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1話新見晶、異世界に旅立つ
しおりを挟む俺、新見晶は何処にでもいる16歳のごくごく普通の一般男子学生。
成績は平均並みで、特に周りに目立つ要素がないつまらない人間だろう。
だが、それは周りの同級生や友達が俺の趣味を知らないからそう思われているだけである。
何故知らないのか?
それはその趣味が今の同級生等の趣味とかけ離れているからである。
小学生の頃、家族と赴いた博物館。
その博物館で開催されていた展示イベントが俺の心に響いた結果、今に至るわけだが、その展示イベントがなければ恐らく俺の趣味は今とは全く違う、今時の学生の趣味であるゲームなり漫画なり、もしかすると好きな人が出来て恋愛なんかしていたかもしれない。
確かにそんなあったかも知れない未来もいいかもしれない。
だけど、今の自分の趣味や今の自分を否定出来るかと言われればそれは否であると断言出来る。
別に友達がいないから悪であるわけではない。
友達と放課後や休日に集まってワイワイ遊ぶのが悪でもない。
そう、人それぞれなのだ。
そんな俺は小学生の頃に出会った展示イベントである趣味を持ち始めた。
それは歴史的価値のある刀剣が展示されているイベントだった。
かの有名な草薙剣、十握剣、本物かは分からないが最近発見された今剣、そして幕末で名を馳せたかの壬生浪士が所持していた菊一文字。
他にも沢山の刀剣が展示されているイベントで、その美しい姿形をした刀剣に一瞬で魅了された俺が刀剣の趣味を持つのは必定だったと今でも思う。
それからというもの、俺は刀剣に関する書籍やそれにまつわる歴史背景についても知りたいという欲求を抑えきれず、色々な資料を集め始めた。
その結果、自分の部屋だけでは収まりきらない書籍や資料は親の部屋と妹の部屋へと避難させていたりもする。
当然の如く、白い目を向けられ呆れられたりもしたが、仕方がないのだからしょうがないじゃないかと自分に言い聞かせている。
そんな日々を過ごして今現在に繋がるのだが、明日は待ちに待った刀剣イベントが開催される。
そのイベントでは事前に行われた抽選で限定1名だけあのかの有名な菊一文字を手に取る事が出来るのだが、奇跡的にその抽選に見事当選する事が出来たのである。
このチャンスを逃す馬鹿はいないと断言出来る。
それぐらい俺の中で人生を変えるんじゃないかって程、大きな出来事なのだから。
そしてイベント前日の夜、自分の部屋の壁際に設置されているベッドに横になり待ち遠しい明日を迎えようとしたが、なかなか眠る事が出来ずにいた。
枕元に設置されている時計がカチカチと明日に向かって時計の針が秒針を刻む。
普段とは1秒1秒の時間の流れ遅く感じる。
そんな苦痛の時間をベッドで過ごしていると、時計の針は刻々と進み、朝の6時頃を時計の針が示すと共にカーテンから日が明けた事を知らせる様にカーテンの隙間から朝日が溢れてくる。
ガバッと布団を蹴飛ばし、準備をするには早すぎる時間だがお構いなしにいそいそと着替えを済ませる。
リビングに降りて、キッチンに立ち、朝食を作っている母親に朝の挨拶をかける。
「おはよう母さん!!朝食出来てる?」
「……おはよう。相変わらずこんな日だけは起きるのが早いんだから。普段の日もこれぐらい早く1人で起きてくれたらお母さんは助かるんだけどね」
呆れながら返事をする母さんは、フライパンで焼いていた目玉焼きをトマトやレタスが添えられた食器に乗せ、俺の座る食卓に運ぶ。
「今日は特別だからね。待ちに待ったイベントだし、気合が入ってるから」
運ばれた朝食をガツガツと口に放り込みながら咀嚼する。
側から見ると味わって食べている様には見えない食べ方だろう。
「…ホント、あんたの趣味には頭が上がらないわ。やめなさいとは言わないけど、大学に進学するつもりならしっかり勉強もしなさいよ」
「分かってるよ。その話は何度も聞いてるから。ごちそうさま!んじゃ、行ってきます!」
はいはいと無意識に母親に返事をし、用意された朝食を完食する。
それと同時に俺は流れる様に椅子から立ち上がり、玄関に向かう。
そそくさと靴を履き、玄関の扉を開け放ち、朝日が眩しい世界へと飛び出した。
そして俺はその道中に不慮の事故に遭い、この世界から弾き出されたのだった。
待ちに待った菊一文字に触れる事すら出来ずに
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