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20.朝風呂
しおりを挟む「一緒に風呂に入ろう。」
「え?いや、この部屋の風呂は複数人で入るような風呂ではない。」
「そんなことないよ。全然2人ならいける。恥ずかしい?それとも襲われそうで怖い?」
「怖くはないけど、恥ずかしいのはある。」
「さぁ行こう。」
私はノアに抱き上げられて風呂へ連れて行かれることになった。
「エリオは本当に綺麗だね。」
「ノアの兄たちの方が筋肉が発達していて綺麗なんじゃないか?」
「あれは筋肉付きすぎ。強そうではあるけど綺麗とは違う。」
「そうなのか。」
湯は魔道具を使うのが面倒だったので、魔法でサッと溜めた。
というか、風呂に無理に2人で入らなくても服ごと浄化してしまえばよかった。
頭が回っていないんだな。情けない・・・。
お湯で体をサッと流すと、ノアは湯船に入って座った。
「おいで。」
「あ、うん。」
こんな狭いところで向き合っては恥ずかしいと、私はノアに背を向けて湯船に浸かった。
すると、ノアは背後から私を抱きしめた。
肌が密着する・・・
それがお湯の温度なのか、ノアの温度なのか分からなくなって、でも触れる柔らかい感触は確実にノアの胸や腹。
そして腰の辺りにはノアの硬くなったものが当たっている。
これはヤバイ。ドキドキする。
ノアは私の首や肩にキスを落とす。
「ぁ、、はぁ、、、」
「エリオ可愛い。もっと触れたい。触っていい?ダメ?」
「ダメだろ。ここ風呂だぞ?」
「残念。エリオ意外に冷静。」
一緒に風呂に入っておいてなんだが、ここで流されたら、私はノアと体を繋げてしまう気がした。
ノアに触れられると気持ちいい。もっと触れてほしくなる。でも、ノアのそれがただの性欲処理なのではないかと思うと、ズキリと胸が傷んで、怖くて先に進めなかった。
私は経験がないから上手くできないと思うし、そうなってノアをガッカリさせれば離れていってしまうかもしれない。
「ごめん。」
「謝ることないよ。僕の方こそごめん。」
沈黙が気不味い。
こんなに密着しているから余計に。
そのまま2人とも無言で風呂から上がると、無言で朝食をとり、そして一言二言事務的な会話をしてノアは帰っていった。
そして私は反省しかない。机の影で膝を抱えて蹲った。
迷惑もかけた。ノアの優しさにつけ込んで、勝手に連れ帰って、一方的に癒してもらって、少し淫らな行為までした。
嫌われたかは分からない。でもきっと呆れられた。
別に体くらい差し出してもよかったんじゃないか?勿体ぶって私は何様なんだ?
愛のない行為なんて珍しくもないだろうし、体を差し出してもいいくらいノアには救ってもらっている。
ノア・・・さっき別れたばかりなのにもう会いたい。
私は膝を抱えたまま、眠ってしまった。
「あらあら坊ちゃま、またこのような場所でお休みになられて。風邪を引いてしまいますよ。」
「いいんだ。私など風邪をひけばいいんだ。」
「どうなさったのですか?夜会であの方に会われて苦しいことがあったのですか?」
あの方?あぁ、キャスのことか。そんなことはすっかり忘れていたな。
「キャスとは話はしていない。だから別に何もされていない。」
「そうですか。ではノア様と何かありましたか?」
私はノアという言葉を聞いてビクリと体が跳ねた。
「リーナ、誰にも言わないでほしいんだが、母上たちにも・・・。私は、ノアに恋をしてしまったみたいなんだ。」
「まぁ、そうでしたか。」
「でも、ノアが私に恋をするなんてあり得ないだろ?だから苦しい。」
「あり得ない?なぜそう思われるのですか?」
「私など、公爵家という肩書きと母ゆずりの顔以外、何の魅力もない。それに私はノアに情けない姿ばかり見せているから余計無理だろ?
こんな私に恋をする人間など、この世にいるわけがないんだ。欲情の対象となることはあっても。」
「そんなことはございませんよ。坊ちゃまはとても魅力的です。
優しく気遣いができますし、強く逞しい。きっとノア様にも好きになってもらえると思いますよ。」
「そんなことがあるんだろうか?嫌われるのが怖い。」
「私にはノア様は坊ちゃまのことを好意的に見ているように思いましたしたよ。想いを伝えてみてはいかがですか?そして、ノア様のことを慈しむのです。そうすればきっと坊ちゃまに恋をしてくれると思います。」
「そうかな。慈しむのか。」
「想いは言わなければ伝わりません。スタート地点に立つこともできないのですよ。」
「そうか。伝えてみる。リーナ、聞いてくれてありがとう。」
そうだよな。私はノアにだけ言わせた。私だけ気持ちを告げないのは狡いし、言わなければ伝わらないよな。
しかし、淫らなことをしてしまったから、顔を合わせるのが恥ずかしいんだ。
それはさすがにリーナには言えなかった。
不安はある。でも、私も変わりたいとは思うんだ。もっと強くなりたいと、強くなってノアを守りたいと思うんだ。
どうやってノアに伝えようか、ここ数日そんなことばかり考えていた。
そもそも、どうやって約束を取り付けたらいいのか。何も用事がないのに呼び出してもいいのか。用事はあるか、想いを伝えるという用事はある。しかし、そんな些細なことで呼び出していいのかが分からない。
これも人とあまり関らずに生きてきた弊害なのかもしれない。本当に情けないな。
自分が嫌になる。
そしていつも悩むと、机の横やベッドの布団の中で膝を抱える癖も治したい。
ノアには何度か見られてしまっているが、今後はできるだけそんな情けない姿を見せたくはないんだ。
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