【完結】うちの子は可愛い弱虫

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22.両想いと恋人の意味

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「エリオ?どうしたの?」

 突然立ち上がって書棚に向かったから、ノアは私の後をついてきた。

「言葉の意味を調べるために辞書を・・・。」
「え?言葉の意味?いきなり何で?何調べるの?」

「両思いと恋人の意味が分からなくて・・・。」
「辞書なんて要らないよ。僕が教えてあげる。」
「いいのか?」
「いいよ。おいで。」

 ノアは私の手を取ると、ソファーに向かった。
 ソファーの上にノアが座って、また私はノアの上に跨って向き合って座っている。
 ソファーの座り方を忘れてしまいそうだ。

「エリオ、キスしよっか。」
「いいのか?」
「いいよ。」


「はぁ、、、ぁ、、ん、、」

 今度はちゃんと追いかけてくるノアの舌からある程度の時間は逃げられた。最後はやっぱり捕まってジュッと吸われたけど、ちゃんと追いかけっこできてよかった。


「エリオ、今更だけどね、こんなキスは友達同士ではしないんだよ。というか、唇へのキスは友達同士でしない。」
「そう、なのか・・・」
「エリオはずっと僕が友達としてエリオのことを好きだと思ってたんだろうけど、ずっと前から僕の好きは恋だった。」
「そう、か。」
「エリオは僕に恋してる。僕もエリオに恋してる。それが両思い。分かった?」

 理解はしたが、納得はしていない。
 とりあえず無言で頷きはした。

「好き同士でお付き合いするのが恋人。分かる?」
「分かる。」

「だから僕たちは両思い。僕はエリオが好きだから恋人になりたいけど、エリオは公爵家の嫡男で、僕は子爵家の後継ぎから外れたような身分だから、恋人は難しいなら諦めるより仕方ない。」

「嘘だ。」
「え?何が?」
「ノアが私に恋をするなんてあり得ないだろ。私に恋をする者などいるわけないんだ。」
「そんなことないよ。僕はエリオが好きだよ。大好きだよ。愛してるよ。できればずっと側にいたいよ。エリオは僕が信じられない?」
「う、そんなことは・・・」

「性的欲求だと心配してるの?」
「・・・。」
「違うよ。そりゃあ好きだから欲情するけど、誰でもいいわけじゃない。エリオしか欲しくない。好きだから触れたいんだよ。ドキドキして、切なくて苦しくて、僕はエリオが好きだよ。」

 ノアが真剣な眼差しで私のことが好きだと訴えてくる。
 それなのに私はノアを疑うなんてどうかしている。それでもやっぱり弱い私は自信なんて持てないんだ・・・。

「本当?」
「本当だよ。信じられないなら何度でも言うから。大好きだって愛してるって何度でも言う。」
「信じる。ノアのこと信じるけど、好きって言ってほしい、です。」

「いいよ。エリオ、大好きだよ。」
「私も、ノアが大好き。恋人、ノアが嫌じゃないならなりたい。」

 言えた。ちゃんと、言えた。

「嫌なわけない。僕もなりたい。エリオの隣に堂々と立つ自信はないけど。」
「何でだ?」
「え?そんなの決まってるじゃん。
 エリオは公爵家の次期当主だし、魔法騎士団の副団長だし、綺麗で格好いいし、みんなにとっては高嶺の花なんだよ。」
「はははは、ノア、そんなわけないだろ?私なんか路傍の石みたいなものだ。」

 ノアが冗談など言うから、私は思わず声を出して笑ってしまった。

「エリオが声上げて笑ってるの初めて見たかも。ちょっと感動。」
「・・・はしたなくて恥ずかしい。」
「そんなことない。僕は好きだよ。」
「うん。」


 ノアは私が何度失敗しても許してくれる。
 情けない私も、格好悪い私も、全部受け入れてくれる。私はノアにたくさん救われているのに、私はノアのために何ができるんだろう?
 私が差し出せるものは・・・金か?
 はぁ、よかった。公爵家でよかった。

 確か昨年子爵領では自然災害があったと聞いた。それにこの前の魔力溜まりによる魔物被害。
 きっと領地は大変だろう。
 よかった。私にも役に立てることがあったようだ。

「ノア、いくらあれば足りる?」
「は?何の話?」
「領地の話。」
「??領地?どういうこと?」
「自然災害とこの前の魔物被害で大変だろ?」
「んー、僕は領地の経済状況は把握してないから分かんない。」
「そうか。じゃあ父上に相談して子爵殿に援助の話をしてもらおう。」

「え?え?突然どうしたの?何でそんな話、どこから湧いて出た?」
「ノアにいつも助けてもらってるから、私もノアを助けたい。私に差し出せるものなんて金くらいしか思い浮かばなかったから。」

「そんなことしなくていいよ。そんなつもりでエリオを好きになったんじゃない。僕はエリオがいてくれるだけでいい。エリオの気持ちがほしい。」
「そうか。あ、では私のこの身を差し出そう。それならいいか?」

「・・・なんか違う。嬉しいけど、嬉しいんだけど、差し出されると複雑。」
「ダメか・・・。」

「いずれはいただきたいけど、いただくけど、僕のこと求めてほしい。甘えてほしい。その方が嬉しい。」
「それでは私が得をするだけではないか。」
「恋ってそういうものだよ。僕は何かをもらうより、してあげたい。
 エリオもそうでしょ?エリオは僕にお金もらったり身を差し出されて嬉しいの?僕に何かしてあげたいって思ったんでしょ?僕も同じ。」
「そうか。確かに。ごめん。でも本当に領地のことは困っているなら相談してほしい。私じゃなくてもいい、父上でもいいから。」
「うん。ありがとう。言っておく。」


「エリオ、今度、あの時の続きしようね。」

 ギュッと抱きしめられて、ノアに耳元でそんなことを囁かれたから、私は顔が燃えてしまうかと思うくらい熱くなった。
 たぶん湯気が出ていると思う。

「ふふふ、エリオ可愛い。」
「わ、分かった。」

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