無表情令嬢は死亡フラグを回避したい!!

Alpha

文字の大きさ
上 下
12 / 12

初めての寮生活

しおりを挟む

 
初日のオリエンテーションが終わり、私が向かっているのは、これから生活することになる寮部屋である。
取り巻き(仮)達の放課後のアポは全て丁重にお断りしておいた。さすがにちょっと初日は慎重に行きたい、何よりも心が休まらない。

他の生徒の波に乗って寮に行けばいいだろうと思ったのだが、教員から「貴方はこっちの寮では無いですよ」と別の場所を案内されてしまった。

どうやら私の寮は別の場所にあるらしい。

案内された場所に辿り着き、寮官らしき女性に話しかけると別の場所から出てきたメイド服の女性に部屋へと連れていかれた。

「こちらがクレア様のお部屋でございます。」

案内された部屋に入ると私は驚愕した。
何せゲームの中で見た寮部屋とはあまりにも違っていたからだ。

(えっ豪華すぎない!?)

「こちらの学園で過ごされるにあたって、不自由無くお過ごしになれるようできる限りの準備はさせて頂きました。各フロア担当のものが何名かおります。御用がございましたらドア近くのベルを鳴らしてお呼びくださいませ。」

部屋を見渡すと見覚えのある家具が目につく、クローゼットを開けるとやはりこちらも何回か目にした覚えのあるドレスやら洋服やらが詰まっていた。

(もしかして、入学前にせっせと使用人達が準備していたのはこれ?)

まさかの実家持ち込みだったとは。
でもおかげで毎日ニーアがいなくても何とかなりそうだ。

どうやら着替えなど必要なことがあれば直ぐにベルを鳴らしてメイドさん達を呼んでいいらしい。

至れり尽くせりだなぁと感心していると「それとこれを」と1枚の封筒を手渡された。
封筒を手渡したメイドはこれにて失礼します、と部屋を出ていってしまった。
この封筒がなんだったのか聞きたかったのだが、まあそれは開ければ済む話か。

さっきちらりと引き出しを見た時に実家で愛用している文房具セットの箱を見つけた。
もし内容が変わってなければ…

「お、あったあった。」

レターナイフを取り出し封蝋を開ける。

(誰も見てないし、いいよね)


部屋のベットに制服のまま倒れ込み封筒の中身を確認する。
封筒もそうだが紙質が中々良く丁寧な装飾がされていた。
実家からかと思っていたがどうやらそうでは無さそうだ。


「春麗会…」


そこには春麗会のお知らせと書いてあった。

春麗会とは中等部、高等部に存在するプリンシパルと呼ばれる集団が主催するちょっとしたウェルカムパーティーのようなものだ。

プリンシパルとはその者の家柄、学内成績など様々な点を加味して選ばれる超エリート集団である。
プリンシパルに選ばれた者は制服が違う、特別なサロンを利用出来るなど色々優遇措置が取られると共に、生徒の憧れの的である。

一応生徒会とは別に存在しているが、代々生徒会長、生徒会メンバーの大半をプリンシパルが務めることが多く実質学内権力を握っている集団でもある。
プリンシパルは毎年選考が行われるが1度入った者が抜ける事は滅多になく、また勿論だが入る難易度もめちゃくちゃ高い。

そして春麗会は進級のお祝い&プリンシパルに新規加入するメンバーの歓迎会が主な目的だが次期プリンシパル有力メンバーを招待することもあるのだ。

ちなみに、ゲーム本編では生徒会長だったノイシュが面白半分に成績優秀者だった主人公のアンナを招待し、平民をプリンシパルに入れるつもりか!とウルティアやクレアとバチバチに揉めるイベントだ。

まあ要するに、お偉いさんがいっぱい集まるので主要人物もいっぱい来る=今後の私に関わる一大事なのである。

「まさか初等部の時、しかも入学早々招待来るとは思ってなかった…。」


ゲームでは確かに招待を受けている人達がぽつぽつといたが確認できる限りどれだけ早くても中等部か初等部高学年辺りからだったので、さすがに入学早々は来ないだろうと思って油断していた。
まあよくよく考えれば4つしかない公爵家のうち3人+第2王子が初等部に集まってる怪物世代なのでおかしくは無いのかもしれないが。

