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魅惑の聖女様

12 アシルとディオン *

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 涙目になりながら、徐々に抵抗をなくしていくディオン。
自力で立つのも辛くなったのか、完全に俺の腕の中で伸びている。
 角度を変える度に漏れる上擦った声が、俺の頭をおかしくさせた。

 ディオンが嫌がると思い、ちろりと緑頭を見れば、俺を睨みつつも意図を汲み、ピンク頭を連れて姿を消した。


「……ぎぶ、も、限界」
「しょぼいな」
「なっ! 皆んなが皆んな、お前みたいに上手いと思うなよっ」


 顔を真っ赤にしながら非難するが、それだと意味がないぞ。
まあ、本人は分かってないんだろうが。


「俺のキスは上手いのか。お前を満足させられたようで何よりだ」
「えっ……あ、ちが、そういう意味じゃなくて。
いや、間違ってはないんだけど、違くて」


 焦ったように、ワタワタと否定しているが、もう遅い。
つうか、認めたよな、今。
食ってもいいってことだろうか。もはや食えって意味だよな。これは。


「ディオン。この前の続きさせろ」
「バカ、何言って! それにまだ昼間だし、風呂も……」


 良かった。嫌なわけじゃないんだな。
なのに、何で見合いなんかしようとするわけ?
俺が老後まで面倒みるっつうのに。


「関係ない。お前に触れたい」
「っ、それは、性欲処理として?」
「はあっ?」
「じゃあ、何で。僕達って何?
最後までしたら、もう……戻れなくなる」


 俺達の関係? そんなものに名前をつける必要があるのか。別にセックスをしてもしなくても、俺達は普段と変わらない。そのはずだ。
だって俺達が一緒にいるのは、当たり前なんだから。


「何を不安がる。俺達は俺達のままだろう」
「違うよ! アシルは今、僕との関係を壊そうとしてる。
キスだって、それ以上の行為だって、普通はしない。
それくらい経験のない僕でも分かる!
その上、縁談も断れだなんて、それじゃまるで!」


 まるで、何だ。
ディオンは俺に何を求めている?
何と言えば、コイツを一生繋ぎ止められる。

 そうだ。別にディオンの嫁や婿入り先を世話する必要なんてないじゃないか。
妹の結婚相手にする必要もない。
一生側にいさせるなら、そんなまどろっこしい考えは要らない。
ディオンが誰かの隣で笑うなんて、想像するだけで反吐が出る。


「生娘みたいなこと言うんだな。
責任とれってか? いいぜ、俺は」
「いやいや、正気か? ラジート家は誰が継ぐの。お前だろ?」
「ああ、俺が継ぐ。だから、ディオンが嫁になればいい」
「どうした、ほんとに。馬鹿なの? 
いいか、アシル。男と男じゃ、子供は産まれないんだぞ」
「当たり前だ」
「跡取りがいなくなるの。お家断絶の危機だよ!?
団長も奥様も発狂もんだわ」


 そんなに重要なことか? 
まあ、ディオンの子なら可愛いかもしれない。
だが、お家断絶とは大袈裟だ。
他の兄妹から子供を養子にもらえばいいだけの話だ。
子供が次期当主になるのなら、誰も文句はないだろう。


「心配するな。そう簡単に一族は潰れたりしない」
「やべえよ。マジでバカだよ。本物の馬鹿。
そんなんに僕を巻き込まないでくれよ」
「嫌か」
「嫌だろ」
「何一つ不自由はさせないし、お前さえいれば愛人を作ることもない。養子が嫌なら、別に育てなくてもいい。
後継者を指名すればいいだけの話だ」
「え~っと、アシルは何。僕が好きなの?
乳母兄弟がいなくなるのが嫌なんじゃなくて、こう、恋愛的な意味で好き……なの?」


 恋愛的かと問われても困るな。
ただ、ディオンが側にいて、俺がディオンの1番であればいい。それだけのことだ。
これが、愛だの恋だのと言うのなら、そうなのだろう。


「そうだな。俺だけを見て、俺だけを求めて、俺だけに愛されればいい。簡単だろ」
「なっ、なっ!」
「できるよな」
「僕の意思は?」
「何、俺より好きな奴がいるの?」


