【完結】うちの子は可愛い弱虫

cyan

文字の大きさ
上 下
20 / 49

20.朝風呂

しおりを挟む

「一緒に風呂に入ろう。」
「え?いや、この部屋の風呂は複数人で入るような風呂ではない。」
「そんなことないよ。全然2人ならいける。恥ずかしい?それとも襲われそうで怖い?」
「怖くはないけど、恥ずかしいのはある。」
「さぁ行こう。」

 私はノアに抱き上げられて風呂へ連れて行かれることになった。


「エリオは本当に綺麗だね。」
「ノアの兄たちの方が筋肉が発達していて綺麗なんじゃないか?」
「あれは筋肉付きすぎ。強そうではあるけど綺麗とは違う。」
「そうなのか。」


 湯は魔道具を使うのが面倒だったので、魔法でサッと溜めた。
 というか、風呂に無理に2人で入らなくても服ごと浄化してしまえばよかった。
 頭が回っていないんだな。情けない・・・。

 お湯で体をサッと流すと、ノアは湯船に入って座った。

「おいで。」
「あ、うん。」

 こんな狭いところで向き合っては恥ずかしいと、私はノアに背を向けて湯船に浸かった。
 すると、ノアは背後から私を抱きしめた。
 肌が密着する・・・

 それがお湯の温度なのか、ノアの温度なのか分からなくなって、でも触れる柔らかい感触は確実にノアの胸や腹。
 そして腰の辺りにはノアの硬くなったものが当たっている。
 これはヤバイ。ドキドキする。

 ノアは私の首や肩にキスを落とす。


「ぁ、、はぁ、、、」
「エリオ可愛い。もっと触れたい。触っていい?ダメ?」
「ダメだろ。ここ風呂だぞ?」
「残念。エリオ意外に冷静。」


 一緒に風呂に入っておいてなんだが、ここで流されたら、私はノアと体を繋げてしまう気がした。
 ノアに触れられると気持ちいい。もっと触れてほしくなる。でも、ノアのそれがただの性欲処理なのではないかと思うと、ズキリと胸が傷んで、怖くて先に進めなかった。
 私は経験がないから上手くできないと思うし、そうなってノアをガッカリさせれば離れていってしまうかもしれない。

「ごめん。」
「謝ることないよ。僕の方こそごめん。」

 沈黙が気不味い。
 こんなに密着しているから余計に。

 そのまま2人とも無言で風呂から上がると、無言で朝食をとり、そして一言二言事務的な会話をしてノアは帰っていった。


 そして私は反省しかない。机の影で膝を抱えて蹲った。
 迷惑もかけた。ノアの優しさにつけ込んで、勝手に連れ帰って、一方的に癒してもらって、少し淫らな行為までした。
 嫌われたかは分からない。でもきっと呆れられた。

 別に体くらい差し出してもよかったんじゃないか?勿体ぶって私は何様なんだ?
 愛のない行為なんて珍しくもないだろうし、体を差し出してもいいくらいノアには救ってもらっている。

 ノア・・・さっき別れたばかりなのにもう会いたい。

 私は膝を抱えたまま、眠ってしまった。


「あらあら坊ちゃま、またこのような場所でお休みになられて。風邪を引いてしまいますよ。」
「いいんだ。私など風邪をひけばいいんだ。」
「どうなさったのですか?夜会であの方に会われて苦しいことがあったのですか?」

 あの方?あぁ、キャスのことか。そんなことはすっかり忘れていたな。

「キャスとは話はしていない。だから別に何もされていない。」
「そうですか。ではノア様と何かありましたか?」

 私はノアという言葉を聞いてビクリと体が跳ねた。

「リーナ、誰にも言わないでほしいんだが、母上たちにも・・・。私は、ノアに恋をしてしまったみたいなんだ。」
「まぁ、そうでしたか。」
「でも、ノアが私に恋をするなんてあり得ないだろ?だから苦しい。」
「あり得ない?なぜそう思われるのですか?」
「私など、公爵家という肩書きと母ゆずりの顔以外、何の魅力もない。それに私はノアに情けない姿ばかり見せているから余計無理だろ?
 こんな私に恋をする人間など、この世にいるわけがないんだ。欲情の対象となることはあっても。」

「そんなことはございませんよ。坊ちゃまはとても魅力的です。
 優しく気遣いができますし、強く逞しい。きっとノア様にも好きになってもらえると思いますよ。」
「そんなことがあるんだろうか?嫌われるのが怖い。」
「私にはノア様は坊ちゃまのことを好意的に見ているように思いましたしたよ。想いを伝えてみてはいかがですか?そして、ノア様のことを慈しむのです。そうすればきっと坊ちゃまに恋をしてくれると思います。」
「そうかな。慈しむのか。」
「想いは言わなければ伝わりません。スタート地点に立つこともできないのですよ。」
「そうか。伝えてみる。リーナ、聞いてくれてありがとう。」

 そうだよな。私はノアにだけ言わせた。私だけ気持ちを告げないのは狡いし、言わなければ伝わらないよな。

 しかし、淫らなことをしてしまったから、顔を合わせるのが恥ずかしいんだ。
 それはさすがにリーナには言えなかった。

 不安はある。でも、私も変わりたいとは思うんだ。もっと強くなりたいと、強くなってノアを守りたいと思うんだ。

 どうやってノアに伝えようか、ここ数日そんなことばかり考えていた。
 そもそも、どうやって約束を取り付けたらいいのか。何も用事がないのに呼び出してもいいのか。用事はあるか、想いを伝えるという用事はある。しかし、そんな些細なことで呼び出していいのかが分からない。
 これも人とあまり関らずに生きてきた弊害なのかもしれない。本当に情けないな。
 自分が嫌になる。

 そしていつも悩むと、机の横やベッドの布団の中で膝を抱える癖も治したい。
 ノアには何度か見られてしまっているが、今後はできるだけそんな情けない姿を見せたくはないんだ。

  
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

【完結】守護霊さん、それは余計なお世話です。

N2O
BL
番のことが好きすぎる第二王子(熊の獣人/実は割と可愛い) × 期間限定で心の声が聞こえるようになった黒髪青年(人間/番/実は割と逞しい) Special thanks illustration by 白鯨堂こち ※ご都合主義です。 ※素人作品です。温かな目で見ていただけると助かります。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました

ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。 愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。 ***************** 「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。 ※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。 ※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。  評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。 ※小説家になろう様でも公開中です。

処理中です...