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子供の姿
しおりを挟む私はセラータを連れて、徐々に国へ近づいていった。
討伐計画を遂行するために。
一度だけ国に宛てて手紙を飛ばした。
吸血鬼のトップを攫ったこと、懐柔は上手く進んでいること、能力が高いため敵対すれば国が滅びると脅し、手出し無用と念を押す内容だった。
懐柔したからといって、寝首を掻こうなどとアホな計画をすれば私の計画は一瞬で水の泡と消えるだろう。
人間が最大で撃った魔法でも、剣での渾身の一撃でも、彼を殺すことなどできないだろう。
手を出せば確実に死が待ち受けている。
「ここがオンブラが所属する国か。」
「えぇ。そうですよ。私はあの城の横にある魔法騎士団に所属しているんですよ。」
「ふーん。」
セラータには、興味を引く内容ではなかったようだ。
「何か美味いものを食おう。」
「そうですね。ピザなどどうですか?」
「いいね~、パンにトマトのソースとチーズが乗ったやつだったか?」
「そうですよ。セラータが好きだと言っていたやつです。」
「行くぞ。」
「はい。」
私は騎士団の寮へは帰らず王都にセラータと住むための家を借りた。
「ふむ。コンパクトな家も悪くない。」
「すいません。私の給料ではこれが精一杯です。」
「別にいいよ~、俺も小さくなればいいし。」
「え?」
おぅ、久々に子供のセラータだ。
なるほど。小さい家では小さい体の方が楽だというわけか。
夜にはまた大人の体に戻るんだろうか?
「オンブラ、抱っこして。」
「え?はい。」
「たまには俺が甘えるのもいいな。」
「そうですね。」
可愛い。私はセラータを抱きしめて無意識に髪を撫でていた。
「気持ちいい。オンブラに髪を撫でてもらうのは気持ちいいな。」
「そうですか?ではもっとしてあげます。」
「うん。もっとして。」
可愛いな。・・・いや、私が落とされてどうする。
私は計画を遂行しなければならない。こいつを使って吸血鬼を滅ぼさなければならない。それが私の使命なのだから。
と、ここにきてセラータが吸血行動をしているところを一度も見ていないことに気付いた。
まさか血を飲まないのか?
そうなると、ここまで順調にきた私の計画が終わってしまうのだが・・・。
「セラータ、吸血鬼は血を吸ったりしないのですか?」
「吸うな。たまにな。一回吸っちゃうとまた欲しくなっちゃうから。それに今の時代、血より美味しいものがたくさんあるし、ホントたまにかな~」
「そうか。」
「うん。」
たまにだが、血を吸うということが確認できただけでも収穫だ。
私は計画を進めることにした。
一度吸うとまた欲しくなるというのもこの計画の成功を後押ししてくれているようだ。
「オンブラ、キスして。」
「はい。」
子供の姿のセラータにキスをするのは少し緊張した。
しかし、キスをしてみるとそれは子供という感じではなくセラータの感触だった。
ふはっ、何だよセラータの感触って。感触を覚えてしまうほど私たちはキスをしていたのか。
しかし安心した。子どもの姿だがセラータはセラータなのだと分かって。
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