【完結】うちの子は可愛い弱虫

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10.薬草採集

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「ノア!無事か!?」
「怪我をして歩けないのか?大丈夫か?」

 ノアの兄たちが駆け寄って来て、ノアを奪われた。
 いや、降ろすのを忘れていただけだ。私がノアの怪我をそのままにしておくはずがない。

「平気だよ~
 魔物に囲まれてもうダメだと思ったんだけど、エリオが颯爽と駆けつけてサッと倒してくれて、しかも怪我してたところも治してくれたし汚れた服も綺麗にしてくれた。」
「ノア、何もされていないか?虐められなかったか?」
「兄貴、エリオに失礼だよ。エリオは誰かを虐めたりしないし。何も・・・。」

 そう言いながらなぜかノアは頬を染めた。なぜだ?

「おい、ノアに何をした!」
「友情を深めただけだと思うが。」
「そ、そう。そうなの!僕とエリオは友情を深めただけ!」
「そうか?ノアがそう言うなら、まぁそうなのか。」

「子爵殿に挨拶してもいいだろうか?なかなか会う機会がないもので。お休みになられているならまた後にするが。」
「起きていたと思うぞ。呼ぶか?」
「いや、私が向かおう。」

 友人の父に挨拶はしておいた方がいいだろう。たぶん。だよな?

「初めまして、エリオット・ホワイトと申します。」
「コックスでございます。わざわざ挨拶にお越しいただきありがとうございます。ノアを助けていただいたとか。重ねて感謝申し上げます。」
「いえ、大切な友人が危険に晒されるようなことがあればどこへでも駆けつけます。」
「そうですか。」
「ノア殿には日頃から友人として仲良くしていただいてありがたいと思っています。そのご挨拶にと伺ったのですが、お時間を取らせてしまい申し訳ない。」
「とんでもございません。こちらこそ愚息と仲良くしていただきありがとうございます。」
「せっかくできたご縁ですので、何かお困りのことがあれば私でも父でもいいのでお気軽にご相談下さい。」
「ありがとうございます。」

 友人の親への挨拶というのは初めてなんだが、これでいいんだろうか?

「父上、エリオが冷酷って噂、嘘だと思うよ。こんな僕にもいつも気を遣ってくれるし、すごく優しい。僕が失礼なことしても怒られたことすらない。」
「は?お前、エリオット様に失礼なことをしたのか!?」
「うーん、ちょっとだけした。」
「命があってよかったな・・・。」
「ノアが私に失礼なことをしたことなどあったか?記憶にないんだが。私が失態を犯したことはあったが・・・。」
「あるよ。父上の前では言えないけど。」
「なっ!ノア!コックス家を潰す気か?」
「子爵殿、落ち着いてください。私は何もされておりませんから。」
「分かった。エリオット様がそう仰るのであれば、首の皮一枚繋がったんだろう。ノア、今後は気を付けて行動するように!」
「はーい。」

 ノアは私の前でも親の前でも同じような態度なんだな。何だか和む。
 魔力溜まりも消滅して、危険ランクの魔物の討伐も終わった。あとは魔力溜まりから発生した、周辺に増えた魔物を殱滅したら終わりだ。
 3日か4日くらいか?

 ノアが昨日から何も食べていないと言うと、私の分まで食事を用意してくれて、ノアと一緒に食べた。

「ノア、薬草は採れたのか?」
「まだだけど、今出掛けたら危ないってことは分かるから、騎士団の魔物殲滅が完了してから採りにいくよ。」
「私も付いていこうか?その、心配だから。」
「うん。ありがとう。じゃあ一緒に行こ~」


 次の約束ができたことが嬉しかった。
 早く終わればノアと一緒に森に行けると思ったら、それはもう討伐はとても捗った。

 ノアの兄たちも自分の領地を荒らされたことがかなり怒り心頭だったらしく、かなりの活躍を見せた。
 その怒りの矛先が私ではないことにホッとした。できればあまり遭遇したくはない。あの威圧的な眼差しを向けられたら、また震えてしまいそうだから。

