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第九話 これが第三部隊のお仕事ですよ!?
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出雲大社。年に一度、八百万の神が集まると言う、場所。そして大国主命(オオクニヌシノミコト)の管理神域であり、日本最古の神社の1つである。
クロの指示を受けた死神部隊の第三部隊は二名がここを拠点に監視を始めていた。
「うっふふ~。ねぇねぇ!見てよぉ!藍っ!!これかわいいでしょぉ~」
ももが巫女服を着てくるくると回って見せる。
「ももちゃん可愛いよ。だから仕事してね。ホント。」
黄泉国から人間界へ来て初日からももは巫女さん可愛いと言って巫女として出雲大社の社務所へ潜り込んでいる。藍は観光客に紛れて調査と監視を行う事にしていた。
「藍、藍ってば!ねぇねぇ!」
「んー?モモチャン、カワイイヨー」
既に藍はオウムの様にその言葉を繰り返すだけだった。出雲大社に異常な神気の流れを感知するために藍は勾玉に神気を込めながら術式を組み上げる。
「もう!なんで聞いてくれないの!?おかしい所を発見したのに~」
ももは目を潤ませ藍の顔を見上げる。
これを藍の視点から見るとツインテールの極み美少女が潤んだ瞳で上目遣いで見ている。更には若干上半身を前かがみにしているので胸元が僅かに、白い肌が覗けそうになっている。大抵の男なら一発で陥落する破壊力。しかし、相手は藍だ。
「おかしい所?そうだな。後で行こう」
「う~~~。また後回しだ……藍はいつも、ももに冷たい」
悲しそうな顔をして俯く。その様子を見て藍はやれやれと空を仰ぐ。
「ももな。先ずは各拠点ごとに自分たちの結界を作ろう。まだここの他に淡路と奈良、宮崎も回らないとダメなんだ。だからその……後でチェックしようそこは。」
藍は普段より優しくももに言ってみる。同僚への配慮も怠らない。こういう事も藍は性格なのか自然に行動に出る。
ももは頷き、少し笑顔でうん!と言って藍を手伝い始めた。
先ずは出雲大社が終わり、その後藍は宮崎へももは奈良へ向かった。それぞれに監視用の小さい結界を置く二人は淡路の伊弉諾神宮(いざなぎじんぐう)で合流して、結界を敷き終わった。
「よし。まる一日かかったけど準備は出来たかな。もも、お疲れ様!久しぶりに人間界の飯でも食おうか?」
「食べる!お好み焼き!」
ももは目を輝か焼かせながら答える。それは名案!と二人は食事に出かけることにした。
翌日からは別行動になる予定だったが前日にももが言っていた変な所を確認するため出雲大社に来ていた。そこに行くと藍は嫌なものを見た。
よくある小さいお稲荷さんの社だが鳥居のしめ縄が切れている。正確には切られている。切り口は焼き切られたようにボロボロで灰になっている。
「神気の残滓があるな……」
「そうだよね?ももはこれは変だと思ったんだぁ。神徒や道祖神みたいな人は社を故意には傷付けないでしょ?偶然だとしても縄だけをってないと思う」
ももの言う通りだ。ただ、現状で「穢れ」の気配はない。昨日、展開した結界にも反応は今のところない。人間の中に僅かなの神気を纏う人だけだ。恐らくそれは神主とか巫女である。つまりは正常値の範囲内だ。藍はしめ縄を修復する様にももに巫女に扮して貰い、社務所に報告してくるように促した。
「何も起きないでほしいんだけどな。やっぱ、ここ最近のマガモノ発生と何か関係があるんだろうな」
それから五日。結界には異常な反応はない。藍もその事を報告書としてまとめ始めていた。藍とももは毎日各神社を交代で見回っている。そして出雲大社近くの古民家に寝泊まりしている。古民家は黄泉国の神徒が人間界に紛れて調査の為に住んでいる家だ。今は藍とももが住むため休暇を取ってもらい黄泉国に帰っている。
季節は春の終わり。そろそろ梅雨入りが近い。
天気もぐずついている。縁側で空を見上げながらももは眉間に皺を寄せてつまらなそうにしている。
「藍ぃ~。雨降ってきそうだよぉ」
「そろそろ梅雨入りするかな。そんなとこにいると濡れちまうぞ?」
はーいと間延びした返事をしながら部屋の中にももは入って来た。報告書の作成をする藍を見て台所にお茶を取りに行った。その事に気付いた藍はありがとうとお礼を言う。藍はこの落ち着いた時間を心から安らげてはいなかった。仕事中ということもあるが、五日前の小さいお稲荷さんが気になっていたからである。
報告書の作成をしていると通信用の勾玉に通知がが来た。奈良で神器の維持作業をしている神徒からの反応が消えたので探って欲しいとの神庭宮からの依頼だった。藍はすぐに大神神社の結界とリンクする。確かに神徒の反応は見られない。記録を見るとついさっきまで境内で反応があったが消失している。
消失?神気を断つならわかるが消失……何かあったのか?
