34 / 56
34.重なる影 ※
しおりを挟む「ジョシュア、いいんだな?」
「はい。洗浄剤も用意しました」
「ジョシュアがか?」
「はい。薬師のところに行ってきました」
「そうか。俺が入れてやるから膝を抱えて力を抜いていろ」
「え? 自分でできます」
「いいから」
やはり恥ずかしいな。こんなところ誰にも見られたことがない。ギュッと目を瞑って膝を抱える。
ふぅーっと息を吐いて力を抜いた。
「ひゃっ……」
ヒューゴ様が私の中に洗浄剤を入れると、中がそっと掻き回されるような何とも言えない感覚が訪れて、それはだんだんと引いていった。
初めての感覚だった。
「ジョシュア、可愛いな」
ヒューゴ様が優しい顔をして、唇を重ねる。舌をヌルヌルするキスをたくさんして、力が抜けた頃にヒューゴ様の指が私の胸をフニフニと刺激する。
「あっ……ひゅ、ご、さま……」
「気持ちいいか?」
「はい」
ヒューゴ様はここにいるのに触れているのに、もっと近づきたくて、私はヒューゴ様の腕を掴んだ。気持ちよくて甘えたような声が止まらなくなる。
いつもと違ったのは、その後ヒューゴ様は私に膝を抱えさせて、まさかの私のお尻に舌を這わせた。
「や……ダメです……そんなところ……」
「俺に任せておけ」
「ひっ……」
指? 何かが私の中に侵入してきた。変な感じだ。痛くはないが気持ちよくもない。違和感?
指はグネグネと動いていて、ペシェに話を聞いていなかったら、何をしているのかと不安になったかもしれない。話を聞いておいてよかった。
グネグネと解しながら奥に進んでくる。
そろそろだろうか? ペシェは気持ちいいところがあるんだと言っていた。震えるくらい気持ちよくて頭が真っ白になるとか。
本当にそんなことがあるのか分からないが、いつそれが訪れるのかと少しドキドキしながら、その時を待つ。
「ああ……まっ……ひゅ……あっ……」
ペシェの言っていたことは本当だった。視界が真っ白になって、それはすぐに戻ってきたけど、もう何も考えられなくて、必死にヒューゴ様の腕を掴んだ。気持ちいいけど、今までの気持ちよさのように、ふわふわと全身に広がっていく心地よさとは違う、体を貫くような鋭い快感は、私をどこか遠くへ攫っていってしまうのではないかとさえ思えた。ガクガクと震えて声も止まらない。
息が乱れて、苦しくなってくると、ようやくヒューゴ様の指が出ていった。
「ジョシュア、可愛い。ゆっくりするから、苦しかったら言うんだぞ」
「はい」
ヒューゴ様のものがヌルヌルとあてがわれて、私の中にゆっくりと入ってくる。指とは全然違う質量。
「んはっ……」
グイグイと中を押し広げるように進んでくるんだが、本当にゆっくり、私のことを気遣いながらだということが分かる。ヒューゴ様は本当に優しい。
ヒューゴ様のそういうところ、好きだな。
昼間に騎士たちの恋愛の話を聞いたせいか、なんだか私も恋をしているような気分になってきた。
胸がドキドキして、少し苦しくて、そして温かい。私に触れる大きな手が、その優しく見下ろす凛々しい顔が愛しい。
私はヒューゴ様のもので従者だから、ヒューゴ様に恋なんてしてはいけないんだけど、これはごっこだ。きっと愛する人との行為なら、とても幸せなんだろうなんて思いながら、ごっこ遊びを楽しんでいるだけだ。そう自分に言い聞かせた。
ヒューゴ様の質量に、少しの苦しさはあるが、まだ少し余裕があった。
吸い込まれそうな黒曜石の瞳を見つめると、ギュッと心を掴まれる。
「キス、してください」
私はヒューゴ様に手を伸ばしてキスを強請った。
今だけは、私の甘い恋人ごっこに付き合ってください。
ヒューゴ様は私が伸ばした手をギュッと握って、何度もキスを繰り返しながら私の奥に進んでくる。
「あっ……はっ……」
少し苦しいけど、今の私は恋人ごっこ中だから、この苦しさも愛おしい感じがして幸せだ。
「ジョシュア、大丈夫か?」
「はい」
奥まできたのか、ヒューゴ様は動きを止めてじっとしている。何をしているんだろう?
「ジョシュア……」
「ヒューゴ様、どうしたんですか?」
「俺は感動している。ずっとこのままでいたいくらいだ」
「はい」
ペシェの話では、女性との子作りと同じように抽送を繰り返すのだと聞いていたが、ヒューゴ様は動かない。
人それぞれのやり方があるのかもしれないが、私はこの状態で待機していていいんだろうか?
