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バリスタ、転生する
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何だ? うるさいな。
同室の見舞い客だろうか。
っあ~、頭いてぇ。
今何時だろう。店のオープン……いや、さすがに今日は休みか。
待てよ? 休んでる場合じゃない。一刻も早く、大会に出すコーヒーを仕上げないとマズイ。
でも俺って、吐血したんだよな。やっぱ、胃がお亡くなりになってたか。
ダメじゃん。コーヒー飲めねー。
もう無理だ。棄権しよう。
いっそチーフに出てもらうってのは、どうだ。
うん。アリだな。
そうと決まれば……あれ、身体が動かない。目も開かない。
えっ、ちょっと何事。
俺、そんな重症なの?!
「ピィ、ピヨォ~」
鳥の鳴き声? ずいぶん近いな。病室に入って来れるもんなのか?
「ピーピヨヨヨヨ」
何でこの鳥は泣いてるんだ。
は、泣く? 鳴くじゃなくて?
どんな鳥か見えないから分からないけど、何でだろ。
オーナーの泣き顔が浮かぶなあ。
ごめん、オーナー。
バリスタチャンピオン、無理だったよ。
「ピヨォー!ピヨヨヨー───!!」
聞いてはいけない副音声が聞こえた。
「ピヨー!」
また聞こえた。
オーナーの呪いか? 俺が大会に出られないから。
いや、勘弁して。申し訳ないけど、今限界なんですよ。俺の胃が。
ああ、もうピーピーうるさいなっ。
ちゃんと起きてるから、静かにしてくれ。
────パチっ
「……………(シマエナガ?)」
「ピッッ?!」
「「「─────っ!?」」」
目を開けば、ドアップの白い羽。
瞼の動きに驚いたのか、バッサバサと羽ばたくもんだから地味に痛い。目に入った気がする。
「エドアルドっ!
ああっ! なんてこと! 神よっ、感謝いたします!」
「良かった、本当に良かった。
よく頑張ってくれた」
「奇跡だ!」
「奇跡だわっ」
どちら様で?
なんだ、この煌びやかな人たちは。
外国人か? 彫りも深いし、髪も瞳も明るい。
服装はちょっと見慣れないけど。
俺の交友関係が知らぬ間にグレードアップしている。
「エドアルド君、聞こえるかな」
いや、慧です。もしや、病室をお間違えなのでは。
「ピィッ、ピヨォー!」
「エドアルド、私たちの声が聞こえるか?」
違うと伝えたいのに、声が出ない。
息だけがスースー漏れるだけだ。困ったな。
「ふむ、声が出せないようですね。
無理もないでしょう」
「イーシャ殿、どうすれば」
「とにかく体力を回復させる必要があります。
生まれてから3年も寝たきりでしたからね。
今まで以上に変化に気をつけるべきです」
「どれくらいかかるのだろうか」
「……そうですね。健康体が一時的に植物状態になったのとは、訳が違います。
恐らく5年……それ以上かかるかもしれません」
「5年! この子は、まだ3歳なんだぞ。それなのにっ」
うわ、お通夜状態じゃん。
すみません、そのエドアルド君は、俺じゃないです。
マジでどうなってんだ。
「ピヨーピィ、ピーピー」
なんだ、オーナー。お見舞いに来てくれたんですね。
って、オーナー?! 何処にいるんですか。
俺の代わりに説明してください!
「《いや~、無理だよ。だってキミ、もう慧君の姿じゃないもん》」
急にオーナーの声がダイレクトに?!
しかもハッキリ聞こえる。
周りの人には聞こえてないのか?
「《脳内に直接話しかけてるんだ。以心伝心だねっ》」
は?
冗談言ってないで、早く姿見せてくださいよ。
「《いやいや、現に今キミと会話できてるでしょ。
ほら、慧君が救急車で運ばれた日さ、店長と九段下の内装見に行ってたじゃない。
で、泉君が電話くれたわけ。まいっちゃうよねー。
いい歳して、焦ったなぁ。だからね、慌てすぎて階段から落っこちたんだよ》」
えっ大丈夫なんですか! 怪我は?
2号店のオープン、来月ですよね。間に合うんですか。
「《うん、死んじゃったから分からない。
たぶん、店長と泉君が何とかしてくれてんじゃないかな。
泉君まだチーフでしょ。最初は店長が2号店、オーナーの僕が本店のサブで入って、泉君に店長代理させて、ゆくゆくは彼を2号店の店長にしようと話してたんだ。
けどさー、死ぬなんて思わないじゃん。まあキミよりマシだけどね》」
死んだ? オーナーは、何を言ってるんだ?
「《混乱するのも無理はないよ。僕だって受け入れるの大変だったんだから。
まあ、続けるとね。慧君は、胃に穴開けて死んだんだ。
普通は、1~2ヶ月入院すれば治るのにさー。びっくり、ある意味すごいよ。
そして最大の驚きポイント!
僕等2人でファンタジー世界に転生したんだよー!!》」
最初から最後まで意味が分からん。
階段から落ちて、頭やられたんじゃないか。この人。
「《むむっ。元雇い主に対して失礼だぞ~。
諦めて、受け入れたまえ。
慧君はね、今3歳児だよ。エドアルドっていう、貴族の子供。
そして僕は、キミの視界に入ってるだろう》」
頭が痛い。
ダメだ。もう一度寝よう。そしたら、夢から覚めて────……
「《見てくれ。綺麗な毛並みだろう。
どうやら鳥に生まれ変わったらしい。子爵家の人からは、雪の精霊って呼ばれてるよ》」
まさか、シマエナガ擬きがオーナー?!