 誰だ。そのいけ好かない野郎は。女でも許さねえ。


「そう言われると、パッと思いつかないけど。
今後は分からないだろ? 出会いがあるかもしれないし」
「今思いつかないなら、問題ない。
お前の1番は俺だ」
「こわ。暴君すぎる。
じゃあ、アシルの1番も僕だよね?
僕を恋人にしたいなら、毎日愛を囁いて、花でもプレゼントして、僕のわがまま聞いてくれるんでしょ」


 対抗するつもりで言ってるんだろうが、それだけで手に入るなら安いものだ。
ディオンがバカで本当に良かった。
閉じ込める手間が省けたな。


「俺がお前より、他の奴を優先させたことがあったか?」
「え? …………………あれ、ない…かも」
「プレゼントは花でいいのか? 焼き菓子の方が嬉しいだろう」
「た、確かに」
「わがままは、お前が可愛くおねだりできたら聞いてやる」
「えっ、ええ?」
「縁談、断るよな」
「ええ?」
「早速、今日の分の愛を囁こうか。
お前の身体の隅々まで愛しながら」
「ちょっとたんま、待って、心の準備が」
「観念しろ。いいから大人しく、俺に愛されればいい」
「うそ」


 ディオンがごちゃごちゃと言い訳を並べたが、全部退けた。
なんだ、こんなに簡単だったのか。
この絶え間なく湧き出る感情を、恋なんて可愛らしい名前で呼べばディオンは納得してくれたのだ。
それがもっとドロドロとおどろおどろしいものだったとしても。
 ああ、なんて単純で愛しい存在なのだろうか。


「明日から俺の部屋に移れ」
「嫌だよ。ちょっと離れて。ウィリデが見てるから、教育上よろしくないだろ?」
「大丈夫だ。緑頭なら気を利かせて出て行った」
「いつの間にっ!? そんな気はいらないのにぃ~」


 服の上からするりと撫でれば、ピクピクと反応する様が面白い。
 仕事中の襟の詰まった制服と違い、襟ぐりが広い普段着からは、白く細い首や鎖骨が見え隠れしている。
俺のモノだと首筋に吸いついて痕を残す。
健康的な肌に似合わない鬱血の痕に、気分が高揚した。


「これじゃ隠れちまうな」
「?」


 つけた痕を指でなぞる。この位置だと仕事着に隠れる。
もう少し高い位置につけて、見せびらかしてやろうか。
人に指摘されて、動揺する姿が目に浮かぶ。


「んんっ、ねえ……ほんとに、するの?」
「ああ。最後までしたら戻れなくなるって言ったのは、ディオンだろ。これでもう、戻れねーな」
「あ、───…」
「待ったも無理もなしな。ココに俺の挿れて、奥までぐりぐり押しつけて、泣く程善がらせてやる」


 ディオンの秘部に布越しに指で触れ、トントンと叩くとビクリと身体が跳ね上がった。
キスですっかり勃ち上がっていたモノも、萎えてはいないようだ。
 困惑気味のディオンを安心させるようにキスを落とし、明日冷静になったディオンが言い逃れできないよう、無数の痕をつけていく。
 一糸纏わぬ姿で露わになった肌には、俺の印が刻まれた。


「んあ、……あふぅ、そんなとこ、汚いっ」
「暴れるな。しっかり解さねえと、痛いのはお前だぞ」
「ううっ」


 初めての記憶を痛みで終わらせない為に、ぐずぐずになるまで解す。
指が3本入る頃には、違和感からわずかに刺激を拾い始め、少しずつ快感を覚えている様子が見て取れた。


「だいぶん拡がってきたな。どうだ?」
「ひ、あっ! そこばっかりぐりぐりするなぁっ」


 やや硬いしこりを重点的に攻めてやれば、ディオンの先端からじわりと溢れた精液が、自身の腹を汚していく。


「はっ、えっろ」
「やあっ。見るな!」


 指を全て抜き、ヒクつく秘部に己の怒張したソレをあてがう。


「ゆっくり呼吸するんだ。そう、いい子」
「あついのが………あ、あ」
「指を噛むな。手はこっちだ。いくらでも爪立てていいから」


 異物を拒む小さな蕾を押し拡げていくと、耐えられなくなったディオンが指を噛んで、声を抑えようとする。
傷が残らないように、両腕を俺の首に回す形で持ってこさせると、ディオンは痛みを紛らわすようにぎゅっと力を込めた。

