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おじさん宮廷魔術師になる
しおりを挟む私の宮廷魔術師としての仕事は、ラウロの書類仕事を手伝うことと、魔術師たちの魔力暴走を止めること。
しかし、私が近くにいるだけで余剰魔力が吸い取られるようで、その仕事も無くなっていった。私はどうやらいるだけでいいらしい。
たまに魔術の研究施設や魔道具研究所に行って余剰魔力を吸収(というかフラフラと施設内を歩き回るだけなんだが)をしたりすることもあった。
しかし暇だ。初めはラウロの机に高く積まれていた書類も、日に日に消化していけば、もう1日を通して暇な時間の方が多くなり、私の仕事の大半は『そこにいること』になった。
書類を理解して要約するためにも魔術の勉強をしてみたが、長年文書を取り扱っていたからかそれほどかからずに理解できるようになった。
理解はできても使えないんだが。
ある日、宰相が私の元を訪ねてきた。
「シモン殿、宮廷魔術師の仕事には慣れましたか?」
「はぁ、慣れたと言えば慣れたかもしれませんね。」
「おや?何か引っかかる言い方ですな。いかが致しましたか?」
「初めはラウロの書類を裁くのは大変でした。でも今はそれほど無いんです。」
「そうですね。大変助かっていますよ。」
「私の仕事は、『そこにいること』で、他にすることがなく暇を持て余しているんです。」
「なるほど。シモン殿の前職は文書の校正だったとか。」
「えぇ。そうです。」
「校正の仕事をここでしてみますか?」
「いいんですか?」
「私か誰かに届けさせれば、この部屋でできますし。いえね、ラウロ殿が校正の仕事が余っているならシモン殿にやらせてあげたいと私のところに来たんですよ。」
「ラウロが?」
「えぇ、シモン殿から仕事を奪ってしまったことを気にしているようでした。」
ラウロはそんなことを気にしていたのか。
確かに校正は長年やってきた仕事だし、それなりに好きな仕事だが、無職で放り出されたわけではないし、今の仕事に不満はないんだ。
こんな国の中心で働けるなんて夢みたいだし、暇だとは言っても不満など無いのに。
「そうなんですね。仕事があればさせてもらえると嬉しいです。
私の仕事は『そこにいること』ですが、その場から動けないわけではないので、書類を取りに行ったり届けるくらいはさせて下さい。」
「そうですか。それは助かります。
城で取り扱うものは機密文書が多いので外注できないんですよ。手伝っていただけるのであれば助かります。」
こうして私の仕事は、ラウロの書類仕事の手伝いと、『そこにいること』に、校正の仕事が加わった。
「シモン殿、先日の西側の洪水の調査書類を知らないか?確認したい点があるんだ。」
「それなら、201の棚の3段目にありますよ。」
「おぉー助かる。」
「シモン殿、なんだった?あの辺境伯からの催促状のやつ。」
「それは昨日処理を終えて陛下に届けましたよ。」
「助かる。先ほど急ぎだと通信が届いたんだ。」
「もうそろそろ結論が出ると思いますよ。」
「ふぅ、シモン殿は仕事が早くて本当に助かる。」
私は校正の仕事をするはずだったんだが、校正の仕事はそれほど無かった。手が足りないとかで少し書類の処理を手伝ったら、そちらがメインになった。
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