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魅惑の聖女様
22 様子のおかしい聖女様
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ウィリデのおやつを急かす声に、聖女と殿下はあっさり負けた。
庭のガゼボに用意してるから早く行こう、と言われ移動しているのだが、大移動だな、コレ。
距離的には10分もかからないのに、殿下、聖女、ゼフマン卿、護衛が1、2…………ゼフマン卿を入れて5人?
あとは、聖女の侍女っぽい人と、僕の合わせて9人。
ウィリデや聖女の周りを飛び交う妖精達を含めたらとんでもないな。
ぞろぞろ歩くのもそうだけど、偉い人達が通るとこうなるわ、そりゃ。
開けた廊下を行き交うエメラルド宮の使用人達が、両脇で立ち止まり首を垂れて、殿下達が通り過ぎるのを待っている。
うわー。息が詰まりそうだ。もう会釈で良くない?
殿下だって気にしないって。むしろ仕事の手を止めてごめんまで思ってらっしゃる可能性あるからね。
………あら、皆さん普通で。そうか、僕が驚いているだけで、これが王宮で暮らす人の当たり前なのか。
ウィリデに聞きたいことはたくさんある。
だけど聖女の横を飛ばれたら、話しかけられないし、護衛がズラリと前後守ってる中で、こそこそ話なんかできるわけない。
いつから、聖女と繋がりがあったんだよ。
僕と会う前から? そういえば、初めの頃、愛し子って単語がよく出てきてたよな。
さっき、聖女のことをそう呼んでなかったか。
「さっ、座ってください! エリオット様は、ここね。
(戸惑い気味の推し、ごちそうさまです。
服が長袖だし詰襟だから分からないけど、とりあえず顔に怪我はしてないみたいね。まあ、ダージル何某は赦さないけど)」
「ああ。君も座りたまえ。
コトネが張り切って準備したんだ。気を楽にして楽しもう」
「失礼いたします(いや、あなた方が座ってくださらないと、座れないです。気楽にとか無理)」
聖女に勧められた席は、まさかの真ん中だった。
建物を背にして殿下、庭が1番綺麗に見えるだろう真ん中に僕、逆に庭に背を向ける席の聖女。
どちらか、席を替わって欲しい。いっそ立たせてくれ。
「わーっ! ウィリデの知らないお菓子あるぅ」
「あ、こらウィリデ」
ウィリデの言う通り、見たことのないケーキやガラス皿に盛られたスイーツの数々に、財力を感じる。
今は我慢してくれ、ウィリデ。殿下達が口をつけるまで食べてはいけないんだ。触るのもダメだ。
「そうなの! エリオット様にわがまま言って、私も手伝ったのよ? これがシフォンケーキで、これはチョコレートパフェ。苺のフレジェも綺麗でしょ?」
「コトネは本当に上手だね。手作りを食べられるなんて、光栄だな」
このキラキラしたスイーツ達は、聖女の手作りなのか!
まるで職人みたいだ。異世界から来たと聞いてたけど、製菓の勉強をしていたのかもしれない。
異世界の甘いものか。どんな味がするんだろう。
あと、殿下が手作りを強調しながら僕の方を見たのは、何故だ。
まさか嫉妬されている? 聖女の手作りを食べるなと牽制されたのか?
「そんな、素人が作ったものだから、比べたりしないでね?(本当はもっと凝りたかったんだけど。
ディオン君だって初めから知ってたらなー。これだって、急遽作らせてもらったわけだし。
だってディオン君に食べてもらいたい。甘党なのよね?
アシル様がいつもお菓子買うっていう、エピソードがあったから)」
「コトネが作る菓子は、いつも美味しいよ」
「えへへ。良かった」
えー、僕お邪魔じゃない? 帰っていい?
それにしても、噂は本当だったんだな。
品行方正、文武両道、浮いた話もなかった殿下が、ここまでとは。
婚約者のロッティ公爵令嬢は、身を引いたのか?
