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側妃のこと
しおりを挟む僕は体力が足りないから休めと言われるのだと思って、翌日からは早朝に近衛騎士の訓練施設まで出向いて早朝訓練に混ぜてもらうことにした。
「シオン様、あまり無理をされませんよう。」
「大丈夫。体力を付けたいんだ。」
「分かりました。怪我をしないよう基礎トレーニングをしましょう。」
「うん。」
トレーニングが終わると、最近やっと使えるようになった清浄魔法を自分にかけてから近衛騎士と一緒に陛下の部屋に戻る。
その時に後宮の横を通ると、側妃の1人に出会った。僕は特に紹介してもらったこともないし、後宮に僕の部屋はあるけど後宮で過ごしたことがない。それでも後宮に豪華な服を着ている人がいれば、それは側妃なのだと分かる。
なぜ正妃ではなく側妃だと思うのかというと、陛下はまだ正妃を定めていないから。後宮にいる妃たちは全て側妃だ。
「あらあら、シオン様でしたかしら?どこかの国の王子とか。」
「えぇ。」
「独り占めしていないでこちらにも陛下を貸してくださらない?
最近陛下の訪問が無くて不満の声が上がっているのよ。」
「そうなんだ。そうだね、僕では陛下の世継ぎを産めないからね。陛下に言っておくよ。じゃあね。」
あぁ、自分で言って凹む。
僕はどう頑張っても陛下の子を孕めないんだ。
それでも愛してほしいと願ってしまう。
彼女たちも、きっと愛してほしいんだろう。
独り占めか・・・。
僕は小さい頃、後宮で暮らしていたし、王や皇帝ともなれば何人もの妃を抱える。
陛下の子は何人いてもいい。他国との関係維持にも使えるし、国内の貴族に降嫁させて地盤を固めるということもできる。
子を作らないのは大変な問題だな。
これは陛下へ伝えなくては。
「陛下、先ほど後宮の側妃に会いました。
最近陛下が後宮へ訪れていないとか。僕が独り占めしていることを咎められました。」
「そう。それで?」
「僕は男なので陛下の子を産むことができません。側妃たちとの間にどうか子を儲けてください。」
「ふーん。シオンは余が他の者を抱いてもいいのか?」
「・・・はい。それが陛下のため、この国のためになることですから。僕は我慢できます。」
他の人を優しく抱きしめて、慈しむようにキスを・・・そう考えたらとても苦しいと思ったけど、僕の感情よりも陛下を大切にしたい。
「そのような泣きそうな顔をして・・・。シオンは愛いな。
余が愛を注ぐのはシオンだけだ。あんな奴らは放っておけばいのだ。子を産む以外何にも使えん。後宮で遊んでおるだけだ。その点シオンは余を助けてくれる。どちらが大切かなど考えるまでも無い。」
「しかし陛下、子は作らなければなりません。」
「ふむ。シオンが余を受け入れられるようになったら考える。」
「がんばります。」
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