 そんなことを思っていたのに、3日後に魔物殲滅が終了した私とノアが森へ向かうと、兄2人が待ち構えていた・・・。

「も~せっかくエリオと2人で薬草摘みに行こうと思ってたのに~、何で兄貴たちがいるの?」
「は?いいだろ?ノアが心配なんだよ。」
「魔物は殲滅されたから大丈夫だよ。それにエリオがいる。」
「俺たちはそれが心配なの!」
「・・・。」

 早くも帰りたくなってきた。
 ノアと一緒に森を歩けるのは嬉しいが、それ以上に筋肉の塊のような体格のいい兄たちが私を見下ろす目が怖い。

 何もしていないはずだが、私は知らないうちに何かしてしまったんだろうか?
 あぁ、思い当たる節はある。勝手に抱きしめて額にキスを・・・。
 兄たちはノアの左右を固めて、私は1人その後を付いていく。
 前にいてくれた方がまだいい。後ろにいてずっと睨まれているのなら、まだこちらの方が。
 もうこの場に私は要らないんじゃないか?

「エリオ、ごめんね。」
「いや、大丈夫だ。」

 ノアがたまに私を気遣って振り向いて声をかけてくれる。


 兄たちは剣士だから体力があるが、ノアはもうそろそろ休憩が必要なんじゃないか?
 かなり疲れた様子を見せるノアが心配になった。

「ノア、休憩を取らないか?」

 私が前にいる3人に声を掛けると、兄たちが一斉に振り向いて私を睨んだ。
 休憩を提案することは、そんなにいけないことだったんだろうか。
 しかし、ノアのためにも引くわけにはいかない。私は震えそうになる手を握り締めた。

「ノアの足元を見ろ。かなり疲労が溜まっている。休憩が必要だ。」
「ノアが疲れたら俺たちが背負っていくからいいんだ。余計なことを言うな。」
「そうか。」

 余計なことだったのか・・・。
 だから睨まれたんだな。納得だ。


「エリオ、ありがとう。
 兄貴たちもう帰ってよ。何でエリオにそんな態度取るの?仲良くするならいいけど、そんな態度取るなら帰って!」

 ノアは兄たちに左右を固められていた腕を振り解いて、私の手を取って走り出した。

「ノア、足、大丈夫なのか?それに兄たちのことも。」
「過保護なんだよね。兄貴たち。それにエリオに喧嘩売るような態度、ごめん。」
「別にいい。それより休憩を取ろう。」

 私が至らないのはいつものことだからな。
 それに、兄たちもノアのことが大事なんだろう。ノアを大切に思う者同士で協力できたらよかったんだが、私にはそんな高度な関係を築くのは無理だったようだ。
 戦闘の連携ならできるんだけどな・・・。
 そのせいでノアと兄たちの関係が拗れたらどうしよう。

「ノア、休憩したら兄たちのところに戻ろう。」
「何でそんなこと言うの?」
「私は兄弟がいないからちゃんと理解できるわけではないが、家族のことを心配しての行動だ。ノアと兄たちの関係を壊したくはない。」
「エリオはやっぱり優しいね。」

 私たちは大きな岩がある場所まで来ると、岩を座れるほどの高さに切りノアを座らせた。
 近くの木の枝を切ってカップを作ると、水を出してノアに渡す。

「エリオはやっぱり凄いね。
 チーズみたいにスパーンって岩を切っちゃうし、木でカップ作れるなんて器用。
 これ、結構繊細な魔法操作が必要だよね?」
「慣れれば大したことはない。」
「エリオはいつも謙虚だよね。もっと誇ってもいいのに。」
「いや、大したことないから。」

「エリオ、好きだよ。」
「え?あぁ、私もノアのことが好きだ。」
「ちょっと違うんだけどね~、でもいいや。嬉しい。」

 友達になると好きだと互いに思いを告げることをするんだな。なるほど。エディーには言ったことがなかった。まぁ、あれは従兄弟だからというのもあるだろう。
 あいつは好きともちょっと違うか。たまにとても憎らしい時があるし。

  
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