 半分ぐらい進めた所で、一度馴染むのを待つ。


「あん……おっきぃ」
「っ、人の気も知らないで」


 一気にぶち込みたい衝動を抑え、ゆらゆらと腰を揺らす。
 汗でしっとりしたディオンの髪を撫でつければ、艶のある声で鳴いた。


「もうちょっと、頑張れるか?」
「あ、うそ……まだなの? 信じらん、ない」
「ああ。だから、一気に奥までいっていい?」
「んっ、もう、するなら、早くしろぉっ」


 いきなり男らしくなったディオンに、笑いが漏れた。
 焦らして浅い所ばかり抜き差ししたら、どんな反応をするだろうか。次はそうしてもいいかもしれない。
まあ、自分の理性が保てればの話だが。


「息、止めるなよ」
「わかっ─────ひっ! ああっ!
待って、そんな奥までっ………ぁ、やああ!」


 宣言通り、ぐっと奥まで挿し込む。
すると、大きな声を上げながら、ディオンは背中を弓形ゆみなりに激しく反らした。


「くっ、動くぞ」
「ぁ……あっ、あっ、んん。ああっ、はげ、しっ、んあ……ふ、むう……ん、ふぁ」


 涙を流しながら、必死でしがみついてくるディオンが愛しい。腰に両脚を絡ませることで、自ら深くさせていることに気づいていない。
 堪らなくなって、ディオンの舌を甘噛みしながら吸うと、ディオンの中はビクビクと震えた。


「きっつ、フッ、そんな食いつくなよ。ちゃんと気持ち良くしてやっから」
「ああ、ちがっ……そんなこ、と、してなっ……あっあっああっ! 激しっ、もっとゆっくり」


 潤滑油の代わりに使ったクリームなのか、俺の先走りなのかも分からない、いやらしい音が、ディオンの尻に当たる度に部屋に響く。
 何も知らないはずのディオンが、俺のせいで淫らに乱れている。
今、この姿を誰かが見ても、ディオンだと気がつかないだろう。


「はあ、かわいっ」
「へ? あ、ひゃんっ」


 ディオンが一生忘れないように。初めて知る快楽の虜になるように。丁寧に、乱暴に腰を打ちつける。


「あっあっあ、なんか、くるっきちゃう!」
「いいぜ、一緒にイこう」
「んっんん、はっ……あん、あっ、やああっ……あ、出て…る」
「くっ」


 激しい快感に戸惑い、身体を痙攣させながらディオンは達した。
その刺激で締めつけられ、俺もディオンの中で達する。


「あ……お腹、じわじわする。あついのが、流れてるようっ」
「悪い。あとでちゃんと掻き出すから」
「んんっ。なんれ、抜かないの? 抜けよ、ばかぁ」


 本当は、外に出した方がいいのは百も承知だった。
だけど、なんかの例外で孕めばいいと思った。
中から流れないように、達したまま、秘部に蓋をして馴染ませるように、腰を揺する。


「んっ、ああ。や、何で硬くなるんだよ、この、獣っ」


 それは不可抗力だ。とろとろの中をきゅっと締めつけられれば、誰だって勃つ。
ディオンが悪いのだから、最後まで責任を取ってもらおう。


「もう1回」
「あっうそ、無理だから。死ぬっ、あっいい、ああっ」


 そして、ディオンのソレが勃ち上がったのを確認し、精液がじゅぷじゅぷと泡立つまで続いた。


「死んじゃうぅっ。とまって、やあ、アシルっ」
「一生俺と一緒にいるよな」
「んん、いるっ、いるからあ」
「じゃあ、お前の1番は誰? 誰の嫁になるんだ」
「アシルっ、アシルが、いちばんっ」
「誰に嫁ぐの? ディオン、早く答えないと動くの止めるよ」


 意識が朦朧としているディオンに、思い通りの言葉を言わせていく。
快楽ばかりに夢中になり、答えが返ってこないと、律動を止め、言うまで焦らす。


「あっやだ、動いて。アシルのお嫁さんになるからぁっ」
「約束、破ったらどうなるか分かってるよな」
「んっだい、じょうぶ。ずっと、いっしょ」
「ディオンっ」
「んん」



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