「な、何でもない。」

 そんないつもノアに触れたいと思っているなど言えない。嫌われてしまうかもしれないし、それが一番怖い。今日は食事をしに来たんだから、ちゃんと食事に集中しよう。

 私はその後、黙々と料理を食べていった。
 ノアがニコニコしながら私を眺めているんだが、何だろうと思いつつ、気付かないふりをして食べている。

「ふぅ、美味しかった。」
「うん。美味しかったね。それでエリオは何を悩んでたの?」
「え?」
「何か考えてたんでしょ?」

 ノアは全てお見通しということか・・・。

「ノアに触れたいと・・・、外なのに嫌だよな?ごめん。」
「謝らなくていいよ。僕はいつでもエリオに触れたいし。キスしたいし抱きたい。エリオのこと乱したい。」
「そ、そうか。」

 私よりもノアの方が一段階上だったようだ。
 抱きたいと言われて、私は想像して顔に熱が集まるのを感じて俯いた。

「そ、その、私の家で飲み直すか?」
「それって誘ってるって思っていいの?」
「ノアが嫌ならやめておく。」
「嫌なわけないじゃん。」
「そうか。」

 私は俯いたまま、ノアに手を引かれて屋敷に帰った。

「あ、その・・・」
「エリオ緊張してるの?ちょっと顔が強張ってる。」
「う、、、」

 ノアは何でもお見通しなんだな。恥ずかしい。
 いつも私だけ余裕がなくて、今日だって、食事をしてお礼を言おうと思っただけで、淫らなことをしたいと思ったわけじゃないのに、ノアを部屋に誘ってしまった。

 まだ自信がない私は、やっぱり不安なんだ。
 ノアに嫌われてしまうのではないかと。よがり狂うということも上手くできないし、技術も無い。練習も誰かに相手を頼むわけにはいかないし、どうすればいいのか分からない。


「エリオ、おいで。」

 ノアはいつも余裕みたいに笑顔でソファーに座って手を広げている。
 私は緊張しながらゆっくり歩いて、そしてノアの膝の上に向き合って座る。

 温かくて柔らかいノアに包まれると、それだけでガチガチに緊張していた体が解れていく。

「ノアは私の癒しだ。」
「そう?エリオの癒しになれるなんて光栄だよ。」

「キス、してもいい?」
「いいよ。」

「んん、、あぁ、、、」

 さっき飲んだ酒の味がする。
 少しフワフワして、でも頑張って追ってくるノアの舌からは暫く逃げられたと思う。
 最後には捕まってジュッと吸われてフルフル震えてしまうけど・・・。

「エリオ、好きだよ。」
「私もノアのことが好き。もう一回したい。」
「いいよ。」

 酒に酔っているのか、ノアのキスに酔っているのかもはや分からなくなっている。

「エリオ、もう蕩けちゃったの?」
「ノア、好きぃ。」
「そんなこと言ってると襲っちゃうよ?」
「上手くできなくてごめん。嫌わないでくれると嬉しい。」
「エリオは気にしすぎだよ。僕は気持ちよくて泣いちゃうエリオが大好きだから。何も心配しないで。」
「そうか。」

 泣きたくはない。恥ずかしいし、男の泣き顔なんか汚いだろうし・・・。

「ベッド行く?それともソファーでしたい?」
「ソファーなんかでしたら危ないだろ。ノアが怪我でもしたらどうするんだ。」
「ふふふ、エリオって変なところで現実的なんだよね。面白い。」

 ドキドキしながらノアに手を取られてベッドに歩いていく。
 いつもこの距離を歩く時が一番緊張する。
 ノアは心配することないと言うけれど、意識をまともに保てなくなったり、正常な判断もできなくなるほどに快楽に飲み込まれてしまう自分が怖いし、ノアに任せておけばいいとは思うんだが、自分で自分をコントロールできなくなるほど怖いことはない。

 相変わらず私はノアにおんぶに抱っこという感じで情けなくもある。鍛錬や研究ができないというところがまた不安なんだ。

「エリオ、また不安になってたの?不安になることなんて何にもないんだからね。エリオはすっごく可愛くて、綺麗で、僕はエリオのことが好きで好きでたまらないんだから。」
「ノア・・・そんなことを言ってくれるのはノアだけだ。私はノアの前でたくさん失敗したり、格好悪いところばかり見せているのに、呆れずに見守って包み込んでくれる。私もノアのことが愛しくてたまらない。」

 そんなことを言いながら、感極まってまだ何もしていないのに涙が出そうになった。

「エリオ、僕の可愛いエリオ。泣いてもいいから僕だけ見ててね。」
「分かった。」

  
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