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誘拐
しおりを挟む公園に近づくと、10歳に満たないくらいに見える少年が1人で遊んでいた。
その容姿は美しく整った顔に、ネイビーの髪はサラサラと胸の辺りまで伸ばされ、ルビーのような真っ赤な目に、色が白く透き通るような肌色をしていた。
私は相手は敵だというのに、子供だというのに、しばし彼に見惚れていた。
「何?俺に何か用?」
「はっ」
私に気付いた彼に声をかけられてやっと我にかえることができた。
ん~どうするかな。警戒される前に攫うか。
「あなたはセラータ様ですか?」
「そうだけど、あんたは?」
「私はオンブラです。」
「ふーん、それでオンブラは俺に何の用?」
「退屈そうに見えたので、セラータ様を攫ってみようかなどと思っておりました。」
「え?何それ、楽しそうじゃん。オンブラ俺のこと攫ってよ。」
「いいんですか?」
「いいよ~ オンブラが言う通り、ずっとここ20年くらい退屈してたんだよね。
平和すぎるってのも退屈だよね。」
「じゃあ行きましょうか。」
「うん。」
これは賭けだったが、セラータは私の誘いに簡単にノってきた。
こんなに簡単でいいのか?
私より年上のこの者を懐柔しなければならないのだから、大変なのはこれからかもしれない。
そう思いながら飛翔魔法と認識阻害魔法を使って、彼の手を取って飛び立った。
「オンブラ飛べるんだね。あの国の者じゃないんだね。だってあの国で飛べるのは俺と鳥の獣人とか鳥系の魔物だけだもん。」
「えぇ。私は他国から来たんですよ。」
「いいね~ 俺、国の外に出るの初めて。絶対楽しいじゃん。
あの国は確かに平和だけど、それだけじゃつまんないよね~」
「そうですね。これからは私が色々教えて差し上げますよ。あの国の外のことも、それ以外も。」
「いいね~ オンブラ最高じゃん。」
「ありがとうございます。」
きっとセラータは平和な国でぬくぬくと育って、幼い頃から大切に大切に敬われてきたんだろう。
私のことを疑わないし、丁寧な言葉で接しても何の疑問も持たず当然のように受け入れていることから、そのように推測した。
「セラータ様は80歳くらいだと聞いていますが、間違いありませんか?」
「そうだね。たぶん82だと思う。数えるの面倒だから俺は数えてないけど家臣とかが言ってた気がする。」
「それなら人間の国では成人しているので大人ですね。ただし、見た目は子供に見えるから酒は提供してもらえないかもしれませんね。」
「サケ?それはなんだ?」
「飲み物です。たくさん飲むと酔いが回って気持ちよくなるんですよ。成人前の子供には提供されません。」
「ふーん、じゃあ大人の姿になればいいってこと?」
「できますか?」
「できるよ。身軽だからこの姿でいるだけで、大人の姿の方が都合が良ければそっちになる時もある。」
さすが魔法に長けている種族なだけあるな。私も魔法が得意だが、見た目年齢の操作はできない。
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