「ッッッ……!?」
藍に頭痛が走る。結界とのリンクに「穢れ」の気配が逆流してきた。気配を辿ると大神神社のある奈良県三輪山の山中からだ。突然、発生した気配はまるで空間転移したようにいきなり現れた。
「もも!緊急だ!奈良の大神神社に行くぞ!「穢れ」が出たっ!!」
「え?え?うそ!?いきなり?どうして!?」
そんなの分かるわけない。間に合うか!?黄泉比良坂はすぐそこだ。大神神社までなら三十分掛からずに着く。急いで飛び出す。ももは慌てて制服の上着を羽織りついて行く。
「クロ!クロ!!返事してくれ!「穢れ」が発生。場所は三輪山。大神神社から少し離れたところに滞留している。人間界は今、梅雨入りまじかだ。恐らくこのままでは嵐になる。予測される被害は土砂崩れと嵐による冠水。ももと共に黄泉比良坂より大神神社に急行する!!」
藍は捲し立てる様に一方的に報告する。
「了解だよぉ。今俺も向かってるよぉ。同じ位に着くと思うから本殿前に集合してねぇ」
了解と返事をして藍は神通力で風を纏いながら建物や木の上を足場に跳躍していく。
大神神社に着くと制服を着たクロが槍を携え立っていた。人払いをしたようで境内には人間はいない。
「あ、お疲れ様。藍、もも」
藍とももはクロのそばまで駆け寄る。藍が人間界での状況を大まかに説明する。
「分かったよぉ。イザナミ様からの指示は神徒の捕縛と神域の修復。まだ「穢れ」による侵食がない神社は浄化対象外。神徒についても発生時間からまだ侵食の進行は浅いと見られるため、捕縛後は黄泉国で監視になるよぉ。」
「了解です」
藍ともも、両名は隊長の指示を受諾した。集合した。第三部隊は三輪山山中へ展開して対象へ近づく。
先ずは藍が切り込み注意を引きつける。神徒を視界に捉えると神通力を使い荒れ狂う神気を抑える様に風の檻を作る。風の流れを「穢れ」は加速させ、霧散させる。
「バーサーカーって訳じゃないのか……それならっ!!」
藍は神徒の正面に短剣で切りかかる。地面を蹴り上げ、追い風を作り加速する。一瞬にして目の前に来た藍を神徒は躱す。
「がぁぁぁっ!」
神徒が痛みに声を上げる。完全に藍の短刀による攻撃は避けたが肩から血を流す。ももが銃による狙撃をしたのだ。藍が接近戦で気を引き、逃げないように中距離からの狙撃でももが牽制する。態勢は整った。あとはクロによる捕縛の術式が展開展開している所に追い込めば……
「藍、もも。ちょっと不味いかもぉ。その神徒さん、大神神社の神器とリンクしちゃってるよぉ」
何だって!?それじゃこのまま暴走したら神域と融合したら神格化する上に大災害になる。そうなれば捕縛所どころか神徒の身体が壊れるまで止まらない。仕方ない。ももを大神神社に戻しリンクしている神器を破壊するしか……一人で抑え込むしかない。藍がクロに言いかける。
「二人ともあと少しだけその子を牽制してねぇ。今大神神社にうちの新人君が神器を探してるから!」
「うそぉ?後輩くん来てるのたいちょ!?」
ももが嬉しそうにはしゃぐ。
「うん。それにスゥさんもいるから平気だよぉ」
さらに、はしゃぐもも。藍は少し安堵した。それでも分が悪い。向こうは神気の供給が断たれるまで無尽蔵。長引けばアウトだ。頼むぞ……ツヅキミチヤ!!
