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23.初めて(ノア視点)
しおりを挟むこの前はエリオの体調が心配だから無理させたくなくて、せっかく恋人になれたのだから焦る必要はないと自分に言い聞かせて、キスだけで我慢した。
その翌々週には休みが合ってエリオの屋敷に来たけど距離が遠い。
前に僕が『今度あの時の続きをしよう』と言ったものだから、きっと緊張しているんだろう。部屋の隅に立って僕のことを睨んでるように見える。
「エリオ、おいで。なんでそんな隅で突っ立ってるの?」
「あ、あぁ。」
ソファーに座ったまま手を広げて待っていると、エリオは恐る恐る近付いてきて、いつものように僕の膝の上に向き合って座った。
「エリオ緊張してるの?顔が強張ってる。」
「上手くできなくてノアに嫌われたくない。上手くできないところはちゃんと復習して練習するから。そうだ、練習しておくべきだった・・・。」
「練習・・・エリオ、練習ってどうやってするつもりだったの?」
「うーんそれは、独身で恋人のいない部下か、使用人か、男娼に来てもらって手ほどきをしてもらうとかだな。
ノアに嫌われないためにちゃんと次までに練習しておく。
だから今日は、下手でも我慢してくれるとありがたい。」
「・・・やめて、そんなことするの。エリオが他の男を相手にするとか、嫌なんだけど。
エリオは嫌じゃないの?僕が他の人と練習しても。」
エリオが平気だと言ったら、もうそれは仕方ないのかもしれないが・・・。そっとエリオの様子を伺っていると、どんどん顔が曇っていった。きっと僕が他の誰かを相手しているところを想像しているんだろう。
「嫌だ・・・。」
「じゃあそんなことするのはやめてね。」
「分かった。だが、練習はどうすればいい?」
練習か。エリオは真面目だな。本当にそんなこと必要ないんだけど。
別に下手でもいいし。僕だって自信なんかないよ。
「そんなのしなくていいよ。」
「私はノアに嫌われたくない。だからできる努力は全てしたいんだ。」
嫌うわけないよ。僕が嫌われることがあっても、僕がエリオを嫌うなんてあるわけない。
エリオがそんなに僕のこと好きなんて嬉しい。
「エリオ、僕がエリオのことを嫌うわけないだろ?」
「そうだろうか?私はノアに格好悪いところや情けないところばかり見せている。いつ嫌われてもおかしくない。」
エリオは自分に自信が持てないでいる。爵位や騎士団の肩書きを抜きにしても、こんなに優しくて、綺麗で可愛くて、愛くるしいのに。
「エリオ、僕はどんなエリオも好きだよ。エリオの全てが好きだよ。大好きだよ。」
「ノア・・・私もノアが好き。大好き。キス、していい?」
「いいよ。たくさんしよ。」
恋人になってもエリオの舌は逃げて逃げて逃げまくる。追いかけて追い詰めて、ジュッと吸うと、甘い吐息が漏れて僕の欲情を煽ってくる。
「はぁ、、んん、、」
ところで僕は完全にエリオを抱く気でいたんだけど、公爵家の次期当主を抱いていいのか?僕が抱かれた方がいいのか?
「・・・ノア、抱いて、ください。」
「いいの?」
エリオは不安そうに瞳を揺らしながら頷いた。
いいんだ。そっか。前に僕がエリオのいろんなところに触れて、エリオが気持ちよくて泣いちゃうって夢の話をしたからかな?
あの時は完全に引いてた気もするけど。
「エリオ、ベッドに行こう。」
「は、はい。」
急にガチガチに緊張して、また顔が強張っているエリオが可愛い。
「ぬ、脱ぐんだよな?」
「そうだね。」
エリオはシャツのボタンに手をかけたけど、その指が小刻みに震えていて上手く外せないようだった。
可愛い。愛しい。脱ぐまで待てそうにないよ。
「エリオ、好きだよ。愛してるよ。」
「うん。私も、、、んん、、」
僕はそのままエリオの唇を奪って、ベッドに押し倒した。
唇の角度を変えて何度もエリオの唇をはむ。舌を滑り込ませると、エリオの舌はやっぱり逃げていく。舌は絡めるのだと教えようかとも思ったけど、このキスはエリオと僕の2人だけの特別なキスに思えてこのままでいてほしいと思った。
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