あり得ない。誰かとびきり濃いコーヒーを淹れてくれ。
「《現実逃避はやめなさい。だいたいキミの死因、コーヒーみたいなもんだからね。穴開けたんだよ! 胃に!》」
同室の見舞い客だろうか。
っあ~、頭いてぇ。
今何時だろう。店のオープン……いや、さすがに今日は休みか。
待てよ? 休んでる場合じゃない。一刻も早く、大会に出すコーヒーを仕上げないとマズイ。
でも俺って、吐血したんだよな。やっぱ、胃がお亡くなりになってたか。
ダメじゃん。コーヒー飲めねー。
もう無理だ。棄権しよう。
いっそチーフに出てもらうってのは、どうだ。
うん。アリだな。
そうと決まれば……あれ、身体が動かない。目も開かない。
えっ、ちょっと何事。
俺、そんな重症なの?!
「ピィ、ピヨォ~」
鳥の鳴き声? ずいぶん近いな。病室に入って来れるもんなのか?
「ピーピヨヨヨヨ」
何でこの鳥は泣いてるんだ。
は、泣く? 鳴くじゃなくて?
どんな鳥か見えないから分からないけど、何でだろ。
オーナーの泣き顔が浮かぶなあ。
ごめん、オーナー。
バリスタチャンピオン、無理だったよ。
「ピヨォー!ピヨヨヨー───!!」
聞いてはいけない副音声が聞こえた。
「ピヨー!」
また聞こえた。
オーナーの呪いか? 俺が大会に出られないから。
いや、勘弁して。申し訳ないけど、今限界なんですよ。俺の胃が。
ああ、もうピーピーうるさいなっ。
ちゃんと起きてるから、静かにしてくれ。
────パチっ
「……………(シマエナガ?)」
「ピッッ?!」
「「「─────っ!?」」」
目を開けば、ドアップの白い羽。
瞼の動きに驚いたのか、バッサバサと羽ばたくもんだから地味に痛い。目に入った気がする。
「エドアルドっ!
ああっ! なんてこと! 神よっ、感謝いたします!」
「良かった、本当に良かった。
よく頑張ってくれた」
「奇跡だ!」
「奇跡だわっ」
どちら様で?
なんだ、この煌びやかな人たちは。
外国人か? 彫りも深いし、髪も瞳も明るい。
服装はちょっと見慣れないけど。
俺の交友関係が知らぬ間にグレードアップしている。
「エドアルド君、聞こえるかな」
いや、慧です。もしや、病室をお間違えなのでは。
「ピィッ、ピヨォー!」
「エドアルド、私たちの声が聞こえるか?」
違うと伝えたいのに、声が出ない。
息だけがスースー漏れるだけだ。困ったな。
「ふむ、声が出せないようですね。
無理もないでしょう」
「イーシャ殿、どうすれば」
「とにかく体力を回復させる必要があります。
生まれてから3年も寝たきりでしたからね。
今まで以上に変化に気をつけるべきです」
「どれくらいかかるのだろうか」
「……そうですね。健康体が一時的に植物状態になったのとは、訳が違います。
恐らく5年……それ以上かかるかもしれません」
「5年! この子は、まだ3歳なんだぞ。それなのにっ」
うわ、お通夜状態じゃん。
すみません、そのエドアルド君は、俺じゃないです。
マジでどうなってんだ。
「ピヨーピィ、ピーピー」
なんだ、オーナー。お見舞いに来てくれたんですね。
って、オーナー?! 何処にいるんですか。
俺の代わりに説明してください!
「《いや~、無理だよ。だってキミ、もう慧君の姿じゃないもん》」
急にオーナーの声がダイレクトに?!
しかもハッキリ聞こえる。
周りの人には聞こえてないのか?
「《脳内に直接話しかけてるんだ。以心伝心だねっ》」
は?
冗談言ってないで、早く姿見せてくださいよ。
「《いやいや、現に今キミと会話できてるでしょ。
ほら、慧君が救急車で運ばれた日さ、店長と九段下の内装見に行ってたじゃない。
で、泉君が電話くれたわけ。まいっちゃうよねー。
いい歳して、焦ったなぁ。だからね、慌てすぎて階段から落っこちたんだよ》」
えっ大丈夫なんですか! 怪我は?
2号店のオープン、来月ですよね。間に合うんですか。
「《うん、死んじゃったから分からない。
たぶん、店長と泉君が何とかしてくれてんじゃないかな。
泉君まだチーフでしょ。最初は店長が2号店、オーナーの僕が本店のサブで入って、泉君に店長代理させて、ゆくゆくは彼を2号店の店長にしようと話してたんだ。
けどさー、死ぬなんて思わないじゃん。まあキミよりマシだけどね》」
死んだ? オーナーは、何を言ってるんだ?
「《混乱するのも無理はないよ。僕だって受け入れるの大変だったんだから。
まあ、続けるとね。慧君は、胃に穴開けて死んだんだ。
普通は、1~2ヶ月入院すれば治るのにさー。びっくり、ある意味すごいよ。
そして最大の驚きポイント!
僕等2人でファンタジー世界に転生したんだよー!!》」
最初から最後まで意味が分からん。
階段から落ちて、頭やられたんじゃないか。この人。
「《むむっ。元雇い主に対して失礼だぞ~。
諦めて、受け入れたまえ。
慧君はね、今3歳児だよ。エドアルドっていう、貴族の子供。
そして僕は、キミの視界に入ってるだろう》」
頭が痛い。
ダメだ。もう一度寝よう。そしたら、夢から覚めて────……
「《見てくれ。綺麗な毛並みだろう。
どうやら鳥に生まれ変わったらしい。子爵家の人からは、雪の精霊って呼ばれてるよ》」
まさか、シマエナガ擬きがオーナー?!
あり得ない。誰かとびきり濃いコーヒーを淹れてくれ。
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