藍は双剣を得意とする。その双剣は少し特殊で柄と柄が長い鎖で繋がっている。それを両の剣先が重なる様に相手に向け斜に構える。神徒は武器を持たないが過剰な神気により身体は強化されている。指先触れるだけで皮膚は裂かれる様だ。
相対する両者。先に動いたのは神徒だ。しかし、藍とは反対に跳ぶ。どうやら離脱し大神神社に向かおうとする。神徒の目の前に一発の銃弾が撃ち込まれる。堪らず急停止する神徒。簡単に逃げられないことを悟り神徒は術式を展開する。雨雲が集まってくる。空から光が放たれる。雷だ。今度は黒が堪らず飛び退く。
これでお互い不要に飛び込めなくなった。しかしこの時点では第三部隊の任務は概ね成功している。神徒を足止めが出来たのであとは捕縛だが、神気の供給が断たれなければ状況は逆転してしまう。
「早くしてくれよ……ツヅキ」
痺れを切らせた神徒が一気に神気を吸い上げた。複数の雷が同時に何ヶ所も龍の様な光を地面に打ち込む。藍とももは避けながら神徒に向かい神通力と銃弾を飛ばす。雷がやまない。正に無限の雷が降り注ぐ。このままでは……限界を感じた藍は一か八かの突撃をする。態勢を低くして地面スレスレを跳ぶ。左に持った短剣を神徒の足元に投げる。神徒は真上に飛び避けるが鎖を引き短剣を抜きながら藍も垂直に跳び上がる。神徒は右手を突き出しながら落ちてくる。藍は宙にへ向かい両手に持った短剣を突き上げるが神徒の腕に弾かれ剣筋が逸れる。しくじった!藍は風の力で自分を吹き飛ばすが神徒の指先が右肩を捉えた。
「くっっ……ぅっっっ!!」
歯を食いしばりながら再度風を使い態勢を整え着地する。制服の右肩が大きく避け血が大量に流れ出る。
「藍っ!!」
ももは藍に追い討ちをかける神徒に向かい銃を連射しながら藍のそばに寄る。
「藍っ!!しっかりして!立てる!?たいちょ!一旦引きます!」
「ダメだよぉ。ももちゃんまだ作戦展開中だし何より俺の術式があと少しで展開するからそれまでは藍をそのままにしてももちゃんが代わりをしてぇ。」
クロの指示に反感を持ちながら唇を噛み締めももは小さい声で「了解」と呟いた。
神徒に向かい銃を構えながらももは神通力を展開する。得意の炎を操る術式だ。神徒の周りに炎の柱が現れ取り囲む。それは広がりももと藍も一緒に囲んだ。さながら炎のデスマッチリングだ。
「これなら足止めになるかなぁ?」
流石に一人で抑えるには自信が無い。神徒は雄叫びとも取れる叫び声を上げながらももに突進してくる。
「こ、来ないでーーーーーっ!!!!」
銃を乱射しながらももは目を瞑る。一瞬間を置いてももはゆっくり目を開ける。
「あ、あれ?」
神徒は先程纏っていた神気を失いうつ伏せに倒れている。どうやらスサノオとミチヤが神器を発見し破壊に成功したようだ。
その後、クロのいる所まで倒れた神徒を運び術式で神徒を捕縛術式で縛る。藍は右肩を負傷はしているが動けないほどではない様でももと一緒に黄泉国の神庭宮へと神徒を連行して行った。
「ごめんね。ももちゃん。怖いかもだけどこれが第三部隊の任務だから。」
去り際、少し憔悴した様な顔をしたももを見て心配そうに、申し訳なさそうにクロは呟いた。
二人を見送るとクロは大神神社へとむかっていった。
―続く
クロの指示を受けた死神部隊の第三部隊は二名がここを拠点に監視を始めていた。
「うっふふ~。ねぇねぇ!見てよぉ!藍っ!!これかわいいでしょぉ~」
ももが巫女服を着てくるくると回って見せる。
「ももちゃん可愛いよ。だから仕事してね。ホント。」
黄泉国から人間界へ来て初日からももは巫女さん可愛いと言って巫女として出雲大社の社務所へ潜り込んでいる。藍は観光客に紛れて調査と監視を行う事にしていた。
「藍、藍ってば!ねぇねぇ!」
「んー?モモチャン、カワイイヨー」
