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第14話 黄昏時の小休止ですよ!?

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「お疲れ様ぁ~!  かーんぱーいっ!!」

 クロ、藍、倫也は倫也の寮の部屋で無事に帰還した後の反省会をする事にしたのだがどう考えても飲み会になっていた。

「乾杯はいいけど、俺高一で未成年なんですけどね?」

 倫也はグラスに注がれた神酒を見ながらボソッと一言いった。

「え?  関係ないよぉ。だって倫也は死んでるじゃん!  まぁ、死んだ瞬間に強引に神格化してるけどねぇ」

 倫也は口に運んだ神酒をクロに全部吐き出した。

「え?  俺は神族なの!?」

 倫也は少し嬉しそうだ。死神代行と言われていたもののまさか神だったとは……倫也は感慨にふける。

「まさか!   確かに力はすこーしだけ神徒の範囲を超えてるけど信徒だよぉ。人間が神になるには神徒として任務をこなして500年はかかるよぉ」

 クロはさも当たり前のように答える。500年……倫也はおじいちゃんを通り越してミイラになってしまうと苦笑いした。

「それは置いといて、倫也。あの神通力は召喚だよな?  複数の武器を同時召喚させて操れるのか?  それだけでも並の神徒じゃ出来ないことなんだがな」

 藍はひどく感心している。倫也の力がそれほどまでとは全く察しがつかなかった様子だ。

「あぁ。あれはスサノオ様とオロチ、カグツチとの訓練で同時攻撃をどう対処するかって時に思いつきで剣を3本召喚して攻撃を受け流したんだけどその後から本格的な多数同時召喚と同じ操作の訓練をやったんだ」

 スサノオ、オロチ、カグツチの同時攻撃を受け流す。倫也にとってはそのメンツでしか訓練していない為当たり前のように言っているがそれだけのメンツの攻撃を受けるだけでも普通はできない事なのである。

「スゥさんも大したことないねぇ!  俺なら倫也程度か・た・て!  ですよぉ~!?」

 クロの癖に顔は真っ赤だ。神酒はアルコール度数がかなり高いようで既に酔っている。隊服である軍服を脱ぎ捨て上半身裸になっている。

「……。藍。クロって次の日記憶ある方?」

「さぁ?  飲んだことないな。倫也。気持ちは分かるけど隊長だからな?」

 藍は倫也に一応はと付け加え注意をするが藍自身も日頃のだらしないクロにイタズラを使用とウズウズしている。

 名ばかりの反省会はクロのダウンにより早々に終わったが倫也と藍のイタズラはつぎのひまでおをひくのであった。

 ――翌日


「~~~~~~っ!!!!!?」

 イザナミが執務室の机に突っ伏して悶絶している。理由は倫也と藍のイタズラのせいだ。顔にいたずら書きは当たり前にしてあり、なおかつリング状ののピアスにはイカリングが付けてある。他にも制服の代わりに黒いビニール袋に胸には2つの穴が開けてありそこからクロの乳頭が覗いている。

 朝、倫也と藍は寝ているクロを放置して出てきたため大慌てでそのままの格好でクロは登庁したのだ。

「……おい。嘘だろいくら急いでても気付くよな?」

 倫也は青ざめた顔をしながら藍を見る。藍は動かない。微動だにせず表情を崩すことなく立っている。あまりの衝撃に藍の意識は他界した様だ。藍の逃亡に気付き愕然とする。俺はもう、助からないだろう……いっそ、輪廻して人間に転生しよう。倫也は記憶を消す術を探り始めた。

