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5.一緒に登校
しおりを挟む翌日になり、学校へ行く準備をしているとチャイムが鳴った。
ピンポーン
なんだ? こんな朝早くに宅配便か?
そう思って玄関の扉を開けるとタツミがいた。
「は?」
「ササ、おはよう。学校に一緒に行こう」
なぜ? 一体なぜ? 意味が分からない。
タツミが迎えに来る理由が分からない。昨日は僕の怪我とかが心配だったのかもしれないけど、今日は何だ?
もう出るところだったし、探る意味でも一緒に行くことにした。
「分かった。待ってて。もう出るから」
鞄を取ってきて鍵を閉めた。
なぜ来た? とストレートに聞いていいものか迷う。こいつの鋭い目を朝からまともに見てしまうとゾクッとして少し憂鬱になるんだ。朝からガン飛ばされて、いい気分になる奴なんかいないと思う。
声のトーンから、怒っているわけではないのだと思うが、こいつのことを知らなさすぎて分からない。
「待たせたな」
「いや」
学校までの道中、会話らしい会話はなかった。そしてまた、僕の歩幅に合わせてゆっくり隣を歩くんだ。何なんだ? 何か話があったから迎えにきたんじゃないのか? 礼をしろということか?
「こないだの礼は何がいい?」
「何のだ?」
「泊まらせてもらっただろ?」
「あぁ、別に礼など必要ない」
は? じゃあなんだ? なぜこいつは僕を迎えにきたんだ?
「そうか。じゃあなぜ僕を迎えにきた?」
「別に深い理由はない。せっかく知り合ったのだから交友を深めようと思っただけだ」
「なるほど」
は? なるほどと一度は納得してみたものの、はっきり言って意味不明だ。害がないなら別にいいが。本当に害がないのかはまだ分からない。
商店街を抜ける時に、過去に喧嘩した知り合いというか顔見知り? を何人か見かけたが、また今日も目を逸らされた。
たぶん隣にタツミがいるからだよな?
なんか腹が立つ。
校門を抜けると、タツミはすぐに2年の下駄箱に向かっていった。あいつ2年だったのかよ。僕は1年だし学年が違うなら知らないのも無理はない。
「おいササ、お前大丈夫かよ!」
「タツミにボコられたって本当か?」
「タツミに何したんだよ」
教室に入るとクラスの奴らが寄ってきた。
「は?」
「は? じゃねぇよ。なんでタツミと一緒にいたんだよ。ボコられて送られるとかどうなってんだ?」
僕がタツミと一緒に登校したのをみんな見てたらしい。
しかも僕は傷だらけで、顔に痣もあるし足もちょっと引き摺ったりして、喧嘩しましたって感じの見た目だ。
「タツミって有名なの? てかタツミにはボコられてねぇし」
「ササ、お前大丈夫か? タツミって言えば泣く子も黙るあの辰巳将生だぞ? 眼力だけで何人か殺したとか」
「そうだぞ。ササがいくら調子こいてるからってタツミに手出すとは命知らずだな」
タツミってやっぱ有名なのか。なんか名前を聞いたことがある気がしたんだよな。それより調子こいてるとは失礼な。僕はちょっと苛立って、鞄をドンっとわざと音を立てて机の上に置いた。
「タツミはなんか分からんが助けてくれた。僕がヘタ打って動けないところを」
「え? あのタツミが? 人を殺すなら分かるが助けるなんてことあんのか?」
殺すって、マジで殺してたら少年院とか入れられてんだろ。ちょっと喧嘩が強くて目つきが鋭いだけで酷い言われようだと思った。
「タツミには何もされてない」
タコさんウインナー作ってくれたとか言ったら信じてもらえねぇだろうな。
まぁ別にそんなこと話すこともないか。
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