何度か夜会で見かけたことがあるが、まさに若き社交界の華だった。あの年齢で、あの振る舞いは、なかなかできるものじゃない。
幼い頃から、どれだけ厳しい教育を受けてきたのか、想像に容易い。公女は、それを全て諦められたのだろうか。
「お茶はウィリデ君の好きなハーブティーにしたんですけど、ディオンく………ディオン様は、お好きですか?」
「はい。それから敬称は不要です。
どうぞ、ディオンとお呼びください」
聖女に様付けで呼ばせるのは、アウトだ。
そんなことをさせれば、明日からドルツ家の居場所はない。
絶対にやめていただかないと。
「あ……ごめんなさい(困らせちゃった。でもディオン君を呼び捨てなんてっ。私にはまだムリよ!
だけど、ディオン君が困っている。切実な顔をして私を見てる。はうっ、ディオン君が私を、私を見つめてっ!!)」
ヤバイ。黙り込んじゃった。気分を害してしまったっぽい。どうしよう、殿下見てるよ、でも様は無理じゃん。
分かるでしょ、アンタ王族なんだから!
「いえっ、謝っていただくようなことでは!
えっと、ぼ…私は、ほぼ平民と変わらないような身分でして、聖女様に、その……」
殿下、ヘルプ! フォローしてください。
ゼフマン卿も、何も聞いてませんみたいな顔してないで、何とか言ってくださいよ。
「(え、呼び捨てしなきゃダメ? でも推しが望んでいるのよ。いや、だけどハードル高いわぁ。
ディオン君が困ってる。早く呼ばなきゃ。簡単なことなのにっ)」
「そうだね、彼は男爵家の三男だというし。
まあ、公爵家であったとしても、コトネに呼び捨てで呼ばれて文句を言う者はいないよ。
私もディオンと呼ばせてもらおう」
ナイスです、殿下。ありがとうございます!
「(そっか、私が聖女だから迷惑をかけてしまうのね)
分かりました! ディオン……くん。無理だっ、いや、ディオン君、ディオンたん! ディオンたんはどうですか?
あだ名みたいな感じで」
「ディオンたん?」
「ディオンたん……」
異世界の独特な言い回しだろうか。響きが、むず痒いのは気のせいかな。
「ディオン君にしようか、コトネ」
「え、あ、いいの? 良かったー」
ええ。良くない。いや、ディオンたんよりはいいのか?
「ディオンもそれでいいね」
「は、はい。お気遣い感謝いたします」
「それから、敬語もやめようか。彼を困らせないようにね」
殿下にファーストネーム呼ばれるのも、緊張するとは言わないでおこう。
どうせ今回きりだし。
「じゃあディオン君、食べましょう!
私のおすすめは、この焼き菓子と、これと、あとこれも美味しいんです。じゃなかった、美味しいの。
あと、シフォンケーキは自信があるから、食べて欲しいな」
「はい、ありがとうございます」
「フフ、本当に会いたかったんだね。彼に」
「ええ!(当たり前でしょ! 今からアシル様との馴れ初めとか、普段何してるかとか、たくさん恋バナ聞かせてもらうんだから。栄養補給よ。100g、2万円の和牛ステーキなのよ!)」
何で聖女は、こんなに良くしてくれるんだろう。
殿下の顔が恐いんですけど。手ずからサーブしてくださるなら、僕より先に、殿下にケーキを。
「愛し子ー、ウィリデのはー」
「ウィリデ君は、桃ちゃんと同じお皿でいいかしら」
「うん。モモとウィリデ、愛し子のお菓子好き。
この黒白、多めがいいー」
「チョコレートパフェね。これは、取り分けずにこのまま食べた方が、美味しいの。はい、どうぞ」
「ありがとうー! モモ、食べよー」
「愛し子、ありがとう。皆んなで食べて来るわ」
大きめな皿に盛られたスイーツを見て、ウィリデは嬉しそうにテーブルを跳ねている。
モモという妖精が魔法で宙に浮かし、皿とグラスを上へ飛ばした。
「ディオン、ウィリデ屋根で食べて来るねー」
「ああ、うん」
ガゼボの周囲を飛んでいた、妖精達もウィリデと一緒に上に飛んで行く。
屋根って、このガゼボの屋根のことかな。
僕の気も知らないで楽しそうだな、おい。
「ディオン君、この間は大丈夫だった? 怪我もしたって聞いたわ」
「はい、その節はありがとうございました。
ご迷惑をおかけしたようで」
「いいのよ、ディオン君が無事なら。痛い思いはしてない?」
「ええ。第一騎士団にメイガート隊長という方がいるんですが、良く効く薬をいただきました」
「メイガート家の者か。確か魔塔に入らず、騎士になった変わり者がいたな」
「はい。メイガート隊長は、メイガート公爵のご令息です」
さすが名門メイガート家。嫡男以外の働き先まで王族に注視されるのか。
「素敵な隊長さんですね!
