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エピローグ
しおりを挟む窓から明るい光が差し込んで、僕は目を覚ました。あれ? 夢? 僕はベッドに一人で寝ていた。でもベッドの下を見ると、ロッソが床で寝ていた。お尻も違和感が……
夢じゃなかったんだ。
「ロッソ、おはよう。好きだよ」
そう言うと、ロッソはガバッと起きた。
起こさないように小さい声で言ったつもりだったけど、起こしちゃった。
「おはよう。ニコラ、好きだ。ずっと出会った頃から好きだったが、もっと好きになった。きっとこれからももっと好きになる」
「うん。ありがとう。ベッドで一緒に寝よ?」
「いいのか?」
「うん。一人は寂しい」
ロッソは遠慮がちにベッドの端に寝そべるから、「落ちちゃうからもっとこっち」って誘導して、僕は分厚いロッソの胸に埋もれた。
「会いたかった。王都まで行ったの。ロッソが王都に行ったって聞いたから」
「そうだったのか。心配していたんだ。家を訪ねても返事がなくて」
「なんでここにいるの?」
「どうしてもニコラに会いたくて、上官に『武功をたてて陛下にでも願い出ればいいんじゃないか?』と言われたから、武功をたてて戦争を終わらせて、陛下に兵器を辞めたいと願い出た」
え? それってとんでもないことだよね?
たぶん上官はできるわけないと思って馬鹿にしたんだと思うよ。
それでもロッソは成し遂げてしまった。
王都の酒場で聞いた話はあながち嘘でもなかったみたいだ。
兵器をやめるって大丈夫なのかな? この国で一番活躍した強い人が戦力から外れるってことだよね?
「大丈夫なの? ロッソってすごく強いんでしょ?」
「俺はずっとニコラの側にいたい。それより大事なことなど何もない。ニコラ、好きだ」
とは言ったものの、ロッソは兵器であることは辞められても、軍部の籍は抜けられなかったらしい。
戦争には行かなくていいけど、王族が外に出る時の護衛や、兵士への指導は続けることになっているのだとか。
それでこの街に戻ってきたのは、僕を伴侶として王都に連れて行きたいからだった。
「ニコラ、どうか俺についてきてほしい。家はある。金は俺が稼ぐから、ニコラは働かなくていいし、スープは作ってくれるとありがたいが……」
スープ? ロッソは僕の大したことないスープを所望らしい。
仕事もちょうど無くなったところだし、僕はロッソについていくことにした。
「足は痛くないか? 俺が背負って行こうか?」
「そんなことしなくてもいいよ。ちゃんと自分の足で歩けるから」
僕が断ると、少ししょんぼりする。
だからたまに背負われてあげると、嬉しそうに僕を背中に乗せたまま走ったりする。
「ロッソの家ってこれ?」
「そうだ。陛下がくれた」
王様からもらった家、僕も住んでいいの?
僕が戸惑っていると、ロッソは僕の手を引いて大きなお屋敷の中に入っていった。
「俺の好きな人は世界一美味しいスープを作ると言ったら、鍋なども色々用意してくれた」
僕は世界一美味しいスープなんて作れないよ。
それ、まさか王様に言ったの? 恥ずかしすぎるんだけど。
「野菜とかお肉がないと作れないよ?」
「そうか。じゃあ買いに行こう」
ロッソに手を引かれて買い物をして、大きな家に戻って、広いキッチンを見ると、最新の魔道具がたくさん置いてあった。これ、僕では使いこなせないかも。小さい鍋を近いうちに買いに行こう。
それでも、何とかいつも通りの大したことないスープ作って食卓に運ぶと、ロッソは美味しい美味しいといって食べてくれた。
ロッソは変わらないな。僕が作った大したことないスープをこんなに褒めてくれるのはロッソしかいない。
僕を抱くときは、やっぱり恥ずかしいことばかり言わされるけど、毎日ロッソは僕が作ったスープを飲んでくれて、毎日好きだと言ってくれる。僕も毎日好きだと伝えられる。
そんな日々が幸せです。
(終)
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感想をいただきありがとうございます🥰
何も欲しがったことのない二人が、唯一求めたのは好きな人との時間⏳
「世界一美味しいスープを作る」なんて言ったので、王様がお忍びで遊びにきたりする未来もあるかもしれませんね😊
愛があふれててめちゃくちゃいいお話でした…!
感想ありがとうございます🥰
いいお話と言ってもらえて嬉しいです🤍