俺の世界がもはや異世界と似て非になるものになっているのだが?

良堕大正

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第2話

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「ありがとうございました。」
 ふぅー、やっと終わった。
 行きと違い帰りはゆっくり帰ることにしよう。

 結局最後に「明確な種族を判明するために血液検査しますか?」と言われ断ることができず、血液検査までしてしまった。
 取り敢えず、俺は
「異種族 亜人系 鬼族 種別赤鬼のハーフ」だそうである。

 え? 赤鬼なのに自分の肌はベージュと思ったら、受け継いだ部分が血液検査からにより角と肉体的作用つまりフィジカルを受け継いだらしい。

 そして、もう一つの疑問がある。
 なぜ今頃になって症状が出始めたのか?だ。
 異種族というものはやはり人間と違い圧倒的な力の差がある。
 物心がつく前に人の世界に出てしまうと、やはり危険で死傷事件を起こしかねないと判断された。

 以下から思春期後に完全な「異種族」として社会に出そうということから...、ここからは長くなるので要約すると、
 一時的(高校まで)に異種の血を無力化することが出来る「異種血弱体化一時制効薬」という新薬を妊婦に使うことが義務化され、生まれてくる異種族は思春期まで人間とほぼ同じ能力で生まれる。だから、俺はその結果だ。

 最後に小学校社会と保健体育の教科書「亜人という生き物について」  を...もらった。
 俺がニートだからと言って、もう子供扱いされている気しかしない。俺は学業を続けていたら高二だぞ。

 

 帰っている途中、いちよう例のヤツを読むことにした。
 ふむふむ。俺みたいな亜人系だけでなく、「オーク」、「ゴブリン」などの魔族系。
 さらになんと、「ドラゴン族」、「天使族」、「悪魔族」などの神話系までいるのかよ!
 
 読み進めると、亜人系には主に「エルフ族」、「獣人族」、が多いらしい。
 何度ネットの世界で憧れただろうか...あのエルフの特徴的な耳に絶対的美人制と、獣人の絶対領域である猫耳、犬耳!
 「ハッ!」 そういえば行きにすれ違ったあの人は獣人ではないかァァ。
 もう少し、じっくり観察すれば良かったァ。(泣)
 帰り道に会えますように!
 
 あえて遠回りをしていると、電話が鳴り出した。
 やっと親から折り返しで来たのである。

「もしもし?」

 俺が不機嫌そうに出ると。
 逆にものすごく元気で楽しそうな声が聞こえた。

「はっはっはっァー! どうしたァー!? 幽鬼ー?」
 父である。
 その声にさらに不機嫌になったが、そんな気分よりも大事なことなので大声で言った。

「どうしたこうしたじゃねぇよ! なんで俺が鬼のハーフなんて言わなかったんだよ?」
「ついにか...。確かにお前が中学に入ったらすぐに言おうと思っていたが... 」

「いたが...、なんだよ」
 親の真剣な声から、本日2度目の固唾さんを飲み込んだ。

「お前がすぐにニートになってしまったからだ!!」

「はっ?」

「おっけー?じゃ父さん忙しいからッ!プッ...」

 切りやがった。
 確かにニートの俺に困ることはないが言わない理由にはならない気がするけど、地味に理にかなっていることがウザイ。

 「はぁ」とため息をついていると、前方からまさに求めていたもアレが見えるような気がする。
 いや、ようなではない。まさにあれは「猫耳」だ!
 
 ついに夢が叶う。
 頭の中で自分のヒーローインタビューの妄想が出てきた。
 いっちょ前に「ずっと...憧れていたんで。」とか感極まって言っている自分を想像するとニヤケがとまらない。

 ほう。髪は黒髪ショート、身長は普通でヘアピンをはめている。
 そして、服装はミニスカートをはいている。
 ちっ、だが野郎付きか。

 まだ猫耳女子との距離はそう近くないむしろまだ遠く百メートルくらい離れている。
 それにもかかわらず、こんなにも分析できるのはやはり鬼族のフィジカルを受け継いだ俺の最凶の視力!
 ふっふっふ。まさかこんなにも凝視されているとは気づきまい。

 あれ? 待てよあの猫耳の顔を俺は見たことがある...。
 そのまさかだった。
 アイツはおれが中学でニートを始めることになった原因。

 そう俺はアイツにイジメられていたのだ。
 逃げようとしたが、気づいた頃にはもう数メートルになっていて、このまま通り過ぎてほしいと願うしかない。

 そいつは俺のところまで来ると、チラッ見て通り過ぎて行った。
 やった! 世界平和が訪れた!
 こんな歓喜は、ゲームでも味わったことがない。
 隠れながらガッツポーズをしていると、そいつらは振り返ってきてしまった。

 え? 第二次世界大戦が勃発?

「あっれぇ~? やっぱりお前鬼ヶ島じゃん。」

「ひっ、人違いじゃなな無いですか???」

 諦めて帰ってくれ。これが俺のできる最大の回避方法だ。
 
「フフッ、誤魔化しても無駄だよ。バレバレ」

「私にイジメられていた君にとっては忘れられないよね( 笑 )」

 コイツは「獣人族」じゃない、もはや「悪魔族」だ。
 しかし、今回は野郎付きだ。
 逆らったり、無理に言い返したらそいつにボコボコにされるのがオチだ。
 ただ「はい。」とだけ言うしかない。

「アッハハ!鬼ヶ島まさか名前の通りおにだったんだ。前よりマシなってんじゃね?www」

「うちは獣人だったんだよ~可愛いでしょ?」

 話をどんどん進めるが、もはや俺の耳には入ってきていない。
 俺は無我の境地的な領域に入っているため、全ての話を無関心で返すことが出来る!...ような気がする。

「おい ●●●!早く帰るぞ。」

 おっ、チャンスか?野郎テメェ俺の味方をしてくれるのか?
 
