【完結】うちの子は可愛い弱虫

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15.ノアの緊張

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「ノア、そういえば母上がノアに一度挨拶したいと言っていたんだった。」
「え?そうなの?僕こんな感じだけど大丈夫かな?」
「母上なら気にしないだろう。」
「そっか。」

 母上に風の魔法を使って要件を伝えると、サロンにいるからノアを連れて来るように言われた。


 コンコン
「エリオットです。ノアも一緒です。」
「入っていいわよ。」

 ドアを開けると、そこには母上と父上と、もう帰ったと思っていたのにエディーもいた。

「え、エドワード様!?」
「ノア、大丈夫だ。あれもノアのことを咎めるような奴じゃない。」

 そうは言ったものの、公爵家の当主夫妻と王子を前にして緊張しているようだった。
 無理もない。私はノアの震える手をギュッと握った。

「へぇ~、あのエリオがねぇ。いいもの見ちゃった。」
「エディー何のことだ?」
「別に~」

 ニヤニヤと変な顔をして私を見てくるエディーに久しぶりに腹が立った。


「2人ともそこに座りなさい。」
「はい。」

 エディーを睨んだまま、ノアの手を握って立ち尽くしていると、父上から座るよう言われた。

「ノアさん、初めまして。エリオットと仲良くしてくれてありがとう。」
「いえ、エリオット様にはとてもよくしていただいています。」
「これからもエリオットのことをよろしくね。」
「は、はい。こちらこそ、よろしくお願いします。」

 急に母上に話しかけられてガチガチに緊張しているノアが可哀想だ。


「ノアが緊張しているから、急用がないなら失礼したい。」
「あらあらあら、エリオットが誰かのことを守ろうとするなんて珍しいわね。」
「ふむ、そうだな。それを見れただけでワシは十分だ。」

 そんなの当たり前だ。ノアは私の大切な人なんだから。
 大切にしたいと、守りたいと思うのは当然のことだ。

「では失礼する。」
「いいの?」
「いいよ。」

 立ち上がった私を、ノアが不安そうに見上げるから、ノアの手を取ってそのまま部屋を後にした。


「見た!?あのエリオが他人にあんな優しく『いいよ』って微笑むとか初めて見た気がする!」
「エディー、はしゃぎすぎよ。」
「うむ、しかし、エリオが彼を大切にしていることは分かったな。彼を選んで正解だったようだ。」

「それに、さっきの動揺具合からもう回復するなんて、ノアって何者?」
「私たちまで追い出されたのに、ノアさんは部屋の中に入れたのね。まぁ私やエディーではキャスの影がチラつくというのもあるんでしょうけど。さすがだわ。」
「うむ、エリオットが幸せであるならワシはそれでいい。」



 -----

「ノア、大丈夫か?」
「うん。緊張した~」
「部屋に戻ったらリラックスできるハーブティーでも淹れよう。あ、ノア時間は大丈夫なのか?」
「ん?うん。エリオにポーション届ける以外は特に予定ないから大丈夫。エリオは忙しい?」
「いや、私も今日は特に予定はない。」

「今日はエリオと一緒にいたい。」
「分かった。」

 一緒にいたいというのは、「友人だから」という理由だと思っていいんだろうか?それとも、違うんだろうか?
 聞きたい気持ちもあるが、怖くて聞けない。
 弱い私を見たから心配してくれているのかもしれない。キスをねだって応えてくれたのも、ノアの優しさなのかもしれない。
 まさか私が公爵家の人間だから逆らえず、嫌々ながら付き合ってくれているのか?
 そう言えば、ノアに無理だとか何かを断られたことは無い気がしてきた。

 友達と言われたら落胆してしまうかもしれないし、ホッとするかもしれない。ノアの気持ちも恋だとしたら嬉しいが、それはないし。
 私に恋する者などいないだろう、さっき弱い私を見せてしまったから余計に無い。


「そうだ、エリオが書いてくれた魔法陣の資料、研究所の他の人にも見せたんだけど、みんな凄いって褒めてたよ。エリオはさすがだね。」
「いや、そんな大したことではない。」

 その後は共に魔法陣の話をしたり、好きな本の話をしたりした。
 楽しかった。楽しかった分、離れるのが寂しいと思った。
 寂しい?そんな感情が私にもあったのか。


「エリオ、どうした?」
「何でもない。」
「そう?じゃあもうそろそろ僕は帰るね。」
「分かった。」

「そんな寂しそうな顔しないで。また会えるから。」
「あぁ。」

 部屋を出る前に、ノアは私のことを抱きしめて髪を撫でてくれた。
 それだけで今週も頑張れると思うから不思議だ。

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