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テオの仕事
しおりを挟む俺は仕事が終わると真っ直ぐにテオがいる宿に向かった。
ガチャッ
「テオー」
「あぁ、、気持ちいい、、もっと来て、、あぁ、あ、すごい、、あぁあ、、、」
宿の部屋を開けると、テオと見知らぬ男がベッドの上で絡み合っている最中だった。
「キース、おかえり。キースも一緒にする?」
「・・・。」
俺は一歩も動けなかった。
テオのというより、他人のそのような行為の最中に出会したことなどなかったし、まさかテオが他の男を部屋に連れ込むなんて思ってもみなかった。
テオの白く美しい体と、動く度にサラサラと靡く髪がとても綺麗で、目を離せなくなった。
しかし、このままここにいるわけにはいかない。
「ご、ごめん。覗くつもりは無かったんだ。俺は外で待っているから・・・。」
俺は部屋を出て静かにドアを閉めると、階段の踊場まで歩いてその場にしゃがみ込んだ。
別にテオに対しても、相手の男に対しても、怒りが湧くことはなかった。
テオは俺の恋人じゃないし、これは俺の一方的な想いだから仕方ないことだと思う。
男娼であるテオが体を売ることは仕事なんだ、仕事・・・。
それでも胸が苦しくて、テオと他人の行為を見て張り詰めてしまった自分の股間が情けなく見えた。
膝を抱えて顔を伏せて、必死にあの光景を忘れようとした。でも忘れられるわけなかった。
しばらくすると、テオが俺の前に立った。
「キース、終わったよ。」
「そうか・・・。」
「怒ってる?」
「怒ってはいない。テオが悪いわけじゃない。俺が情けないだけだ。」
「え?キース、泣いてるの?」
「え?」
テオに指摘されて頬に手をやると、濡れていた。俺は泣いたのか?
「何でもない。大丈夫だ。」
俺は慌てて服の袖で目を擦った。
「キース、本当に僕のこと好きなの?」
「あぁ。テオのことが好きだ。」
「そうなんだ・・・。ごめん。」
「謝らなくていい。お腹空いてるか?」
「え?うん。」
「一緒に夕飯を食べに行こう。」
「うん。」
俺たちは並んで歩いて街の食堂に向かったが、その間に会話は無かった。
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