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11.その気にさせたい (※)

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 僕がフィリップ様をその気にさせるなんて、本当にできるの?
 それから今日泊まる街に着くまでは、お互い無言だったんだけど、フィリップ様はずっと僕の手を握ってた。

 街に着いて宿に入ると、フィリップ様は街長のところに挨拶に行った。だから僕は暇になって、フィリップ様をその気にさせるにはどうしたらいいのかを、騎士のみんなに相談してみることにした。

「大将をその気にさせるには? エロい下着がいいんじゃないっすか?」
 エロい下着……僕が着ても似合わないと思う。
「上目遣いで迫るのはどうっすか?」
「僕が上目遣いしても、睨んでるようにしか見えないと思う」
「あー確かに」
「もう押し倒したらいいんじゃないか?」
 僕の力で押しても、フィリップ様はびくともしない気がするけど、不意をついたらいけるか?
「抱きついて『キスして』がいいんじゃないか?」
「それ、お前の願望じゃねえか」
 ははは
 なんか盛り上がってるけど、僕は結構真剣なんです。

「おい! 何やってる!」
 後ろを振り向くと、フィリップ様が怖い顔で、腕を組んで仁王立ちしてた。僕は怒ってそうなフィリップ様に謝ろうと口を開いたんだけど、言う前に「来い!」と腕を掴まれて引きずられるように部屋に連れて行かれた。

「警戒心を持てと言ったはずだ」
「はい。ちゃんと短剣を持ってます」
 今仕掛ける? エロい下着はない。上目遣いは却下。押し倒せる気がしない。じゃあもう抱きついて「キスして」しかない。失敗したらまた考えればいい。
 僕はフィリップ様にギュッと抱きついた。
「なんだ?」
 少し見上げて、「フィリップ様、キスして」と言ってみた。
 そしたらフィリップ様の喉がゴクリと音を立てて、フィリップ様の視線が熱を帯びた。熱を帯びたなんて優しい感じじゃなく、メラメラと燃え上がった。

 啄むようなキスを繰り返しながら、ベッドに傾れ込んで、何度も角度を変えながらどんどんキスが深くなっていく。
「ん……」
「やめてほしいなら今言え」
「やめないで。もっとしたい」
「まったく、お前は……」
 僕は目を閉じた。睨んでるって思われたら、フィリップ様は途中でやめてしまうかもしれないから。
 フィリップ様が触れる場所が熱くて、久しぶりの感覚にずっとドキドキしていた。

 フィリップ様はしつこいくらいに僕の後ろを慣らして、もうどこにも力が入らない。息をするだけで精一杯。
 フィリップ様が僕に触れてくれることが嬉しかった。
「おねがい……もう、きて……」
 見えない中で手を伸ばすと、フィリップ様は僕の手を取ってくれた。

「なんでまた目を閉じている?」
「途中でやめてほしくないから」
「やめないから俺を見ていろ」
 そっと目を開けると、フィリップ様と目が合った。焼かれそうに熱い視線。

「あっ、んんっ……」
 ジュプッとフィリップ様が入ってきて、僕は目を逸らさずに必死にフィリップ様にしがみついた。
「たくさんして……」
「おい、テオ煽るな。まだ馬車で何日も移動するんだぞ?」

 たくさん揺すられて、たくさんフィリップ様を感じた。体の奥から全部支配されてしまったみたいに、体がいうことを聞かない。でもそれが嫌じゃないって思ってる僕はおかしいのかもしれない。

 フィリップ様は「腰、痛いか?」と言って柔らかいクッションを買ってきてくれた。フィリップ様って強引だったり、尊大だけど、こうして優しいところもある。
 だからみんなが従いたいって思うのかもしれない。
 腰は痛かったけど、クッションがあるからそんなに辛くなかった。でも次からは、もう少し手加減してほしい。

 長い長い馬車の移動もやっと終わりを迎えて、王都の屋敷に入ると、石を積んで作られているからか、建物の中はひんやりしていた。
 王都の屋敷に住み込みで管理している使用人たちは、僕の姿を見ると「ひっ」と怯えたりしたのは、申し訳なかった。
 僕はいっそ仮面でもしていた方がいいのかもしれない。

 
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