エリオット様、メイガート公爵家は有名なの?
(ほとんどの公爵家の当主には、会ったはずなんだけど)」
「メイガートは特殊なんだ。魔法使いの一族というか、政には興味がないんだ。
小公爵は魔塔のNo,2だよ」
「え、魔塔の?」
「ああ」
「(魔塔のNo,2? エリオットの勘違いかしら。だって魔塔のNo,2は、ルイ・デュボワでしょ? ロバートルートでは、ルイが当て馬ポジションだったもの)
……そうなんですね」
何で聖女は、こんなに驚いた顔をしてるんだろう。
魔塔に興味があるのかもしれないな。僕だって興味あるし。
あ、このケーキ美味しい。レシピ教えてもらえないかな。
「とにかく、何事もなくて良かった。
君に何かあったら、アシル・ラジートが大変になりそうだから(私としても、末永く仲良くしていてもらいたい。コトネが諦められるように)」
「うふふ(分かる。なんなら人目に触れないように、監禁とかしそう。むしろしてちょうだい!)」
「何故、ラジート隊長が」
殿下は何が仰りたいんだ。嫌な予感しかしない。
そのニヤリ顔は何ですか。聖女は、なんか息荒いし。
「何故って、恋人なんだろう? 後継者の椅子を蹴ってまで、君を選んだそうじゃないか」
「ぶはっ」
「ディオン君大丈夫? 気管に入っちゃった?
照れなくていいのよ。素敵じゃない! なんて大きな愛なのかしらっ。いつ付き合い始めたの? どこが好き? いつも2人で何をしてるの? デートは何処で?」
「ええっ?」
「ディオン君には甘々なのかしら。あ、ディオン君が甘えるの? どんな感じで?」
「聖女様?」
「ねえ、どうなの!?」
熱気と圧が強過ぎる。
そんな恥ずかしいことを聖女に話すとかできない。
しかも殿下もゼフマン卿達も聞いてる中で。
庭のガゼボに用意してるから早く行こう、と言われ移動しているのだが、大移動だな、コレ。
距離的には10分もかからないのに、殿下、聖女、ゼフマン卿、護衛が1、2…………ゼフマン卿を入れて5人?
あとは、聖女の侍女っぽい人と、僕の合わせて9人。
ウィリデや聖女の周りを飛び交う妖精達を含めたらとんでもないな。
ぞろぞろ歩くのもそうだけど、偉い人達が通るとこうなるわ、そりゃ。
開けた廊下を行き交うエメラルド宮の使用人達が、両脇で立ち止まり首を垂れて、殿下達が通り過ぎるのを待っている。
うわー。息が詰まりそうだ。もう会釈で良くない?
殿下だって気にしないって。むしろ仕事の手を止めてごめんまで思ってらっしゃる可能性あるからね。
………あら、皆さん普通で。そうか、僕が驚いているだけで、これが王宮で暮らす人の当たり前なのか。
ウィリデに聞きたいことはたくさんある。
だけど聖女の横を飛ばれたら、話しかけられないし、護衛がズラリと前後守ってる中で、こそこそ話なんかできるわけない。
いつから、聖女と繋がりがあったんだよ。
僕と会う前から? そういえば、初めの頃、愛し子って単語がよく出てきてたよな。
さっき、聖女のことをそう呼んでなかったか。
「さっ、座ってください! エリオット様は、ここね。
(戸惑い気味の推し、ごちそうさまです。
服が長袖だし詰襟だから分からないけど、とりあえず顔に怪我はしてないみたいね。まあ、ダージル何某は赦さないけど)」
「ああ。君も座りたまえ。
コトネが張り切って準備したんだ。気を楽にして楽しもう」
「失礼いたします(いや、あなた方が座ってくださらないと、座れないです。気楽にとか無理)」
聖女に勧められた席は、まさかの真ん中だった。
建物を背にして殿下、庭が1番綺麗に見えるだろう真ん中に僕、逆に庭に背を向ける席の聖女。
どちらか、席を替わって欲しい。いっそ立たせてくれ。
「わーっ! ウィリデの知らないお菓子あるぅ」
「あ、こらウィリデ」
ウィリデの言う通り、見たことのないケーキやガラス皿に盛られたスイーツの数々に、財力を感じる。
今は我慢してくれ、ウィリデ。殿下達が口をつけるまで食べてはいけないんだ。触るのもダメだ。
「そうなの! エリオット様にわがまま言って、私も手伝ったのよ? これがシフォンケーキで、これはチョコレートパフェ。苺のフレジェも綺麗でしょ?」
「コトネは本当に上手だね。手作りを食べられるなんて、光栄だな」
このキラキラしたスイーツ達は、聖女の手作りなのか!
