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新しい関係(ディオ視点)3
しおりを挟むミノタウロスはそれほど時間がかからず倒せた。
「ジョルお疲れ様、はいこれ水。」
「おう、助かる。ありがとう。ディオもお疲れ様。」
ジョルにコップに入った水を渡し、2人で大きな木に背中を預けた。
「ディオ、やっぱり俺たち昔会ったことがあると思う。一緒に戦ったこともあると思う。」
「そうかもしれないね。」
今は、それ以上は何も言えない。
久々にジョルと一緒に戦えて、私は幸せで胸がいっぱいだった。
「できればこれからも一緒に冒険者活動をしたいと、俺は思っているんだが・・・。」
「いいよ。」
「いいのか?」
「うん。」
こちらは最初からそのつもりだ。断る理由などどこにもない。
「じゃあ、これからもよろしく。」
「こちらこそ、よろしく。」
私はジョルが握手のために差し出した手を握った。
この手、好きだな。前より手のひらは硬く厚くなった。でもジョルの手だ。
離したくない。握手なのにずっと握っているなど変だが、この手を離したくないと思った。
すると、ジョルにその握った手を強く引っ張られ、私は突然のことに体勢を崩してジョルの胸に倒れ込んだ。
握った手は離れてしまったが、その代わりにジョルの逞しい腕で抱きしめられた。
「え?」
「ごめんディオ、少しだけ。」
記憶が、戻った?わけではないか。
私は戸惑いながらも、そんなジョルを受け入れ、背中に腕を回した。
記憶があってもなくてもジョルはジョルで、私が愛して止まない人だから。抱きしめられて拒否などするはずがない。
背中に手を回すと、自分から抱きしめたくせにジョルはビクッと驚いて体を揺らし、私を抱きしめる腕に更に力を込めた。
ジョル、大好き。愛してるよ。私は心の中で何度も何度も繰り返した。
いつかちゃんと言葉にして伝えたい。
しばらくするとジョルは力を抜いて私から離れた。
「ごめん。嫌だったら突き飛ばしてくれていいのに。」
「嫌じゃない。」
「そうか。」
ジョルは少し困った顔をして、ミノタウロスを担いで歩き出した。
私もそれに続いて歩き出す。
帰り道、2人の間に会話は無かった。
ミノタウロスが重くてそれどころではないという理由もあったが、何だか気まずい雰囲気が私たちをそうさせた。
「ディオ、宿はどうするんだ?」
「あぁ、そうか。宿をとっていなかったな。ジョルと同じ宿に空きはあるかな?」
「聞いてみるか?」
「そうする。」
宿に空きはあった。隣同士の部屋ではなかったが、2つ部屋を挟んだ先が空いていた。
今のジョルは遊び人だから、誰かを部屋に連れ込んだりするんだろうか?
ジョルが他の誰かを抱いている時の音など聞きたくはない。隣の部屋でなくてよかった。
ジョルは記憶が無いのだから。私も記憶が無い時は同じことをしていたんだし責めることなどできない。もし誰かを連れ込んでも、それは仕方ないこと。そう自分に言い聞かせた。
しかしその日、ジョルが部屋に誰かを連れ込んでいる様子は無かった。
まぁそうだよな。連日連れ込むわけではないか。
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