【短編】吸血鬼討伐作戦

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ふぅ。そろそろ計画を進めるか。
これ以上セラータに情が移る前に。

吸血鬼のあの国ではセラータが消えて大変な騒ぎになっているだろう。血眼になって探しているかもしれない。
ちょうどいい頃合いだ。


ここにいることを知らせれば、平和ボケしたような国で過ごしている彼らはすぐにここに来るだろう。
しかも楽しそうなセラータの文などを添えてやれば、何の警戒もなくやってくるだろう。

私の計画は完璧だ。どこにも綻びなどない。



さあ、総仕上げの時間が来た。
のこのこと罠にハマりにきた吸血鬼のターゲットは10名。
街中では実行できないため、街から離れた星が綺麗に見える別荘なんかを団長にゴリ押しして国の金で借りてもらった。

私が作った、我を忘れて吸血衝動を引き起こす薬を仕込んだ死刑囚を、着飾ってセラータの前に連れて行く。一応死刑囚の中では見目麗しい者を選んだ。
もちろん喉は潰して声は出ないようにしてあるし、感情も奪ってある。

「セラータ、こいつはセラータへのプレゼントだ。」
「何だこいつは。」
「死刑囚だ。セラータはたまに血を吸うと言っていたから、たまには吸いたくなるのかと思って特別に用意したんだ。」
「そうなのか~、人の血なんて久々だな~」
「喜んでもらえると嬉しいよ。手に入れるのは苦労したんだ。」
「俺のために用意してくれたのか?オンブラ、ありがとう。」

満面の笑みでありがとうと言うセラータに、胸が少し痛んだが、少しだけだ。大丈夫。計画通り上手くいく。


日が暮れると、もうそろそろターゲットたちも到着する頃だ。索敵で見ているからもうすぐなのだと私はカウンドダウンを始めた。ショータイムの始まりだ。

セラータが死刑囚の首に噛み付く姿を眺める。上手くいきすぎて笑いが漏れないよう、必死に奥歯を噛み締めた。

私はゆっくり退室し、じっくり観察するために真夜中の上空に気配を消して位置取った。
ここからだとよく見える。
ターゲットたちが到着すると、目を爛々とさせたセラータが外に出てくるのが見えた。


セラータに、久々に会ったのだから名を呼んでやるよう声を風に乗せて飛ばした。
正気を失っているし、私の言葉を素直に信じるセラータに悪魔の囁きは効果覿面だった。 

セラータが狂ったようにターゲットの首に噛み付く。叫んでいるのはきっと相手の名前なんだろう。
吸血鬼たちがバタバタと倒れていく姿をジッと眺めた。
最後の1人がセラータの吸血によって倒れると、しばらく庭を彷徨いた後セラータは私の名を呼んだ。


「オンブラ~、どこにいるんだ?
さっきのピザをもう一枚食べたいんだが。
ビールも欲しい。」

もう薬の効果が切れたのか。
魔法薬だからな。吸血鬼のトップであるセラータにはそう長い時間効くはずがないとは思っていた。
効果が切れたなら、何も知らないふりをして過ごし、夜中に倒れた吸血鬼たちを処分すればいい。

私は地上に降りると、裏口から家の中に入り、ピザを焼いた。
ビールを用意してリビングへと持っていく。

「セラータ、ピザができましたよ。」
「分かった~、今行く~」

私たちは何事もなかったかのようにビールを飲みながらピザを頬張った。
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