まるで職人みたいだ。異世界から来たと聞いてたけど、製菓の勉強をしていたのかもしれない。
異世界の甘いものか。どんな味がするんだろう。
あと、殿下が手作りを強調しながら僕の方を見たのは、何故だ。
まさか嫉妬されている? 聖女の手作りを食べるなと牽制されたのか?
「そんな、素人が作ったものだから、比べたりしないでね?(本当はもっと凝りたかったんだけど。
ディオン君だって初めから知ってたらなー。これだって、急遽作らせてもらったわけだし。
だってディオン君に食べてもらいたい。甘党なのよね?
アシル様がいつもお菓子買うっていう、エピソードがあったから)」
「コトネが作る菓子は、いつも美味しいよ」
「えへへ。良かった」
えー、僕お邪魔じゃない? 帰っていい?
それにしても、噂は本当だったんだな。
品行方正、文武両道、浮いた話もなかった殿下が、ここまでとは。
婚約者のロッティ公爵令嬢は、身を引いたのか?
何度か夜会で見かけたことがあるが、まさに若き社交界の華だった。あの年齢で、あの振る舞いは、なかなかできるものじゃない。
幼い頃から、どれだけ厳しい教育を受けてきたのか、想像に容易い。公女は、それを全て諦められたのだろうか。
「お茶はウィリデ君の好きなハーブティーにしたんですけど、ディオンく………ディオン様は、お好きですか?」
「はい。それから敬称は不要です。
どうぞ、ディオンとお呼びください」
聖女に様付けで呼ばせるのは、アウトだ。
そんなことをさせれば、明日からドルツ家の居場所はない。
絶対にやめていただかないと。
「あ……ごめんなさい(困らせちゃった。でもディオン君を呼び捨てなんてっ。私にはまだムリよ!
だけど、ディオン君が困っている。切実な顔をして私を見てる。はうっ、ディオン君が私を、私を見つめてっ!!)」
ヤバイ。黙り込んじゃった。気分を害してしまったっぽい。どうしよう、殿下見てるよ、でも様は無理じゃん。
分かるでしょ、アンタ王族なんだから!
「いえっ、謝っていただくようなことでは!
えっと、ぼ…私は、ほぼ平民と変わらないような身分でして、聖女様に、その……」
殿下、ヘルプ! フォローしてください。
ゼフマン卿も、何も聞いてませんみたいな顔してないで、何とか言ってくださいよ。
「(え、呼び捨てしなきゃダメ? でも推しが望んでいるのよ。いや、だけどハードル高いわぁ。
ディオン君が困ってる。早く呼ばなきゃ。簡単なことなのにっ)」
「そうだね、彼は男爵家の三男だというし。
まあ、公爵家であったとしても、コトネに呼び捨てで呼ばれて文句を言う者はいないよ。
私もディオンと呼ばせてもらおう」
ナイスです、殿下。ありがとうございます!
「(そっか、私が聖女だから迷惑をかけてしまうのね)
分かりました! ディオン……くん。無理だっ、いや、ディオン君、ディオンたん! ディオンたんはどうですか?
あだ名みたいな感じで」
「ディオンたん?」
「ディオンたん……」
異世界の独特な言い回しだろうか。響きが、むず痒いのは気のせいかな。
「ディオン君にしようか、コトネ」
「え、あ、いいの? 良かったー」
ええ。良くない。いや、ディオンたんよりはいいのか?
「ディオンもそれでいいね」
「は、はい。お気遣い感謝いたします」
「それから、敬語もやめようか。彼を困らせないようにね」
殿下にファーストネーム呼ばれるのも、緊張するとは言わないでおこう。
どうせ今回きりだし。
「じゃあディオン君、食べましょう!
