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9.好き? ※

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 僕はとうとうフィリップと……
 恥ずかしい。窓から射す光で目は覚めたんだけど、昨夜のことを思うと、恥ずかしくてフィリップ様の顔が見れなかった。
 まだ全身が震えてるみたいにジンジンして、腹の奥も痺れてる感じ。
「テオ、俺から目を逸らすな」
「お、おはようございます」
 起きてたなんて知らなかった。
「結婚式にはお前の家族も呼ぶか?」
「え?」
 結婚式ってもしかして僕とフィリップ様の? まさかね。

「えってなんだ?」
「結婚式するの?」
「するだろ。したくないのか?」
「結婚、本当にするんだ……」
 思わず口からそんな呟きが漏れていて、しまったと思った。

「おい、俺が気に入らないのか? それとも俺のセックスが気に入らないのか? それ以外か? 理由を言え」
「気に入らなくなんか……あっ……や……」
 僕が言い終わらないうちに、フィリップ様は僕の陰茎を掴んだ。そして優しく扱いてる。
 朝だよ。そんなこと……
 ダメだって思ってるのに、もっと触って欲しくなる。昨日みたいに熱い手で触れて、熱い胸で抱きしめてほしいって願ってる僕がいる。僕はどうしてしまったんだろう?

「気に入ったんだな。それはよかった。テオ、早く俺を好きになれ。好きなところいっぱい攻めてやるから」
「やっ……」

 昨日フィリップ様を受け入れたばかりの僕のお尻は、最も容易くフィリップ様のその昂ったものを受け入れてしまった。
「嫌じゃないだろ? 気持ちいいだろ?」
「んん……はあ……」
「ここ好きだろ?」
「やっ……ふぃり……ああっ……」
 フィリップ様が僕の気持ちいいところばかり、グリグリ潰すように攻めるから、意識が飛びそうになる。
「気持ちいいか?」
「ん、きもち、いい」

 僕は朝からフィリップ様に散々啼かされて、声が枯れた。しかも、腰が痛くて立てなくなった。
「そんなに睨むな」
 今はちょっと睨んだ。フィリップ様はやりすぎだ。朝食は部屋に持ってきてくれたけど、腰が痛くて椅子までも行けなかったんだ。
 さすがに悪いと思ったのか、それから三日、フィリップ様は僕に手を出さなかった。


「ほら、今日はテオの好きなトマトのパスタだぞ」
「え? なんで知ってるんですか?」
 冷たいパスタなんだけど、僕はベルガー家にきて初めて食べた。甘酸っぱいトマトがたくさん乗っていて、少しハーブの香りもする。オイルもかかってるんだけど、他は何が入ってるのか分からない。このパスタは初めて食べた時、衝撃的だった。
 シェフに美味しかったって言いに行くくらい気に入ったんだ。なんでフィリップ様が知ってるんだろう?

「お前のことなら俺は結構知ってるんだぞ。他にもセロリが入ったスープも好きだろ? 食事の際にはワインの代わりに水を頼んでいたが、本当は果実水のが好きだろ? 菓子はクッキーよりゼリーが好きだ。どうだ? 合ってるだろ?」
「なんで?」

 不思議だった。トマトのパスタのことはシェフから聞いたのかもしれないけど、他は誰にも言ってない。
 母上や兄さんなら知ってるかもしれないけど、ベルガー家の人には誰にも言ってないのに。
「お前の顔を見ていれば分かる。睨んでないことも分かるぞ」
「僕の心を読めるんですか?」
「んなわけないだろ。読めるならお前がここに来た日に疑ったりしてない」
 そっか。確かにそうだ。


「テオ、抱きたい」
「はい。どうぞ」

 僕は男だから多少頑丈にはできているけど、だからってそんなに激しくされたら辛いんだ……
 フィリップ様は無茶苦茶に熱を僕にぶつけてくる。それがちょっと嬉しい気もするんだけど、僕はまだ慣れてないのに……
 朝起きると、また腰が砕けたみたいに起き上がれなくなっていた。

「そんなに怒るな。俺はテオのこと好きだぞ」
「え?」
「なあ、えって俺に失礼じゃないか?」
 だって、フィリップ様が僕のこと好きとか、そんなわけない。僕がフィリップ様の夫になるのは決まってるかもしれないけど、好きじゃなくても子は作れる。僕はベルガー家の後継を作るためにここに嫁いできたんだよね?

 自分が男で孕み腹だから必要とされていることは理解してる。愛なんてなくても、それなりに仲良くできればいいと思ってた。
 好きっていっても色々ある。好きか嫌いかの2択なら好きとか、好ましいとか、きっとそうだ。
 だったらなんでそんなことを言ったのかが分からない。

「テオは俺のこと好きか?」
「えっと、好き、です」
「はぁ、その好きではない。もっと俺を好きになれ」
 それは無茶な要求なのでは?

「子作りはちゃんとします」
「結婚は延期だ」
 フィリップ様が考えることはよく分からない。突然告げられた『結婚延期』という言葉に僕は戸惑ったけど、僕に言えることは何もなかった。
 それから僕たちの寝室は分けられた。
 嫌われたんだろうか? そう思ったのに、相変わらず寝る時以外、フィリップ様は僕を側に置いている。全然意味が分からないよ。

 
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