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デート
しおりを挟む「これでどう?」
「さすがですね。とても美しい。私はドキドキしてしまいます。」
「ふふ~ん。そう?美しいとはよく言われる。オンブラは俺を見てドキドキすんの?抱いてあげようか?」
「え?」
先ほどまで子供の姿だったから、そのような知識はないものだと思っていたが、年齢的には私より上なんだ、当然経験しているか。
これは一歩距離を縮めるいい機会なのでは?
「何?そういうことじゃないの?」
「いえ、そういうことですが、いいのですか?」
「いいよ~ だってオンブラ可愛いし。この握ってる手も可愛い。」
そう言うと、彼は上空で私を抱きしめて、そして触れるだけの口付けをした。
思った以上に慣れているらしい。
私はその流れるような美しい動作に本当にドキドキしてしまった。
これではミイラ取りがミイラになるではないか。
上空の空気で冷たくなっていた繋いでいない方の手を頬に当てて熱を冷ました。いや、私が彼に惚れて追いかけるという路線でいくのもありかもしれない。
「やっぱりオンブラは可愛いな。キスくらいでそんなに赤くなって。」
「キスなど、したのは久しぶりでしたので。」
「そうか。また気が向いたらしてやろう。」
「はい。」
これは本当のことなのだが、彼は私の言葉に気をよくしたらしく、鼻歌など歌いながら上空を飛んでいく。
「あの街に降りてみませんか?」
「なぜだ?」
「あの街には美味しい料理があるのでセラータ様に食べていただこうかと。酒も。」
「いいね~ すぐに行こう。」
「はい。」
私が作るわけではないが、彼の心をこちらに向けさせるためには胃袋を掴むのも必要なことだ。
確かあの街はオリーブが有名な街だ。オイルが豊富にあるから揚げ物が色々あった気がする。きっとセラータに喜んでもらえるだろう。
揚げ物といえばビールだな。ビールも初めてだろうからあの発砲した感じに驚くかもしれない。
これはいいスタートが切れそうだ。
セラータは街に降りると、これは何だ、あれは何だと様々なものに興味を示し、説明してやると『なるほど』と言って楽しそうに歩みを進めた。
「オンブラ、あれは何だ?なぜ人が柵の中にいるのだ?子供もいるが罪人なのか?」
「いえ、あれは奴隷ですね。」
「奴隷?」
「えぇ、隷属の契約をされているので、勝手に外に出たりはできませんし、主人の思うままに生きなければなりません。」
「人権がないということか。酷いむごいな。」
「えぇ、酷いむごいことです。」
奴隷のことを聞いた時は少し難しい顔をしていたが、だからといって何か行動に移すということはしないようだった。
暴れられても困るから助かる。
「何だこれは!凄いぞ。口の中も喉を通る時もシュワーっとする!」
「それはビールという酒です。」
「これが酒か。これいいね~。飲むだけで楽しい。」
「もう少し強いものを飲むと酔いも体験できますよ。」
「よし、それも飲む。」
「はい。こちらも召し上がってみて下さい。美味しいですよ。」
「ふむ。」
サクサクと音を立てながら各種フライを平らげていくセラータ。
口に合ったようでよかった。
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