既に藍はオウムの様にその言葉を繰り返すだけだった。出雲大社に異常な神気の流れを感知するために藍は勾玉に神気を込めながら術式を組み上げる。
「もう!なんで聞いてくれないの!?おかしい所を発見したのに~」
ももは目を潤ませ藍の顔を見上げる。
これを藍の視点から見るとツインテールの極み美少女が潤んだ瞳で上目遣いで見ている。更には若干上半身を前かがみにしているので胸元が僅かに、白い肌が覗けそうになっている。大抵の男なら一発で陥落する破壊力。しかし、相手は藍だ。
「おかしい所?そうだな。後で行こう」
「う~~~。また後回しだ……藍はいつも、ももに冷たい」
悲しそうな顔をして俯く。その様子を見て藍はやれやれと空を仰ぐ。
「ももな。先ずは各拠点ごとに自分たちの結界を作ろう。まだここの他に淡路と奈良、宮崎も回らないとダメなんだ。だからその……後でチェックしようそこは。」
藍は普段より優しくももに言ってみる。同僚への配慮も怠らない。こういう事も藍は性格なのか自然に行動に出る。
ももは頷き、少し笑顔でうん!と言って藍を手伝い始めた。
先ずは出雲大社が終わり、その後藍は宮崎へももは奈良へ向かった。それぞれに監視用の小さい結界を置く二人は淡路の伊弉諾神宮(いざなぎじんぐう)で合流して、結界を敷き終わった。
「よし。まる一日かかったけど準備は出来たかな。もも、お疲れ様!久しぶりに人間界の飯でも食おうか?」
「食べる!お好み焼き!」
ももは目を輝か焼かせながら答える。それは名案!と二人は食事に出かけることにした。
翌日からは別行動になる予定だったが前日にももが言っていた変な所を確認するため出雲大社に来ていた。そこに行くと藍は嫌なものを見た。
よくある小さいお稲荷さんの社だが鳥居のしめ縄が切れている。正確には切られている。切り口は焼き切られたようにボロボロで灰になっている。
「神気の残滓があるな……」
「そうだよね?ももはこれは変だと思ったんだぁ。神徒や道祖神みたいな人は社を故意には傷付けないでしょ?偶然だとしても縄だけをってないと思う」
ももの言う通りだ。ただ、現状で「穢れ」の気配はない。昨日、展開した結界にも反応は今のところない。人間の中に僅かなの神気を纏う人だけだ。恐らくそれは神主とか巫女である。つまりは正常値の範囲内だ。藍はしめ縄を修復する様にももに巫女に扮して貰い、社務所に報告してくるように促した。
「何も起きないでほしいんだけどな。やっぱ、ここ最近のマガモノ発生と何か関係があるんだろうな」
それから五日。結界には異常な反応はない。藍もその事を報告書としてまとめ始めていた。藍とももは毎日各神社を交代で見回っている。そして出雲大社近くの古民家に寝泊まりしている。古民家は黄泉国の神徒が人間界に紛れて調査の為に住んでいる家だ。今は藍とももが住むため休暇を取ってもらい黄泉国に帰っている。
季節は春の終わり。そろそろ梅雨入りが近い。
天気もぐずついている。縁側で空を見上げながらももは眉間に皺を寄せてつまらなそうにしている。
「藍ぃ~。雨降ってきそうだよぉ」
「そろそろ梅雨入りするかな。そんなとこにいると濡れちまうぞ?」
はーいと間延びした返事をしながら部屋の中にももは入って来た。報告書の作成をする藍を見て台所にお茶を取りに行った。その事に気付いた藍はありがとうとお礼を言う。藍はこの落ち着いた時間を心から安らげてはいなかった。仕事中ということもあるが、五日前の小さいお稲荷さんが気になっていたからである。
報告書の作成をしていると通信用の勾玉に通知がが来た。奈良で神器の維持作業をしている神徒からの反応が消えたので探って欲しいとの神庭宮からの依頼だった。藍はすぐに大神神社の結界とリンクする。確かに神徒の反応は見られない。記録を見るとついさっきまで境内で反応があったが消失している。
消失?神気を断つならわかるが消失……何かあったのか?
