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21.よく眠れた朝
しおりを挟むあれ? 怖い夢は? 眠くなって寝たと思ったら朝だった。しっかり寝たからか、頭がスッキリとしている。
それなのに、それだからなのか? 私の中心が勃ち上がっていて、収まれ収まれと思っていたら、ヒューゴ様が起きた。
身じろぎしたヒューゴ様の中心も勃ち上がっていて、なんだかホッとした。
ヒューゴ様も同じだった。
同じだと言うと、ヒューゴ様はなぜか「え?」と驚いた。
「え? ってどうかしましたか?」
「いや、ジョシュアはその、夜伽というか閨というか、その行為は知っているのか?」
「子作りですか? 知ってますよ」
「そうか。したことはないんだよな?」
ヒューゴ様は面白いことを聞く。
私は一応体はもう大人なのだから、それくらいのことは知っている。もしかして私はヒューゴ様より小さいから、子どもだと思われていたのか?
「ヒューゴ様は結婚していたのですね。皇后様は亡くなられたのですか?」
久々に頭が冴えていたから、私は思わず聞いてしまった。愛していた人が亡くなったかなど聞くべきではないのに、しまったと思ったが後の祭りだった。
「は? 俺は結婚したことなどない」
「そうなんですね。お子様はたくさんいたのですが、皇后様が見当たらなくて不思議でした」
「ああ、あれらは俺の子だが、あれらの母親はいない」
あれ? 違ったようだ。
皇后様も側妃もいないのが不思議だったが、ヒューゴ様は結婚したことが無いらしい。それは私もなんだが、それでも子どもがたくさんいるんだ。
それがこの国の文化なのかもしれない。
あれだけいれば、この国の未来は明るいな。
子ができて産まれるまでには時間がかかる。効率を考えれば、複数の女性に産ませた方がいいんだろう。ヒューゴ様はよく考えているな。
結婚しない理由は分からないが、子がいるんだから焦る必要もないんだろう。
「湯浴みをして、食事にしよう」
「はい。私は一旦部屋に戻ります」
こんな悠長に話なんかしている場合ではなかった。ヒューゴ様の朝の貴重な時間を奪ってしまった。私はすぐにベッドから降りるとガウンを羽織って部屋を出た。
もし、これからも一緒に寝てくれるのなら、迷惑をかけないよう朝起きたら速やかに退室するようにしよう。
「ジョシュア、キスしよう」
「はい」
いつものようにヒューゴ様の椅子に近づくと、頬に手が触れる前にヒューゴ様は膝に乗れと言った。
「え? そんなことをしたら不敬罪になりませんか?」
「ならない」
本当にいいのか? ヒューゴ様の指示なのだから従わないと言う選択肢は無いが、なんでそんなことをしろと言うのか全然分からない。
私は靴のまま乗るのはダメだと思い、靴を脱いでヒューゴ様の腿の上に立とうとした。
「ちょっと待て、それは違う」
「ごめんなさい」
やはり違ったようだ。私のことを試したのか?
「俺の言い方が悪かった。俺の膝の上に座れ」
「はい」
乗るというのは座るという意味だったらしい。危なかった。それでも膝の上に座るなんて畏れ多くて、浅めに座る。
怒られるかと思ったけど、抱きしめてくれたから、正解だったようでホッとした。間違えなくてよかった。
「ジョシュア、お前からキスしてみろ」
私からキスなんてしたことない。目を閉じたら唇の位置はどうやって確認するんだ? ズレてしまったりしないのか?
私はヒューゴ様の頬を両手で挟むと、親指で唇の位置を確認した。
ヒューゴ様はそんな私をジッと見ていて、なかなか目を閉じてくれない。
「目、閉じて下さい」
言っていいのか分からなかったが言ってみると、ヒューゴ様はその吸い込まれそうな黒曜石のような目を瞼の裏にしまった。
位置を確認しながら唇を重ねて、ズレなかったからホッとして唇を離した。
「ジョシュア、足りない」
「はい」
足りないということは、ヒューゴ様は舌をヌルヌルするキスを求めているということだ。何度もしているから覚えているけど、自分からするのは勇気が要る。上手くできなくて怒られたりしないだろうか?
少し開いたヒューゴ様の唇の隙間から舌を滑り込ませて、口の中をなぞっていく。これでいいのか分からない。舌を合わせると、ヌルヌルと絡め合わせて、大丈夫かな? と不安になりながら離れた。
「ジョシュア、よかったよ」
「そうですか。ヒューゴ様を喜ばせられるようもっと頑張ります」
よかった。間違えなくてよかった。
本当は練習したいけど、他の人とはしてはいけないと言われているから、イメージトレーニングで練習するしかない。要望に応えられるよう頑張ろう。
「なあ、ジョシュアは普段俺とキスしたいとか思うのか?」
「思いません」
「は? なんでだよ」
「なんでと言われても、ヒューゴ様にそんな思いを持つなど畏れ多いですし」
ヒューゴ様に触れたいとかキスしたいなんて、思っても決して悟られてはいけない。
私は人質で、ヒューゴ様のものなのだから、ヒューゴ様に従うべきで、そんなこと考えてはいけないんだ。私はヒューゴ様に言いながら、自分自身にもしっかりと言い聞かせた。
またヒューゴ様はムッとしたから、もしかしたら私の思いが透けて見えてしまったのかもしれない。もうキスしたいとか、そんなことは考えないようにしますから、どうか許してください。
その後、ヒューゴ様にキスされた。
正しくはこうやるのだと教えてくれたんだと思う。
「ああ……」
しっかり寝て冴えていたはずの頭がぼんやりする。ヒューゴ様の熱と香りとヌルリと撫でる舌の感触が気持ちいい。ふわふわと幸せな気分に浸りながら、快感に抗えなくなりそうで怖いとも思った。
「ジョシュア、俺とのキスは好きか?」
「はい」
「気持ちよかったか?」
「はい」
そんなの当たり前です。わざわざそんなこと聞かなくても誰もがヒューゴ様のキスは好きだと思います。
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