「わかったよ~、じゃあさぁ最後に鬼ヶ島~金貸して?」

 は?可愛い顔して何を言ってやがる。
 もちろんのこと貸したら返ってくるわけがない。
 病院の診察料のための金をたんまり5万持っていていて、血液検査をしたのでお釣りの4万950円もある。
 
「ももももも、持ってませぬよ。ニートだから生活をするのが精一杯ですよ、!」

「ふーん、じゃあジャンプしてみて?」

 ハグっ!? 終わった...するしかない。
 まさかこんな古典的な方法でバレるのか、。

「早くしろ!!」

 そんなにムキにならなくてもやりますとも。
 ジャンプ、そして案の定「チャリンチャリン~っ」と大きな音をたてた。
 
「アッハハ! やっぱ持ってるじゃん。鬼ヶ島にしては反抗的だったけど、分かりやっすいよ。」

「これだけは勘弁願えませんか...。」

「何それ?鬼ヶ島、何言っちゃってんの?」

「アンタはニートになったって、一生私の奴隷なの!」

 カッチーン、これは切れた。
 俺は誰だ? 鬼様ですぞ?獣人などというありふれた異種ではない!
 俺は叫ぶように言った。

「この金はなテメェらリア充がくだらねぇ夢の国やらラ〇ホなんぞに行くためのものじゃねぇんだよ!」

「そして、これはAmazonでギャルゲーを買うための金だ!」

 言った...。俺は言ったぞ。
 これぞ飼い犬に手を噛まれるってやつだ、飼われてわないけど。
 半分くらいヒガミみたいな感じだったが、初めて言い返せた。

「ふーん...、ウザイわ。マサシやっちゃって。」

 あ、終わった。
 言い返せたことの感傷に浸ってる場合では無い。
 あと野郎、マサシって言うのか...

 その刹那マサシパンチが俺の頬をかすめた。
 危ねぇ! 当たったらこれは一発KO何じゃないか?

 そして、二本目のパンチ。ギリギリ直前で避けることに成功。
 これはゲームをやりまくっていたことによる動体視力の向上?
 いや、これが鬼のフィジカル。
 こんなニートの俺もガタイが良いマサシの攻撃が気持ちいくらいにかわすことができる。

「ちっ、当たんねぇ!」

「何やってんのよ!相手はニートなのよ!」

 避けているだけじゃ終わらない。
 反撃しよう! 今の俺の攻撃がどこまでの威力を発揮するのかが楽しみだぜ。
 思いっきり振りかぶって、...

「これが鬼の拳だっ!!」

 あれ?当たらない...。

 そうか、避けることは誰でも出来る。
 戦闘能力としてはスカ〇ターで測ったら絶対野郎を超えているに違いない。
 しかし、俺のパンチは自分と同じでミエミエのバレっバレで当て感が無いパンチだということだ。
 これは長期戦になる予感。

「ハァハァ...」

 クッ、こんな時にニートの欠点スタミナがきれた。
 ヤベェ、足がもつれる。

「ははっ!もらった!」

 マサシのパンチが直撃。
 俺は地面に小バウンドして、ブロック塀に激突、ポケットに入ってた金が地面に転がった。
 痛てぇ...こんなの「もうガン〇ムになんか乗ってやるもんか」なんて言ってられる威力じゃない。

「手こずらせやがって、金ひろって行くぞ。」

 これじゃ、昔と何も変わらない。
 何も出来ないまま...なんて!

「終われねぇんだよおぉ!」
 
 俺はふらつきながらも立ち上がった。
 何故か分からないが異様に力が湧いてくる。
 頭が前よりも少し重い気がするし、体が火照って少し赤い。
 
「お前Mなのか?」

 マサシは、ぐるぐる手を回しながらもう1発を放つつ。
 
「二発もくらうほどニートやってねぇよ!」

 俺のパンチはマサシの拳と交差し見事にカウンターがハマった。
 
「そして!ダメ押しのアッパー!!」

 マサシの体は宙に浮き、空中で星になるくらいの所まで吹っ飛んだ。

「ええええええええ!???」

 ハモった。
 彼女と俺は今初めて意気投合しただろう。
 まさか俺にこんなにも力があるなんて!
 それにしてもマサシは死んでないかな?かなりの距離を飛んでいった。

 彼女は俺に怯えたのかは知らないが「覚えていてよね」的なことを言いマサシを置いて逃げていった。

「帰るか...」

 ニートにとってはオーバーワークだ。
 歩いている途中にガラスの窓で反射した自分の姿が見えた。

 ふぁ!?
 その姿は前よりもっと鬼に近づいたような風貌。
 角が伸び、さっきの体温のせいと思っていた体の赤みはモノホンの体の色だ。
 これは何でだ?これがさっきの力が湧く現象の原因なのか?
 これをカッコよく言うとしたら「血の覚醒」でも名付けようか。

「もはや俺の世界が異世界になってきている。」
 
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

 もう家の近くまでたどり着くと、何やら近所の人たちが騒がしくしていた。
 何があったんだろう?
 あれ?まさか!

 そのまさかだった、マサシが落ちたところは俺の家ど真ん中。
 そして、俺の家は屋根に穴があき、まだガラスも割れていた。
 俺は急いで家に入り、自分の部屋を確認した。
 俺ゲーム、パソコンはマサシの下敷きになり原型をとどめていない。

 ああ、終わった俺のニート生活...。
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