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27.帰ってきたエリオ(ノア視点)
しおりを挟むエリオから遠征から戻ったと手紙が来て、会う約束をしていたが、部屋に通してもらってドアをノックしてもエリオからの返事はなかった。
あれ?出掛けてる?
そっとドアを開けて覗いてみる。
違った。何度目かのデジャヴだ。
机の陰で膝を抱えているエリオを見つけた。
「エリオ、どうした?またあの悪魔のような元王女が何か言ってきたのか?」
「ノア・・・私は、やはり魔法騎士団の副団長など無理なんだ。私が公爵家の人間だからそんなところに置かれて、とてもやっていける気がしない。」
「何があった?」
領地まで送ってもらった時と、領地の森でしかエリオの魔法を見てはいないが、エリオの魔法の腕は一流以上だと感じた。そのエリオが無理だと思うほどのことがあったというのか?
床にあぐらをかいて、落ち込むエリオを膝の上に乗せると抱きしめながら僕はエリオが話してくれるのを待った。
するとポツリポツリと話し始めた。
どうもエリオは遠征で魔法騎士たちの底上げを図ろうとしたが、上手くいかなかったようだ。皆が真面目に訓練をせず、遊んで適当な魔法を放ったり、ふざけて軽い魔法しか放たなかったのだとか。全くエリオの言うことを聞かず、それは自分が至らないから、皆が副団長だと認めず反抗されているのだと言った。
しかし僕にはそうなってしまった理由が違う意味に思えて仕方がない。エリオと他の魔法騎士たちのレベルが違うのではないかと。
彼らは遊んでいたのでもふざけていたのでもなく、全力でやったがそこまでの威力しか出せなかったのではないかと。
「ねえエリオ、エリオは普段どれくらい魔法騎士たちと訓練を一緒にしているの?」
「一緒にはほとんどしない。私は事務仕事が多いし、彼らの邪魔をしてはいけないと思って、彼らが使っていない時に1人で訓練しているからな。」
「そっか。でも遠征は今回が初めてじゃないよね?」
「あぁ。普段は天幕から指示を出して伝令が各隊長に指示を持っていく。コックス領では共に戦ったが、あの対応は異例だった。」
「そっか。やっぱり。」
「何がやっぱりなんだ?」
「僕はエリオの魔法を何度か見てる。どれもすごかった。エリオって、魔法騎士団の中で魔法の腕がトップだって言われてるのは知ってる?」
「まさか。そんなわけないだろう?他にも強い者はいくらでもいる。」
「じゃあ、今度他の魔法騎士たちが訓練してるところを見に行ってみたらいいよ。彼らは遊んでいたのでもふざけていたのでもなく、精一杯だったんだと思うよ。」
「そんなはずないと思うが、ノアが言うのなら見に行ってみよう。確かに皆の実力を把握していなかった。そこから間違っていたのか・・・。」
「うん。それがいいよ。」
「ノアが話を聞いてくれたから、少し希望が見えた気がする。ありがとう。」
「よかった。」
「そうだノア、夜は星を見に行くのか?」
「え?なんで?エリオ星見たいの?」
「遠征に行く前に寝かさないと言っていたから。」
「あぁ。」
エリオは本当にそんな風に思っていたのか。
星を見に行くのも悪くはないな。
『朝まで一晩中エリオを抱きたいってことだよ。』
エリオの耳元で囁くと、エリオの耳がみるみるうちに赤く染まっていった。可愛いな。
「く、訓練か?私が拙い動きや反応しかできないから、稽古をつけてくれるんだな。ノアの手を煩わせて申し訳ないが、その、よ、よろしく頼む・・・。」
そうきたか。
もちろん訓練なんかじゃない。ただひたすらにエリオを愛したいだけなんだけどな。エリオは本当に真面目で可愛い。
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