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10.初めてのパートナー(ミツル視点)
しおりを挟む僕に人生初めてのパートナーができた。
小さい頃は覚えてないけど家に帰ればいつも母親と彼氏がいて、僕の居場所はなかった。母親の彼氏はたまに変わる。
でも相手が変わっても変わらないのは、いつも母親が殴られているということだ。
ガシャーン!
「おら! Stand Up!」
「Good girlいい子だ」
こんな環境では勉強なんてできなくて、僕は高校に進学したけど勉強に付いていけず、家にもあまり帰れず退学してしまった。
その後はいくつかバイトをして、自分のスマホ代と食費くらいは稼いでなんとか生活していた。
でもバイト先でふざけてCommandを使ったDomの先輩がいて、それに従ってしまった僕は先輩のサンドバッグになった。
「ミツルは殴られるのが好きなんだろ?」
それはDomのCommandを使っての支配というよりは、憂さ晴らしの暴力行為だった。
Stayとか、Stand Upとか、Comeとか、そんなCommandは使われたけど、Careはされなかった。
どんどん体調が悪くなって、とうとう倒れた。
暴力行為とダイナミクスの欲求不足だった。CareされずにCommandを使い続けられたことで、もう少しでSub dropで死ぬところだった。
そのままバイトは辞めて、バイト先から事情を聞かれて見舞金が少し支払われた。
その見舞金を握りしめて向かったのはDom/Sub専門の風俗店。本番ありのところは怖くて行けなかったから本番無しのところに行った。病院では軽いCareは行われたけど、欲求を完全に解消できるほどじゃなくて、Sub dropを解消する程度のものだったから。
風俗店のDomは優しかった。Comeとか、Kneelとか、初めてだからそんな軽いCommandだけで、Careもちゃんとしてくれたから少し楽になった。
いつも母親とその彼氏の暴力からのCareを見ていたから、何か違うと思った。満たされたという感じはなかった。
それで店を出る時に、店の人が僕に声をかけてきた。
「キミ、もしよければうちで働いてみない?」
僕が痣だらけで傷だらけだからハードプレイができると思ったらしい。
合わなければ辞めてもいいと言われて、出勤も好きな時だけでいいと言われたから僕は了承した。
何か欲しいものがあるわけじゃない。家は一応ある。スマホ代とご飯と着るもの、漫画とかちょっとの娯楽に使える金があればいい。
そう思って最初は週に一回とかそれくらいしか出勤しなかった。
お客さんは僕を殴ったり蹴ったりして、でもちゃんとCareしてくれて、「満たされたよ、ありがとう」と言ってくれる人が多かった。
パートナーはいるけどパートナーとはハードプレイをできない人や、パートナーが見つからず風俗に来る人もいた。
Careされても殴られるのは痛い。僕はやっぱりサンドバッグみたいだと思って虚しかった。愛のない暴力では満たされないと思った。きっと愛があれば痛くても満たされる。だって母さんはいつも泣きながらも幸せって言っていたから。
パートナーか……
「ミツルくんはDomSubバーとか行かないの?」
「そんなのあるんですか?」
「あるよ。風俗はダイナミクスは満たされても、気持ちまでは満たされないからね。パートナーとか恋人がいると精神的にも違うと思うよ」
このお客さんは常連さんで、僕をいつも指名してくれる。結婚しているんだけど、奥さんがNormalだから本番無しの風俗にたまに通って欲求を満たしている。抑制剤では完全には抑え込めないらしい。
恋人なんて僕にできるんだろうか? パートナーって風俗の客と何が違うんだろう?
別に期待なんてしてないけど少しだけ興味が湧いた。
でも出会ってしまったんだ。タキさんに。
この人なら僕に愛のある暴力を振るってくれるって、それは直感だった。ダメなら逃げればいい。僕も愛されてみたかった。
平手をされた時、客とは何かが違った。そしてCareされたらもうダメだった。
これが母さんが暴力彼氏から抜け出せない理由なんだとはっきり分かった。気持ち良すぎたんだ。
そして風俗店の接客が苦しくなった。タキさんを知ってしまったから。好きな人に支配される幸せを知ってしまったから。
「残念だけど仕方ないね。いつでも戻ってきていいよ」
店長はそう言って僕を送り出してくれた。
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