私のおすすめは、この焼き菓子と、これと、あとこれも美味しいんです。じゃなかった、美味しいの。
あと、シフォンケーキは自信があるから、食べて欲しいな」
「はい、ありがとうございます」
「フフ、本当に会いたかったんだね。彼に」
「ええ!(当たり前でしょ! 今からアシル様との馴れ初めとか、普段何してるかとか、たくさん恋バナ聞かせてもらうんだから。栄養補給よ。100g、2万円の和牛ステーキなのよ!)」
何で聖女は、こんなに良くしてくれるんだろう。
殿下の顔が恐いんですけど。手ずからサーブしてくださるなら、僕より先に、殿下にケーキを。
「愛し子ー、ウィリデのはー」
「ウィリデ君は、桃ちゃんと同じお皿でいいかしら」
「うん。モモとウィリデ、愛し子のお菓子好き。
この黒白、多めがいいー」
「チョコレートパフェね。これは、取り分けずにこのまま食べた方が、美味しいの。はい、どうぞ」
「ありがとうー! モモ、食べよー」
「愛し子、ありがとう。皆んなで食べて来るわ」
大きめな皿に盛られたスイーツを見て、ウィリデは嬉しそうにテーブルを跳ねている。
モモという妖精が魔法で宙に浮かし、皿とグラスを上へ飛ばした。
「ディオン、ウィリデ屋根で食べて来るねー」
「ああ、うん」
ガゼボの周囲を飛んでいた、妖精達もウィリデと一緒に上に飛んで行く。
屋根って、このガゼボの屋根のことかな。
僕の気も知らないで楽しそうだな、おい。
「ディオン君、この間は大丈夫だった? 怪我もしたって聞いたわ」
「はい、その節はありがとうございました。
ご迷惑をおかけしたようで」
「いいのよ、ディオン君が無事なら。痛い思いはしてない?」
「ええ。第一騎士団にメイガート隊長という方がいるんですが、良く効く薬をいただきました」
「メイガート家の者か。確か魔塔に入らず、騎士になった変わり者がいたな」
「はい。メイガート隊長は、メイガート公爵のご令息です」
さすが名門メイガート家。嫡男以外の働き先まで王族に注視されるのか。
「素敵な隊長さんですね!
エリオット様、メイガート公爵家は有名なの?
(ほとんどの公爵家の当主には、会ったはずなんだけど)」
「メイガートは特殊なんだ。魔法使いの一族というか、政には興味がないんだ。
小公爵は魔塔のNo,2だよ」
「え、魔塔の?」
「ああ」
「(魔塔のNo,2? エリオットの勘違いかしら。だって魔塔のNo,2は、ルイ・デュボワでしょ? ロバートルートでは、ルイが当て馬ポジションだったもの)
……そうなんですね」
何で聖女は、こんなに驚いた顔をしてるんだろう。
魔塔に興味があるのかもしれないな。僕だって興味あるし。
あ、このケーキ美味しい。レシピ教えてもらえないかな。
「とにかく、何事もなくて良かった。
君に何かあったら、アシル・ラジートが大変になりそうだから(私としても、末永く仲良くしていてもらいたい。コトネが諦められるように)」
「うふふ(分かる。なんなら人目に触れないように、監禁とかしそう。むしろしてちょうだい!)」
「何故、ラジート隊長が」
殿下は何が仰りたいんだ。嫌な予感しかしない。
そのニヤリ顔は何ですか。聖女は、なんか息荒いし。
「何故って、恋人なんだろう? 後継者の椅子を蹴ってまで、君を選んだそうじゃないか」
「ぶはっ」
「ディオン君大丈夫? 気管に入っちゃった?
照れなくていいのよ。素敵じゃない! なんて大きな愛なのかしらっ。いつ付き合い始めたの? どこが好き? いつも2人で何をしてるの? デートは何処で?」
「ええっ?」
「ディオン君には甘々なのかしら。あ、ディオン君が甘えるの? どんな感じで?」
「聖女様?」
「ねえ、どうなの!?」
熱気と圧が強過ぎる。
そんな恥ずかしいことを聖女に話すとかできない。
しかも殿下もゼフマン卿達も聞いてる中で。
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