【完結】女神と称された王子は人質として攫われた先で溺愛される

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14.ヒューゴ様のお迎え

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『ヒューゴ様、騎士団は怖いです。助けてください』
 私は風魔法でヒューゴ様に声を飛ばした。

 しばらくすると周りにたくさん人が集まってきて、人に囲まれていると分かって、余計に怖くなった。怖くて顔も上げられない。
 今までは、どこに行っても温かく迎えてくれる人ばかりだったから、安心しきっていたけど、世の中には怖い人もいるんだと知った。

「ジョシュア!」
 ヒューゴ様の声が聞こえて、私が結界を解いたら、ヒューゴ様に抱きしめられた。

「ジョシュア、何があった?
 おい! お前ら何があったか説明しろ!」
「ごめんなさい。騎士団長の部屋に行こうと思って、でも場所が分からなかったから聞いたんです。でも、キスされたら怖くなって……」
「キスだと? どいつだ?」
「え?」
「どいつにキスされた? それ以外は何かされたか?」

 私はさっき風で吹き飛ばして、まだ倒れたままの人を指差した。

「あの人」
「誰かがその現場を見つけて、奴を殴り飛ばしたということか?」
「殴ってないけど、怖くて風で吹き飛ばしたのは私です。ごめんなさい……」
「お前ら、あいつを縛り上げておけ」

 ヒューゴ様がそう言うと、周りの人が倒れた人を縄で縛って運んでいった。
 なんで縛ったのかはよく分からない。倒れてるから暴れたりはしないと思うんだけど。

「団長を呼んで来い! それ以外は訓練に戻れ!」
「「「はい!」」」

 みんないなくなって、廊下にはヒューゴ様と2人だけになった。

「ジョシュア、他には何もされてないか?」
「はい。壁に押し付けられてキスされただけです。あの、ヒューゴ様、キスは誰とでもしていいものですか? 『キスくらいいいだろ?』と言われて、私は答えられませんでした。だからあの人は怒って、暴力みたいな怖いキスをしたのかも」

 悪いのは私かもしれないと思って、そしてヒューゴ様に迷惑をかけてしまったのではないかと不安になった。

「キスは俺以外とするな」
「はい」
「されそうになったらまた風で吹き飛ばしていいからな」

 そう言うと、ヒューゴ様は服の袖で私の口をゴシゴシ擦るように拭いた。
 そして、頬に触れて、私の涙が流れた跡をなぞった。

「ジョシュア、泣いたのか?」
「泣いてしまいました」
「そうか。ちゃんと処分するから安心しろ」
「処分? 私はとうとう殺されるのですか!? フレイヤはどうなりますか!!」

 人に風魔法を使ってしまったんだ。私が殺されるのは仕方ないかもしれない。だけど、私が死んだら、フレイヤはどうなってしまうんだろう? 私は国を守れないのか? 少しパニックになった。

「落ち着け。ジョシュアは何も悪くないんだから俺の側にいろ。処分するのはさっきの奴だ」
「そう……ですか」

 そんな話をしていると騎士団長と思われる人がやってきた。
 さっきの怖い人と同じで、大きな体に筋肉がたくさんついていて、怖いと思った。

「陛下、うちの者が彼に失礼を働いたとか。申し訳ございません」
「失礼を働いた? 団長としてはその程度の認識ということか?」
「いえ、陛下のご指示の通りにいたします」
「ん? ジョシュア、どうした?」

 ヒューゴ様は、私の体が震えていることに気付いてしまった。
 止めようとしているのに止められない。隠そうとして拳を握ってみたのに、止められなかった。

「追って沙汰は出す。牢にでも入れておけ。俺は戻る。来期の予算は削るからな」
「はい……」

 ヒューゴ様は私を横抱きに抱えると、そのまま部屋に戻っていった。
 手は震えていたけど、歩くことはできるんだけどな。少しだけ、まだ怖くて、強いヒューゴ様の腕の中にいたいと思った。だから私は大人しく抱き抱えられたまま運ばれていった。

「ジョシュアはずっと守られて生きてきたんだもんな。怖い目に遭ったことなど無かったんだろう。大丈夫だ。俺がいるから」

 そうか。私はずっと守られてきたんだ。言われるまで知らなかった。確かに怖い目に遭ったことは無いと思う。
 動物を解体するのを見るのは少し怖かったけど、私自身が何か怖い目に遭ったことはない。あの騎士のキスが暴力なら、暴力など初めて振るわれたことになる。

 抱き抱えられたままヒューゴ様はソファーに座って、そのまま私のことを抱きしめていてくれた。

「ヒューゴ様、迷惑をかけてごめんなさい」
「気にするな」

 
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