「ッッッ……!?」
藍に頭痛が走る。結界とのリンクに「穢れ」の気配が逆流してきた。気配を辿ると大神神社のある奈良県三輪山の山中からだ。突然、発生した気配はまるで空間転移したようにいきなり現れた。
「もも!緊急だ!奈良の大神神社に行くぞ!「穢れ」が出たっ!!」
「え?え?うそ!?いきなり?どうして!?」
そんなの分かるわけない。間に合うか!?黄泉比良坂はすぐそこだ。大神神社までなら三十分掛からずに着く。急いで飛び出す。ももは慌てて制服の上着を羽織りついて行く。
「クロ!クロ!!返事してくれ!「穢れ」が発生。場所は三輪山。大神神社から少し離れたところに滞留している。人間界は今、梅雨入りまじかだ。恐らくこのままでは嵐になる。予測される被害は土砂崩れと嵐による冠水。ももと共に黄泉比良坂より大神神社に急行する!!」
藍は捲し立てる様に一方的に報告する。
「了解だよぉ。今俺も向かってるよぉ。同じ位に着くと思うから本殿前に集合してねぇ」
了解と返事をして藍は神通力で風を纏いながら建物や木の上を足場に跳躍していく。
大神神社に着くと制服を着たクロが槍を携え立っていた。人払いをしたようで境内には人間はいない。
「あ、お疲れ様。藍、もも」
藍とももはクロのそばまで駆け寄る。藍が人間界での状況を大まかに説明する。
「分かったよぉ。イザナミ様からの指示は神徒の捕縛と神域の修復。まだ「穢れ」による侵食がない神社は浄化対象外。神徒についても発生時間からまだ侵食の進行は浅いと見られるため、捕縛後は黄泉国で監視になるよぉ。」
「了解です」
藍ともも、両名は隊長の指示を受諾した。集合した。第三部隊は三輪山山中へ展開して対象へ近づく。
先ずは藍が切り込み注意を引きつける。神徒を視界に捉えると神通力を使い荒れ狂う神気を抑える様に風の檻を作る。風の流れを「穢れ」は加速させ、霧散させる。
「バーサーカーって訳じゃないのか……それならっ!!」
藍は神徒の正面に短剣で切りかかる。地面を蹴り上げ、追い風を作り加速する。一瞬にして目の前に来た藍を神徒は躱す。
「がぁぁぁっ!」
神徒が痛みに声を上げる。完全に藍の短刀による攻撃は避けたが肩から血を流す。ももが銃による狙撃をしたのだ。藍が接近戦で気を引き、逃げないように中距離からの狙撃でももが牽制する。態勢は整った。あとはクロによる捕縛の術式が展開展開している所に追い込めば……
「藍、もも。ちょっと不味いかもぉ。その神徒さん、大神神社の神器とリンクしちゃってるよぉ」
何だって!?それじゃこのまま暴走したら神域と融合したら神格化する上に大災害になる。そうなれば捕縛所どころか神徒の身体が壊れるまで止まらない。仕方ない。ももを大神神社に戻しリンクしている神器を破壊するしか……一人で抑え込むしかない。藍がクロに言いかける。
「二人ともあと少しだけその子を牽制してねぇ。今大神神社にうちの新人君が神器を探してるから!」
「うそぉ?後輩くん来てるのたいちょ!?」
ももが嬉しそうにはしゃぐ。
「うん。それにスゥさんもいるから平気だよぉ」
さらに、はしゃぐもも。藍は少し安堵した。それでも分が悪い。向こうは神気の供給が断たれるまで無尽蔵。長引けばアウトだ。頼むぞ……ツヅキミチヤ!!
