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2人の絆

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「ジョル、私は・・・抵抗する私を無理矢理押さえつけてまで記憶を奪ったあの国が憎い。」
「記憶操作など禁忌だよな?俺もはっきり思い出した。数人で押さえつけて手足を縛っただけでなく、視界も塞いで耳も塞がれた状態で無理矢理魔法をかけられた。」

「それと私の国では、寮の私の部屋や、実家の私の部屋から、ジョルとの思い出が詰まっている物が全て処分されていた。
幼い時に交換した絵も、押し花の栞も、一緒に買ったマグカップや、互いに贈り合ったペンも、お揃いのタイピンも全て・・・
奴らは、私たちから未来や記憶を奪うだけでなく、私たちの思い出まで奪ったんだ。」
「そうか、それだ。寮の部屋も、実家の部屋も、自分の部屋だと言われても見慣れたものは何一つ無くて、他人の部屋のようだった。俺の国でも、俺たちの思い出は処分されていた。
記憶は無くても、それを国王がやったことを俺は分かっていたんだと思う。卒業後に帰国して王に謁見する時に、王の顔が歪んで下衆野郎に見えて吐きそうになった。
俺も許せない。」

「私たちは全てを奪われなければいけないことなど何もしていないはずだ。」
「あぁそうだ。両国の橋渡しのためと勝手に婚約者にされ、国の都合で禁忌まで使って引き離された。いいように利用され、一方的に奪われた。許せることではない。」
「時間がかかっても私たちは正義と愛を貫こう。」
「勿論だ!」





国によって愛する2人が引き裂かれ、しかし真実の愛に導かれ、正義の元で2人は結ばれる。
この物語は民衆に人気が出るに違いない。
全て事実を公開し、名前もジョルとディオで国名もそのまま使い、吟遊詩人や劇団に脚本を売った。

それを広めるためにジョルジーノとクラウディオは各地を回り真実の物語を語った。
各地を回りながら冒険者を続けていると、人気も実力も兼ね備えたAランク冒険者として、バックには治外法権の冒険者ギルドも付いた。

この作品は各地でヒットしていったから、2人は上手くいくことを確信していた。
まだこれは序章に過ぎない。
各所から話を聞きたいと新聞社なんかが訪れると、包み隠さず真実を話した。


禁忌を使ったことは、各国でも問題視され、この世界でもっとも権威があると言われる聖王国では調査隊も組まれたらしい。
2人は聖王国に呼ばれると、教皇にも会うことになった。


「其方たちの話は興味深い。調査を進めると禁忌が使われたことは真実のようだ。
其方たちの中にまだ記憶操作の魔法の残骸があるかもしれない。残っていては不安だろう?調べさせてくれないか?」
「分かりました。ジョル、いいよね?」
「あぁ、勿論。」

「協力感謝する。」

調査に協力すると、どのような魔法が使われたのかが分かった。残骸も確かにあり、それは全て取り除いてもらった。


「禁忌を使ったんだ。教皇様が正式発表を行えば、あとは周りの国や民衆によって勝手にあの国は潰れてくれる。」
「国まで潰れるかは分からないけど、両国の王はただでは済まないだろうね。」
「ディオは国が潰れてもいいのか?」
「ふふふ、今更そんなこと聞く?私はジョルとの思い出を全て処分されたことに怒ってるんだ。それには王だけじゃなく、家族や友人と思っていた者たちみんなが協力して私たちの思い出を奪ったんだ。私はあの国を許せないよ。」
「確かに。それはそうだな。まぁ俺としてはディオと一緒にいられるならどこでもいいし、俺たちから全てを奪った国は潰れてほしいと思う。関係ない一般市民は救われてほしいが。」


「ジョル、この剣に施した細工、覚えてる?」
「当たり前だろ?久々に見てみるか?」
「うん。」

ジョルジーノとクラウディオは剣を並べて置き、お互いの魔力を重ねて混ぜ合わせると、持ち手部分に流した。
すると浮かび上がるのは互いの名前。

「ディオ、お前のことは必ず俺が守るからな。」
「うん。私はずっとジョルを支えていく。」
「ディオ、好きだよ。大好きだよ。愛してるよ。」
「私もジョルが好き。大好き。ずっとジョルだけ愛してる。」




(終)
 
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