「く、クロ!?   ここを……ヒィ!ヒィ!ど、どこだと……おも、おもって……ヒィ……ぷっ!いるの!?」

 イザナミ様、ご乱心の様子。クロはいつも通りヘラヘラ笑っている。

「服は少し変ですけどアーティスティックじゃないですかぁ?どうですぅ?」

 クロはモデルのようにポージングする。お願い!もうやめて!!   倫也は心の中でもがく。

 未だ悶絶しながら笑うイザナミ、どう考えても変態のクロ、他界した藍、自己放棄を試みる倫也と執務室はまさに混沌と化していた。そんな時勢いよく扉が開き怒号が響く。

「騒がしいぞ!  この緊急時に緊張感の欠けらも無いのか!?  イザナミ!  お主がそんなことではアマテラスも部屋から出れぬではないか!!  状況を考えよ!!」

 威厳に満ち溢れた声の主は静かに行かれる正に神。と言った男性だ。扉を閉め、部屋の中央まで男性は進むと足を止め、クロを睨みつける。

「こんなところで何をしている?」

 クロは少し視線を落とし暗い表情を一瞬するがいつも調子で答える。

「え?  ここでですかぁ?  イザナミ様に楽しんで頂こうかなぁとぉ~」

「そうじゃない。死神隊の隊長をしている場合かと聞いているのだ。……まぁいい。お前のおかげで今の黄泉国があるのもりかいはしている。」

 まただ。この前の禍津御霊の連中もそうだが、クロには何がうと言うのだろうか。

「申し訳ありません!  私ともあろうものが部下にこのような事までさせてしまうほど落ち込んでいたようです」

 イザナミがフォローを入れる。しかし、笑いが止まらないようでプルプルしている。

「黄泉国の主神であろう?  自覚……はあるのだろうがいささかイザナミは真面目すぎるな。悩まずこいつらをもっと頼れ。聞けばクロ以外は優秀だと」

「え?  俺は落ちこぼれですぅ?」

 クロはめげなかった。努力も虚しく全スルーで話は進む。

「倫也、藍。二人はこの方と初めてよね?  あなた達から自己紹介なさい?」

 優しく微笑み、男性への自己紹介を促す。

「自分は死神隊第三隊所属、神守  藍です」

 いつの間にあちらから戻ったのか、藍は健在であった。

「同じく、第三隊所属、都筑  倫也です」

 イザナミは聞き終えると立ち上がり男性の横に並び立つ。

「二人とも、この方は日の本最初の神、『造化の三柱』の一人で高御産巣日(タカミムスビ)様です。今もアマテラスなど私たち黄泉国や天津国の最高指導者として導いてくれています」

 日本最初の神。まさかそんな人にお目にかかるとは……倫也と藍は片膝をつき伏せる。

「固くなることはない。楽にしてくれ。部屋に入った途端あまりの事に取り乱したが、大丈夫だ」

 おおらかに笑うナイスミドルだ。

「それはそうと八十禍津日神からの報告を受けてな。禍津御霊についてだが少しわかっていることがあるので伝えに来た。だが話をする前にそこのふざけた奴は服装を整え顔を洗ってこい!!」

 クロは返事をせずに猛スピードで正装して来た。
 仕事中に今この時ほど真面目なクロを見たことがない。

 そして、全員が揃い、ソファに腰掛けた所で高御産巣日は話し始めた。

「先日、第三隊が遭遇した禍津御霊だが、穢れと言ったそうだが正確にはちがう。奴らも神だ。その一部に神徒や、それに準ずる力を持ったものもいる。いわゆる物の怪だ。まだ確定したことではないが恐らくリーダーは荒魂(あらだま)であろう。禍津彦尊と言うのは日本武尊の荒神で間違いないだろう。持っていたほこは伊邪那岐の天沼の矛と対になるものだと推測する」

「荒魂……荒神……皆、調伏されたはずではないのですか!?」

 高御産巣日の話を受けイザナミの顔が青ざめる。

「イザナミよ。どうもそうではないようだ。ならばこそ、辻褄が合うことが多いのだ。親族でないとできない神器の製作などな。マガモノを作り出すのもその神気を故意に暴走させるというのも神気を生み出す神族しかできないことなのだ」