藍は双剣を得意とする。その双剣は少し特殊で柄と柄が長い鎖で繋がっている。それを両の剣先が重なる様に相手に向け斜に構える。神徒は武器を持たないが過剰な神気により身体は強化されている。指先触れるだけで皮膚は裂かれる様だ。
相対する両者。先に動いたのは神徒だ。しかし、藍とは反対に跳ぶ。どうやら離脱し大神神社に向かおうとする。神徒の目の前に一発の銃弾が撃ち込まれる。堪らず急停止する神徒。簡単に逃げられないことを悟り神徒は術式を展開する。雨雲が集まってくる。空から光が放たれる。雷だ。今度は黒が堪らず飛び退く。
これでお互い不要に飛び込めなくなった。しかしこの時点では第三部隊の任務は概ね成功している。神徒を足止めが出来たのであとは捕縛だが、神気の供給が断たれなければ状況は逆転してしまう。
「早くしてくれよ……ツヅキ」
痺れを切らせた神徒が一気に神気を吸い上げた。複数の雷が同時に何ヶ所も龍の様な光を地面に打ち込む。藍とももは避けながら神徒に向かい神通力と銃弾を飛ばす。雷がやまない。正に無限の雷が降り注ぐ。このままでは……限界を感じた藍は一か八かの突撃をする。態勢を低くして地面スレスレを跳ぶ。左に持った短剣を神徒の足元に投げる。神徒は真上に飛び避けるが鎖を引き短剣を抜きながら藍も垂直に跳び上がる。神徒は右手を突き出しながら落ちてくる。藍は宙にへ向かい両手に持った短剣を突き上げるが神徒の腕に弾かれ剣筋が逸れる。しくじった!藍は風の力で自分を吹き飛ばすが神徒の指先が右肩を捉えた。
「くっっ……ぅっっっ!!」
歯を食いしばりながら再度風を使い態勢を整え着地する。制服の右肩が大きく避け血が大量に流れ出る。
「藍っ!!」
ももは藍に追い討ちをかける神徒に向かい銃を連射しながら藍のそばに寄る。
「藍っ!!しっかりして!立てる!?たいちょ!一旦引きます!」
「ダメだよぉ。ももちゃんまだ作戦展開中だし何より俺の術式があと少しで展開するからそれまでは藍をそのままにしてももちゃんが代わりをしてぇ。」
クロの指示に反感を持ちながら唇を噛み締めももは小さい声で「了解」と呟いた。
神徒に向かい銃を構えながらももは神通力を展開する。得意の炎を操る術式だ。神徒の周りに炎の柱が現れ取り囲む。それは広がりももと藍も一緒に囲んだ。さながら炎のデスマッチリングだ。
「これなら足止めになるかなぁ?」
流石に一人で抑えるには自信が無い。神徒は雄叫びとも取れる叫び声を上げながらももに突進してくる。
「こ、来ないでーーーーーっ!!!!」
銃を乱射しながらももは目を瞑る。一瞬間を置いてももはゆっくり目を開ける。
「あ、あれ?」
神徒は先程纏っていた神気を失いうつ伏せに倒れている。どうやらスサノオとミチヤが神器を発見し破壊に成功したようだ。
その後、クロのいる所まで倒れた神徒を運び術式で神徒を捕縛術式で縛る。藍は右肩を負傷はしているが動けないほどではない様でももと一緒に黄泉国の神庭宮へと神徒を連行して行った。
「ごめんね。ももちゃん。怖いかもだけどこれが第三部隊の任務だから。」
去り際、少し憔悴した様な顔をしたももを見て心配そうに、申し訳なさそうにクロは呟いた。
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