【完結】うちの子は可愛い弱虫

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29.両親への報告と実力

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 ノアのことを好きになってしまったと前に打ち明けていたリーナには、ノアと恋人になったことを伝えているが、まだ両親には伝えていない。
 これはどんなタイミングでどう伝えるのが正解なんだろうか?

「エリオ?また難しい顔をしてどうしたの?」
「両親に、ノアと恋仲にあることをいつ伝えたらいいのか考えていた。」
「んー僕もまだ伝えてない。兄貴たちがうるさそうってのもあるし、両親は基本領地にいるから、何かで王都に来る時か、手紙で伝えることになるけど、なんかちょっと恥ずかしいよね。それに僕とエリオは立場に格差があるから素直におめでとうとは言われないと思うし。」
「そんな・・・私が至らないから認めてもらえないということか。ノア、情けなくてすまない。」

「え?逆だよ逆。エリオは爵位も肩書きも素晴らしすぎるんだよ。僕が至らないんだ。」
「そんなことはない。ノア以上に素晴らしい人間などこの世にいない。
 今から両親に言いにいこう。」
「え?今から?」

 私は風の魔法でリーナに両親と話がしたいと伝えた。

 コンコン
「坊ちゃま、旦那様と奥様はサロンにいらっしゃいます。いつでもいいそうですよ。」
「分かった。今行く。」

 私はノアの手を握り、サロンを目指した。

「父上、母上、私はノアのことが好きです。それは友人という意味もありますが、恋で、愛していて、その、恋人になりました。」
「そうか。」
「まぁ、そうなのね。」

「ノアは格差というのを気にしていますが、父上と母上も私たちの関係には反対ですか?」
「ワシはエリオが幸せならいい。」
「そうね。私も別に反対はしないわ。ノアさんのおかげでエリオは楽しそうですもの。」

「ノア、よかったな。大丈夫だ。」
「そうだね。ありがとうございます。」

 あとは私がノアの両親や兄たちに認めてもらえばいいんだな。両親は誠意を持って対応をすればまだ可能性はゼロではない。
 しかしあの兄たちは、ノアに手を出したと知れれば私を殺しにかかるかもしれない。
 怖いな・・・。

 剣や拳を交えることで解決するのであれば、それでも構わないが、そのためにはやはりもっと鍛えておかなければならない。
 頑張ろう。私とノアのために。
 ノアのためだと思えば、どんなにキツい訓練でも耐えられると思った。



 そして休みが明けると、私は執務の合間を縫って魔法騎士の訓練場へ向かった。

「ふ、副団長!如何されましたか?」

 私が顔を出すと、隊長が慌てて駆け寄ってきた。

「訓練を少し見学させてくれ。私は勝手に見ているから、いつも通りやっていてくれればいい。」
「畏まりました。」

 剣を振るっている者もいるし、的に向けて魔法を打ち出している者もいる。
 これはウォーミングアップなんだろうな。
 しばらくしたら訓練が始まるのか。私は壁にもたれて腕を組んでその時がくるのを待った。
 しかし、ウォーミングアップが終わる気配がない。
 怪我などをしないよう、しっかりとウォーミングアップの時間をとっているのか。しかし、こうも長い時間続けていては、剣はいいとしても魔力は減る一方ではないのか?

「隊長、ウォーミングアップはいつ終わる?」
「はい?ウォーミングアップは朝のうちに終わらせております。」
「では今は何をしているんだ?」
「通常の訓練ですが、何か問題がありますか?」

 これが通常の訓練?
 それにしては火力が弱い気がするが、わざとなのか?それともノアが言っていたように本当にあれが精一杯の実力だったということか?

「魔法の威力なんだが、これは最大で撃ち出せる火力の何割で練習させている?」
「人によりますね。威力を上げることを目標にしている者は最大、コントロールを磨きたい者は6割程度、新しい魔法に挑戦している者は1割程度でしょうか。」
「なるほど。剣の方はどうだ?」
「今、剣を振るっている者たちは、まだ剣の扱いに慣れていない者なので、動きや重心移動を中心に行なっています。」
「そうか。分かった。彼らの最大の火力を見せてもらうことはできるか?」

「はい。すぐに。
 お前らー集合!副団長の前で1人ずつ最大火力で的に魔法を放て。得意な魔法でいい。」

 ドーン、ドーン、シュバッ、ドーン、シュバッ

 この場でわざわざ全員がふざけるということはないだろう。だとしたらノアが言った通り先日の強化遠征の時は彼らの精一杯だったということになる。
 そうだったのか。
 だとしたら、私は彼らに無理難題を押し付けていたことになる。知らなかったとはいえ、とても酷いことをしてしまった。
 やはり私はダメな人間だ。

「ありがとう。訓練を続けてくれ。」

 私は落ち込みながら剣士部隊の訓練場に向かった。体力作りをしている者がいれば混ぜてもらおう。アドバイスなどもらえたらありがたいのだが。頼めそうなら頼んでみようと思った。


「副団長、何かありましたか?」

 ここでもすぐに隊長が私の元に走ってきた。

「いや、訓練を見にきたのと、体力作りの訓練をやっている者がいたら混ぜてもらおうと思っただけだ。」
「え?副団長がですか?」
「何か問題があるのか?」
「い、いえ。」

「適当に見て回るから、私のことは気にせず訓練を続けてくれ。」
「分かりました。」

 私は訓練場を見て回りながら、体力作りをしているであろう者たちのところに向かった。

「副団長、お疲れ様です!」
「これはどこを鍛えているんだ?」
「あっちは腕や胸筋ですね。こっちは足、あの辺りは腹筋で、そっちは全身という感じです。」
「そうか。全身というのは持久力か?」
「そうですね。持久力や、基礎体力をつける感じです。」
「そうか。では私もそこに混ぜてもらおう。」
「え?」
「何か?」
「いえ。」

 持久力は必要だな。基礎体力もつけたい。腕やなんかはあまり関係なさそうだ。
 私は持久力をつけているという、訓練場の端をぐるぐる走っている集団に混ざって一緒に走った。

 やはり皆は私を恐れているのか、初めは戸惑っていたが、長く走っていると私がいることにも慣れたようだった。

「君たちはいつも走っているのか?」
「いえ、他の訓練もします。この後は剣技ですし、明日は筋力トレーニング、明後日は実戦で森に行きます。」
「なるほど。色々組み合わせているんだな。」
「副団長は今日はどうしたんですか?」
「体力不足を感じて訓練しにきた。」
「そうですか。我らと違って呼吸一つ乱れていないように感じますが。」
「私でも息が上がることはある。」
「そうなんですね。」

 ノアに激しく攻められた時に息が上がるなどとは恥ずかしくて言えないが、屈強な剣士たちでもこうして息を荒げることがあるのだと知れただけでもよかった。

 ただ1日訓練しただけでは意味がないだろうから、しばらくは続けてみよう。
 そして問題は魔法騎士たちだ。
 私が思う以上に精度が低いことが分かった。団長はそこを問題視して私に託してきたんだな。
 強化遠征では失敗したが、私にできることはしていこう。
 隊長に普段の訓練メニューを聞いて、直すところは直し、私ももっと頻繁に様子を見に行くようにしよう。

 こうして私は魔法騎士と剣士部隊の練習を度々覗いたり参加したりするようになった。

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