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おじさん送迎される
しおりを挟む「シモン、おはよう」
「うわあ!」
「結婚しよ?」
「おはようございます? ラウロ、なぜここに? 私は鍵をかけ忘れただろうか?」
「鍵はかかってたよ。会いたくなって転移で来ちゃった」
「ダメですよ、勝手に人の家の中に転移しては」
「他の人の家に勝手には転移しないよ。シモンの家だけ。屋台でサンドイッチ買ってきたから一緒に食べよ?」
ニコニコしながらラウロはサンドイッチの包みを差し出した。
「お茶を淹れるので少し待っていて下さい」
私は鍋を片手に裏口から井戸へ向かった。
井戸で水を汲んで戻ると、カチカチと火打石で薪に火をつけ、水の入った鍋を置いた。
「そっか。魔力が無いと水が出る魔道具も火をつける魔道具もコンロも使えないんだ……言ってくれれば俺がお茶くらい淹れたのに」
「もうずっとこうして生活しているので慣れているから大丈夫です」
「シモン、結婚しよ?」
「やはり私はラウロと結婚など、ん……」
私は言い終わらないうちに魔術で声を奪われた。息はできるし苦しくはないけど、声は出ない。
「まだ考えたいのね? 分かった」
「……」
私は喋ることができないので無言でサンドイッチを食べた。
「仕事場まで送っていくね」
「……」
ラウロは私の手を握って歩いていく。
「こっち? あっち?」
話せないままの私は指で方向を示しながら仕事場へ向かった。
「おはよう~。ねぇそこの人、シモンの仕事は何時に終わるの?」
「今は忙しくないし5時じゃない? それよりあなた誰?」
「俺? シモンの未来の夫」
「へぇ、あなた知らないの? シモンさんって魔力無いのよ? 私にしない?」
「え~無理。シモンに魔力無いのは知ってるし。俺、勝手に人の知られたくないような事を話す奴って嫌いなんだよね~だからあんたは無理」
「なによ。あなた見る目ないわね」
「どうでもいいけど、俺やシモンに喧嘩売るなら買うよ?」
ここは私の職場で、こんなところで揉め事を起こされると私が仕事をし辛くなるんだが……
「あ、ごめん。シモン。声出ない魔術かけたままだったね。仕事頑張って。また終わる頃に迎えに来るね」
去り際にラウロは私にかけた魔術を解除すると、また一瞬で消えた。
きっと仕事に行ったんだろう。
「シモンさん、あんな若い子に手出したの? 上手いことやったわね」
「いえ……」
手を出したというか出されたというか、でももう断ろうと思っているのに、ラウロは周りから固めて逃げ場を奪おうとしているのか?
いや、まさかな。
仕事自体はいつも通りだったが、何やら私とラウロのことが噂になっているようで居心地が悪かった。
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