 イザナミは俯き口をつぐむ。クロは静かに話を聞いた。

「そして、気になるのがお前達の報告にあった、禍津姫と禍魂と言う少年だ。禍津姫においては判明している。白兎一族。別名月兎だ。かぐや姫の一族だ。お伽噺では月よりきたとあるが違う。神徒ありながら人間界に行き、神の子孫である天帝など多くの者を己の欲望の為に人間をつかいすてていたのだ。その罪を問われ神により月へと隔離されたのが、かぐや姫なのだ」

 かぐや姫の求婚に対する試練はただの欲望……酷い事をするものだと、倫也と藍はなんとも言えない気持ちになる。

「たかっさん。禍魂については?」

 クロォォォォ!!  相手は造化の三柱ぅぅぅぅ!!と倫也は心の中で叫ぶ。もはやクロには道徳心は無いのだと。突っ込むのも諦めた。

「そいつについては検討もつかんな。荒神だとしても該当する出どころもない。もしやスクナヒコナかと思ったがやつは国外へと旅に出たため可能性は低いだろうな。何よりやつなら理由がない」

 高御産巣日様もそこは通常なんですね。もう倫也は集中出来なかった。

 その後も高御産巣日からの報告が続き以後の調査、対策を充分にする様にと言って高御産巣日は黄泉国をあとにした。

「イザナミ様。敵が荒神であるなら俺達だけで平気でしょうか?」

 藍が不安そうに聞く。

「そうね。現状では難しいでしょうね。でもね?第一隊と第二隊もいるのよ?それにクロ……あなたもそろそろ……」

 そう言えばクロは最近、秘密めいた話が多いのだ。正直、藍も倫也もとても気になるが聞けないでいる。

「……その話はおいおいねぇ~?今はまだって事でぇ~」

 クロははぐらかすようだかいつもの様に煙に巻くようだが話題は変えずおいおい、そのうちと言った。その場にいた全員がクロが話すのを待つことにした。ただ、イザナミは知っているようだ。


 ――イザナミ様!  イザナミ様聞こえますか!?

 沈黙の間にどこからか声がする。机に置かれた通信機からだ。勾玉を手に取りイザナミは対応する。

「聞こえるわ。誰かしら?」

「ウズメです!  アメノウズメです!  先程、瀬織津姫様から連絡がありまして桃華様が意識を取り戻しました!」

 天津国からの通信だ。ももの意識が回復したとの報告だった。

「本当に!?  ウズメ、桃華は大丈夫なの?」

 アメノウズメは少し間を置いて話した。

「えぇ。無事ではあります。ただ、今後の戦闘は厳しいとのことです。何でも左半身が穢れが強く残り呪印も消えないそうです」

「そんな……!  瀬織津姫と連絡はできるのかしら!?」

 イザナミは少し取り乱した様子でアメノウズメに強く言い寄る。クロも藍も倫也も歯を食いしばり悔しい気持ちを落ち着かせようとする。

「瀬織津姫様も八十禍津日神様も今は解呪の儀で消耗していて……明日には本人から話が聞けるかと……」

「分かったわ。ウズメ。報告ご苦労様。あなたもアマテラスのところに戻り支えてあげてね?そうそう。先程、高御産巣日様がいらしたわ。ニニギの事はあまり話さなかったけどアマテラスに進言したのはあの方でしょう?」

 イザナミは声に落ち着きを取り戻したようだ。柔らかくアメノウズメを労う。

「はい。お察しの通りです。アマテラス様も何かと高御産巣日様を頼られておりますので」

 そう。分かったわと言って通信を終わるイザナミ。

 暫く、外を見て考え事をするイザナミであったが意を決した様に振り向きクロに指示を出す。

「第三部隊は人間界にて調査を続行します。ほかの部隊は第三部隊のバックアップと黄泉国の守護柱をお願いすることにします。あと、ももちゃんの抜けた穴の補充もするわね。ももちゃんが帰るにしてもこのままだとみんな無理するからね!」

『了解です!』

 クロたちは声を合わせ答える。ももの事など不安は残るが、クロたちはももの帰る場所を守る為にと言葉に出さなくてもその想いは同じであった。

 ――続く
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