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セラータの叫び
しおりを挟む「うわあああああぁぁぁーーー!!!!、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嘘だ!オンブラ!オンブラ!起きろ!起きろ!起きてくれ!頼む!
俺はまだお前に愛していると言えていない!
お願いだ、起きてくれ!起きてくれ!!」
真っ青な顔のオンブラを抱きしめて俺は泣き叫んだ。
何度呼んでも、魔力が無くなるほどに何度もヒールをかけても、オンブラは目を覚まさなかった。
なぜこんなことに・・・。なぜだ!
死後硬直が始まった冷たいオンブラを掻き抱いて俺は声が枯れても構わず泣き叫んだ。
なぜ・・・。
産まれてからずっと、周りの皆は俺に優しかった。でも、どこか壁があって孤独だった。
オンブラはそんな小さな世界しか知らない俺を外に連れ出してくれた。なぜそんなことをしてくれたのか、気紛れなのか理由があるのかも分からなかったけど、いつも一緒にいてくれて、いつも俺を好きだと言ってくっ付いてくるのが可愛くて、もう世界にオンブラだけいればいいと思った。
あの時、俺は正気を失っていた。それがなぜなのかは分からない。それでも自分がオンブラを殺してしまったことに変わりはない。
窓の外には真っ青な空が広がっており、俺はオンブラを抱きしめたまま外へ出た。
「なんだこれは!!まさか、俺がやったのか?何でここにお前らがいる?」
外には食い散らかされたような姿の家臣たちが複数倒れていた。
気が狂いそうだった。いや、気が狂っていたのかもしれない。
「うわあああああぁぁぁぁーーーーー!!!」
俺は森全てが震えるほどの声で叫び、オンブラを抱いて泣いた。
何が起きたのか分からない。
分かっているのはオンブラと家臣が死んだということだけだ。たぶん俺が殺した。
カサッ
気が狂ったように叫び続けていると、オンブラのポケットから小さく折り畳まれた紙が落ちた。
なんだこの紙は。
俺はその紙を拾って広げてみた。
【吸血鬼討伐計画】と書かれたその紙には、俺を誑かして取り込み、吸血衝動を引き起こす薬と、名を呼んで血を吸う禁忌を使わせ吸血鬼を滅ぼすという計画が書かれていた。
は?これは全て計画だったということか?
俺を騙していたのか?しかし最後にオンブラは謝って愛していると言った。
それに彼は国に隷属させられていると言っていた。無理矢理参加させられたんじゃないか?
この国か。この国が俺からオンブラと家臣たちを奪ったのか!絶対に許さん!
俺はオンブラを抱いたまま上空に飛び上がると、帝級魔法を国全てが入る大きさに展開し、撃ち放った。
それは獄炎となって全てを焼いた。
髪の毛一本さえ残さん。
俺から大切なものを奪ったんだ。俺も全てを奪ってやる!!
炎が全てを焼き尽くし、灰も残さず更地になると、俺はゆっくりと地面に降りた。
虚しい。こんなことをしてもその一瞬しか気が晴れない。オンブラは帰ってこないんだ。
オンブラがいない世界でどうやって生きていけばいい?
俺は家臣も愛する者もこの手で殺した。そんな俺がこの先どうやって生きていくことができるというのか・・・。
オンブラの首輪に手をやると、それは主人を失ったからかするりと解け、そして銀のナイフに変わった。触れているだけで肌が焼けていく銀は吸血鬼である俺の唯一の弱点だ。
オンブラ、今そちらに行くからな。1人になどしないからな。
お前たち、俺もすぐにそちらに行くからな。
俺は銀のナイフを自らの胸に深く突き刺した。
「オンブラ、愛している・・・。」
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