中にいるヒューゴ様のものが熱くて、本当に私の中に彼がいるのだと実感できる。自分のものではない熱が体の奥から私を焦がしていく。
私はヒューゴ様の黒曜石のような瞳をじっと眺める。その綺麗な目は、どこまでも深く続く夜空みたいだと思った。
「抱きしめていいか?」
「はい」
ヒューゴ様は私の背中に手を回すと、私を抱き起こして抱きしめてくれた。
「うあっ……」
さっきより奥にヒューゴ様がグイッと入ってきて吐息と共に声が漏れる。
ヒューゴ様の背中に手を回すと、ヒューゴ様の匂いがして、その匂いを吸い込んだ。
お腹の奥から焼けるように熱くて、苦しい感じがするが、この匂いを嗅いでいると落ち着く。私はヒューゴ様の腕の中にいるのに、ヒューゴ様は私の中にいて、これが体を重ねるということなんだと感動した。抱きしめられているだけで、頭の中が甘い蜂蜜みたいにトロリと溶けていく。
「少し動くぞ」
「はい」
抱きしめたまま私を寝かすと、手をギュッと握ってくれた。絡めた指が何だか淫らでドキドキする。
「あっ……うあっ……ひゅ、ご、さま……」
涙が滲んで、視界が霞む。
動きはゆっくりなのに、その動き全てが気持ちいい。
お腹の奥だけだった熱がどんどん全身に広がって、体がビクビクと跳ねて、声も止まらなくて、奥にトンって当たる度にゾクっとする。
「気持ちいいか? こっちも一緒にしてやるからな」
そんなことを言いながら、ヒューゴ様は私の中心で揺れているものをそっと握って扱き始めた。
「あっ、ダメ……」
頭が本当に溶けてしまったみたい。
快感以外の感覚がなくなってしまったみたいに訳が分からなくなって、快感の大きな波に飲み込まれる。
気がつくと私はヒューゴ様に抱きしめられて寝ていた。
訳が分からなくなったのは勿体なかった。
ヒューゴ様の胸に擦り寄って、甘えてみる。まだ私の頭の中は恋人ごっこの続きをしたいみたいだ。愛しい人の腕の中で眠る幸せを全身で感じている。
眠りたくないな。きっと朝になれば恋人ごっこの感情は終わってしまうだろう。いつもと同じ日常に戻るだけなんだが、それが惜しいと、寂しいと思ってしまった。
このままずっと起きていて、ヒューゴ様を愛しいと思いながら腕に包まれていたい。
それくらい恋という感情は甘美なものだった。
しかし残念ながらこの安心する匂いと、心地よい温度の中では眠気の方が勝ってしまいそうだ。夢の扉を開けて、後ろ髪引かれる思いでゆっくりと夢の中に浸かっていった。
283
お気に入りに追加
516
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
騎士団長である侯爵令息は年下の公爵令息に辺境の地で溺愛される
Matcha45
BL
第5王子の求婚を断ってしまった私は、密命という名の左遷で辺境の地へと飛ばされてしまう。部下のユリウスだけが、私についてきてくれるが、一緒にいるうちに何だか甘い雰囲気になって来て?!
※にはR-18の内容が含まれています。
※この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない
上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。
フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。
前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。
声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。
気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――?
周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。
※最終的に固定カプ
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?
み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました!
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい
三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです
無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す!
無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!
【BL】完結「異世界に転移したら溺愛された。自分の事を唯一嫌っている人を好きになってしまったぼく」
まほりろ
BL
【完結済み、約60,000文字、全32話】
主人公のハルトはある日気がつくと異世界に転移していた。運良くたどり着いた村で第一村人に話しかけてたら求愛され襲われそうになる。その人から逃げたらまた別の人に求愛され襲われそうになり、それを繰り返しているうちに半裸にされ、体格の良い男に森の中で押し倒されていた。処女喪失の危機を感じたハルトを助けてくれたのは、青い髪の美少年。その少年だけはハルトに興味がないようで。異世界に来てから変態に襲われ続けたハルトは少年の冷たい態度が心地良く、少年を好きになってしまう。
主人公はモブに日常的に襲われますが未遂です。本番は本命としかありません。
攻めは最初主人公に興味がありませんが、徐々に主人公にやさしくなり、最後は主人公を溺愛します。
男性妊娠、男性出産。美少年×普通、魔法使い×神子、ツンデレ×誘い受け、ツン九割のツンデレ、一穴一棒、ハッピーエンド。
性的な描写あり→*、性行為してます→***。
他サイトにも投稿してます。過去作を転載しました。
「Copyright(C)2020-九十九沢まほろ」
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
愛しい番の囲い方。 半端者の僕は最強の竜に愛されているようです
飛鷹
BL
獣人の国にあって、神から見放された存在とされている『後天性獣人』のティア。
獣人の特徴を全く持たずに生まれた故に獣人とは認められず、獣人と認められないから獣神を奉る神殿には入れない。神殿に入れないから婚姻も結べない『半端者』のティアだが、孤児院で共に過ごした幼馴染のアデルに大切に守られて成長していった。
しかし長く共にあったアデルは、『半端者』のティアではなく、別の人を伴侶に選んでしまう。
傷付きながらも「当然の結果」と全てを受け入れ、アデルと別れて獣人の国から出ていく事にしたティア。
蔑まれ冷遇される環境で生きるしかなかったティアが、番いと出会い獣人の姿を取り戻し幸せになるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる