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6.友達の定義

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 帰りに会うことは無かったが、それから毎朝タツミは僕の家まで迎えにきた。なぜだ?

「なぁ、なんで毎日迎えに来るんだよ」
「ササが学校サボりそうだから」
「は? お前に関係ないじゃん」
「そうか。じゃあ日課だ」
「は? 日課とかおかしいだろ。まだ知り合って間も無いのに」

 こいつ、意味が分からんことを言うが、ちょっと面白い。やっぱり一番面白かったのはタコさんウインナーだよな。あれがあるから、なぜかこいつに親しみを持ってしまう自分がいる。怪我をしている僕の歩幅に合わせて、ゆっくり歩いてくれたのも理由の一つかもしれない。

「怪我はまだ痛いか?」
「あぁ、そりゃあ痛いだろ。まだ一週間経ってないんだからな。あと一週間くらいは痛いかもな」
「そうか、そんなにずっと痛いんだな」

 なんだ? 「俺はやられたりしないから怪我がどれくらいで治るか知りません」ってことか?
 馬鹿にしやがって。前言撤回。全く親しみなんて持てない奴だった。上から目線できやがって。

「ちゃんと飯、食ってるか?」
「は? 飯? ほれ、これで食えって毎朝千円札が机に置いてあるから大丈夫だ」

 僕は家を出る時に、机に置かれていた千円札を掴んでポケットに入れていたものを出してタツミに見せた。

「買って食うのか?」
「あぁ。当たり前だろ? 千円札を食ったりはしねぇよ」
「そうか。ササは細いよな」
「なんなんだ? さっきから、マウント取ってきてんのか? お前に比べたら筋肉は少ないかもしれないけど、僕はヒョロガリじゃない!」

 何が言いたいのか分からない。
 マウント取ってきてるだけなら嫌なやつだな。何が目的だ?

「いや、そうではなくて、成長期なのに栄養が足りてないのかと。タンパク質とか。心配なんだ」
「心配? なんでお前が僕の心配するんだよ」
「友達だから」

 友達? 僕とタツミが? いつ友達になったんだよ? 謎すぎる。
 しかし友達って、どうなったら友達なのか線引きが謎だよな。さっきの腹立たしさは少し熱を収めて、僕は心の中で首を捻った。

「明日の昼、一緒に食べないか?」
「は?」
「2年の教室に来るのは怖いだろ? 俺が迎えに行く」
「え? ちょっ……」

 待てと言う前に校門をすぎて、タツミは2年の下駄箱に向かってしまった。僕は昼を一緒に食べると言われて、驚いて立ち止まってしまった。昼? 僕とタツミは昼を一緒に食べる仲なのか?
 それより、僕のクラス知ってんの?

「ってことがあってさ、タツミが僕のこと明日の昼に迎えに来るらしい」
「気に入られてんじゃん」

「なぁ、友達ってどうなったら友達なんだ?」
「ササはタツミと毎日一緒に登校してんじゃん。それは友達だろ」

「なるほど。確かにやってることは友達だな。家に泊まったし」
「は? ササお前、あのタツミの家に泊まったのか?」
「そんなに仲良かったのか」

 しまった。口が滑ってしまった……。
 風呂に入れてもらったなど絶対に言えない。そしてそんなことを隠していることは、こいつらには絶対に知られてはいけないと、慌てて窓の外を向いて「まぁな」と曖昧に答えた。

「それは確実に友達だな」
「そうか……」

 はぁ、しかし最近暇だな。
 ちょっかいかけてくる奴らがいない。
 おかげで怪我が増えることなく治る一方なのはいいんだが。

 そろそろちょっかいかけてくる奴らを相手したいんだけどな。
 頻繁に喧嘩をふっかけられるのは面倒だが、こうも平穏なのはなんとも退屈だ。窓の外を見ながら、そんなことを考えていた。

 
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