「春麗会ってなるとプリンシパル今どの世代だ?主要人物誰?…いや、本編出てこない人いっぱいいるよな。でも後々の生活を考えると仲良くしておかないと…」


頭をうんうんと悩ませていると寮の扉がコンコン、とノックされた。

「どなたですか?」

「突然申し訳ございません、隣の部屋のマーガレット・ミラーと申します。宜しければご挨拶を、と思いお伺いしたのですが…。」

扉を開けるとそこには栗毛色の髪の毛に綺麗な緑の瞳の女の子が立っていた。

「ご丁寧にありがとう、私は…」
「えっ!?あ、」

私が顔を出した瞬間明らかに慌てだしたマーガレット。理由がわからず思わず挨拶の途中できょとんとしてしまった。

「す、すみません。まさか隣がヴィルデンブルフ公爵のご息女だとは思わなくて…!」

「あら、私の事ご存知だったの?」

「それは勿論!恐らくこの学年で貴方様のことを存じて無い方などいらっしゃいませんわ。それぐらい注目の的でしたもの。」

一目でわかるほど注目を浴びているのはそれはそれで気まずい。クラウスとか王子とかウルティアとかいるからちょっと紛れてると思ったのに…。

「そうなのね…。そういえば、ご用件はなんだったかしら。」

「私としたことが、舞い上がってしまってお恥ずかしいですわ。ご挨拶にと思って大したものでは無いですが茶菓子と茶葉をお持ちしましたの。宜しければ召し上がって下さい。」

「とても美味しそうね、ありがとう。後で頂くわ。」

「お口に合うといいのですが…あ、そうですわ!宜しければこの後一緒に校内を回りませんか?2個上の学年に姉がおりまして、姉に案内をお願いしていたところなんです。」

(ふむ…。これはどうしようか。)

見たところ私だとわかって挨拶に来たようでは無さそうだし、どんなところがあるのか知っておきたい気持ちはある。
同じクラスでは無かったはずだし他のクラスの生徒ともある程度交流しておくべきか。

「ええ、それではお言葉に甘えようかしら。」

私が了承すると彼女はぱっと表情を輝かせた。

「はい!それでは後ほど準備が出来次第またお部屋にお伺いしますね!」

姉に声をかけてくるので待っててくださーい!と走り出し何処かに行ってしまった。

(なんだろう…犬みたいにしっぽふりふりしてる姿が見えそうなぐらい愛嬌のある子だったわね…。)

さて、春麗会のことはとりあえず後にして、彼女が訪ねてくるまで部屋のソファに腰掛けて待つことにしようかしら。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

……モブ令嬢なのでお気になさらず

monaca
恋愛
……。 ……えっ、わたくし? ただのモブ令嬢です。

【完結】義務で結婚したはずの旦那様が、いつの間にか溺愛系でした

アリエール
恋愛
結婚は義務として始めたはずが、いつの間にか溺愛される日々が訪れた美咲。誠一との距離は徐々に縮まり、義務感から本当の愛へと変わっていく。しかし、彼の家族や周囲からのプレッシャーが二人を試す。数々の試練を乗り越えながら、誠一との絆は深まり、ついに未来を共に歩む決意を固める。彼との愛に包まれた幸せな結末が待ち受けている。

モブに転生したはずですが?

佐倉穂波
恋愛
 乙女ゲームっぽい世界のモブに転生したラズベルトは、悪役令嬢レティシアの断罪イベントを「可哀想だけど、自分には関係がないこと」と傍観していた。 しかし、断罪イベントから数日後、ラズベルトがレティシアの婚約者になることが決まり──!?

【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~

鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

アリエール
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

異世界転生したら幼女でした!?

@ナタデココ
恋愛
これは異世界に転生した幼女の話・・・

この異世界転生の結末は

冬野月子
恋愛
五歳の時に乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生したと気付いたアンジェリーヌ。 一体、自分に待ち受けているのはどんな結末なのだろう? ※「小説家になろう」にも投稿しています。

【コミカライズ】今夜中に婚約破棄してもらわナイト

待鳥園子
恋愛
気がつけば私、悪役令嬢に転生してしまったらしい。 不幸なことに記憶を取り戻したのが、なんと断罪不可避の婚約破棄される予定の、その日の朝だった! けど、後日談に書かれていた悪役令嬢の末路は珍しくぬるい。都会好きで派手好きな彼女はヒロインをいじめた罰として、都会を離れて静かな田舎で暮らすことになるだけ。 前世から筋金入りの陰キャな私は、華やかな社交界なんか興味ないし、のんびり田舎暮らしも悪くない。罰でもなく、単なるご褒美。文句など一言も言わずに、潔く婚約破棄されましょう。 ……えっ! ヒロインも探しているし、私の婚約者会場に不在なんだけど……私と婚約破棄する予定の王子様、どこに行ったのか、誰か知りませんか?! ♡コミカライズされることになりました。詳細は追って発表いたします。

処理中です...