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3(桐崎視点)

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 朝起きると、体が動かない。なんだ? 金縛りってやつか? そう思って顔を横に向けると、真面目くんが俺の腕にしがみついて、足まで絡めて、まるで俺を抱き枕のようにして寝ていた。
 真面目くんのせいだったのか。金縛りじゃなかったことにはホッとしたが、寝ているくせに結構な力で抱きつかれていて、引き剥がすことができなかった。
 仕方ないから起きるまではこのままでいてやるよ。もうそろそろ起きるだろ、なんて思っていたが、こいつはなかなか起きなかった。

「あ、おはようございます。桐崎くん。ごめんなさい、迷惑かけて」
「いや、いい。大丈夫か?」

 目を覚ますと、真面目くんは慌てて俺から離れて、目も合わせない。発情期でもなければ俺と関わるような奴じゃない。平常心を取り戻した今、きっと俺が怖いんだろう。

「は、はい。腰痛いけど大丈夫です」
「お前さ、なんで発情期なのに学校来たんだよ」
「大丈夫かなって、思って……試験終わるまでは大丈夫だったので」
「抑制剤は?」
「飲みましたが、なぜか昨日は無理でした。そしてなぜか分かりませんが、今は落ち着いています」

 口調が真面目くんらしい敬語だ。もしかして昨日のこと覚えてないとか? いきなり俺が隣で寝てたら、そりゃあビビるわ。

「そうか。お前のこと抱いた。何度も」
「はい」
「怒ってるか?」
「全然。ありがとうございます。放置されていたら、最悪輪姦とか、チョーカー外されてうなじ噛まれるとかあったかもしれませんし、桐崎くん優しいですね」
「は? 俺は優しくねーよ」
「危ねえから送ってく」
「ありがとうございます」

 喧嘩ばかりしてるような俺と、真面目くんの間に共通の話題なんか無い。幸い下着類は夜の間に乾いていて、ノーパンで帰らすことにはならなかった。

「じゃあな」
「はい。ありがとうございました」

 真面目くんの家はそんなに遠くなくて助かった。これが電車やバスを乗り継いで行くような距離だったら、移動中にフェロモン撒き散らして外で……なんてことになったり、俺以外のαが引き寄せられたりした可能性もある。
 どうせ数日は休みだし、慌てて帰すこともなかったのか? いや、クラスメイトとはいえ、ほとんど話したこともないような奴の家にずっといる方が気を使うか。しかも相手は俺だしな。
 何はともあれ、無事に帰すことができてよかった。

 
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