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「ふんっ!ラフィーお前の取り柄は顔しかない。我が家にΩが産まれるなど恥でしかないんだが、高く買ってくれる貴族を見つけてきてやったぞ。喜べお前は我が家に金で貢献できる。」
「はい。父上。ありがとうございます。」

 僕は一応貴族なんだ。僕の母様はウサギの獣人で、だから僕もウサギ。真っ白な耳も、小さな尻尾も普段は引っ込めてる。父上に見苦しいと怒られて、頑張って引っ込められるようにした。
 確か父上は狼だったかな?
 生まれた直後にΩであることが発覚してからずっと軟禁生活を送っているから、僕の世界はこの部屋の中だけで完結している。
 部屋の小さな窓から見える庭だけが僕の知ってる外の世界。

 父上は僕のことが嫌い。それなら放っておいてくれればいいのに、急に部屋に来て怒鳴り散らして去っていったりする。イライラした時は僕を罵倒して発散してるんだと思う。

 本を読むのは好き。外に出られなくても、色んな国に行けるし、物語の主人公になれば色んな人と出会えるから。その場所や人が実在するかどうかは関係ない。有っても無くても僕の世界とは別の世界の話だから。


 この世界には男女の性の他にα、β、Ω、という第二の性が存在している。
 αはΩが発情期に出すフェロモンに引き寄せられる。Ωは男女共に妊娠が可能で3ヶ月に一度ヒート(発情期)がきて、αを誘引するフェロモンを出し欲情した状態に陥る。
 ほとんどの人はβと呼ばれるαでもΩでもない普通の人らしい。
 発情期のΩの首筋をαが噛むことで番になって、番になったら番であるα以外をフェロモンで引き寄せることがなくなり、番以外受け付けなくなる。


 初めてヒートを起こしたのは14歳の誕生日、去年なんだけど、その時に教えてもらった。
 僕がヒートを起こしても、周りの使用人はなんともなかった。なんでかと思って聞いたら、僕の周りにいるのはみんなΩやβの使用人だった。
 間違って番になったりしないようにってことらしい。

 ずっと僕はこうしてこの部屋に閉じ込められて生きていくんだと思ってたのに、父上が僕を買ってくれる貴族を見つけてきたと言ったんだ。
 僕は外に出られるの?本で読んだ世界が広がっているのかもしれないと思うと、買われたと言われても楽しみでしかなかった。


 でも、僕がこの屋敷を出る少し前に聞いてしまったんだ。屋敷の周りを守ってる騎士の人たちが話しているのを。

「ラフィー様は可哀想だな。」
「可愛いんだろ?俺も金があったら欲しかったな。」
「買い手は隣国の豚殿下だろ?」
「マジかよ。あのΩをコレクションしている色欲魔のデブか。」
「連れてきたΩは随分酷い扱いをされるんじゃなかったか?」
「隣国の貴族なのに噂が流れてくるぐらいだ。相当酷いんだろうな。」

 そうなんだ・・・
 色欲魔ってのは分からないけど、太ったおじさんに意地悪されるのは嫌だな。
 せっかく外に出られると思ってワクワクしていたのに、気持ちは一気に落ちた。15年ここに閉じ込められて、お金と引き換えに意地悪されるところに行かされるなんて。僕の人生ってなんなんだろう?

 僕のヒートの間隔はまだ安定してなくて、1ヶ月の時もあれば3ヶ月経ってもこない時もある。
 隣国まで行く途中でヒートを起こしたらいけないからと、ヒートが収まった直後に出立することになった。例えヒートが起きたとしても軽く済むように抑制剤もちゃんと飲む。
 嫌だなって思っても断ることもできない。父上には従うしかできない。
 でも最後の日、父上は初めて僕と一緒に夕飯を食べてくれた。家族との思い出はそれだけだけど、少しだけ嬉しかったんだ。

 万が一途中で僕がヒートを起こしても、間違って番になったりしないようβの騎士に囲まれて移送されることになった。
 移動には1ヶ月近くかかるみたい。そんなに遠いところなんだ。
 途中、森の中のガタガタな道をゆっくり通ったり、大雨で足止めされたりしたから、国境を越えるまでに20日かかって、遠くまで行くのって大変なんだなって思った。


 国境を超えて3日。
 騎士の人に聞いたら、まだ10日くらいかかると言われた。自由に出歩いたりはできなかったけど、途中で知らない街に寄ったり、馬車から色んな景色を見ることができるのは楽しかった。

 ドクンッ

 あれ?抑制剤飲んでるはず。それにまだ前のヒートから1ヶ月経ってないのに。
 でもこの感覚はたぶんヒートだ。
 騎士の人にヒートがきたと伝える。いつも以上に息が乱れる。フェロモンが出てもβである騎士の人たちには分からないから、襲われたりしないけど、すごく苦しかった。

 ガタンッ

「轍に車輪が嵌って動けない!」
「進行方向から単騎の騎馬が向かってきているぞ。危ないからとにかく避けよう。」
「みんな馬を降りて馬車を押すぞ!」

「「「せーのっ!」」」

 僕も馬車から一旦降りて、ハァハァと息を荒げながら騎士たちが馬車を押すのを見ていた。

 すると、向かいから来た馬に乗った人が横を通り抜ける時に速度を落として、なぜか僕を掴んで馬の上に引きずり上げて僕を連れて走り去った。

「ラフィー様!!」
「大変だ!ラフィー様が攫われた!」

 騎士たちの声が遠くに聞こえる。
 一瞬のことで僕は理解できなかった。
 え?僕、攫われたの?


「降ろしてください。」
「無理だ。」
「僕は行くところがあります。」
「・・・」

 馬から落ちるのも怖いし、暴れたりすることもできなくて、男に抱えられたまましばらく馬は駆けていった。

 体が熱い、苦しい・・・
 馬は途中で道を逸れて森の中に入っていくと、男は僕を連れて馬を降りたから、男が木に馬を繋いでいる間に僕は走って逃げることにした。だって知らない人だし、人を攫うなんて怖い。
 生まれて初めて僕は森を走った。ヒートで苦しいから上手く走れなくて、足がもつれて転びそうになった。
 そして僕は男に捕まった。

「やだ、放して、、はぁはぁ、、」

 その人は僕の腕を掴んで地面に転がすと、僕の上着を引き裂いた。
 殺されるの?食べられるとか?

「俺のものだ。」
「ぁああ、、」

 男は首から鎖骨に唇を這わせて、僕の胸に顔を埋めて舐めてる。
 体の中からゾクゾクと気持ちいいような怖いような感覚が湧き上がってきて、僕は叫んでた。

 その男は夢中で僕の体にしゃぶりつくと、嫌だって思ってるのにどんどん気持ち良くなって、わけが分からなくなってくる。
 僕の下穿きまで全部引き裂かれると、足を開かれて、男は僕のお尻に指を入れた。

「やぁ、、あぁ、、」

 その時にようやく男の顔を見ると、鼻から上を覆う仮面をつけていて、顔は見えなかったけど、髪は綺麗な黒髪がサラサラと靡いていた。

 急に腕を引っ張って起こされると、四つん這いにさせられ、男のものがジュプッと僕の中に入ってきた。

「んふぅ、、ぁああ、、」

 激しく揺さぶられると体が熱くて、全身が気持ち良くて震えが止まらない。嫌だって思ってるのに、もっとしてほしくて、たくさん涙も出た。

 終わったと思った瞬間、僕は男に首筋を噛まれた。

「ぁあああ、、」

  
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