無表情令嬢は死亡フラグを回避したい!!

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婚約

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あの最悪な出会いをした選定の儀から約1年。

6歳になった私はいま、父の書斎に猛ダッシュで向かっている。

「おとーさまぁぁぁぁ!!!」

バンッ!!と勢い良く書斎の扉を開くと、父が驚いた顔で聞いてきた。

「どうしたんだいクレア、そんなに焦った顔をして。」

「どうしたじゃありませんわ!!ハイドリヒ家からこ、婚約の打診があったとは本当ですか…?」

「ああ、その話か。本当だよ、クレアと是非、と。」


何だ、そんなことかと安心したような表情になる父。
いやそんなことかで済ませられるか!!!
肩で息をしながら父に聞いた衝撃の事実に混乱しながらふとこんなことを考える。

(もしや、私があの時の令嬢だとバレていない…?)

でも、普通婚約者選ぶ時に相手の顔見ないで選ぶなんてこと有り得るのか?
知らない家ならまだしも、公爵家同士で家の繋がりもそこそこある。というよりハイドリヒ家とヴィルデンブルフ家は父親同士の仲がかなり良い。学生時代からの親友だと話していたのを聞いたことがある。
同い年の子供がいるのに、親同士が話題に出さない訳が無い、写真位は持っているはず。何せ我が家でさえクラウスの写真は持っているのだから。

(大分前に見せてもらったけど、実際に選定の儀で見てるし、ゲームの時の顔からそのまま幼くした感じだったから新鮮みは無かったのよね…。)

ちなみにクラウスと婚約出来ないのではという不安を抱えていた私は、この1年で自分に出来る限りの事をしようと色々なことに取り組んでいた。

まず最初に父主導による笑顔のトレーニング。結果は…まあぼちぼちというところだ、目元が動かせるようになったぐらい。継続は力なりとも言うのでこれからも続けていく所存である。 
ちなみについでと言ってはなんだが、家族との親交が深まり、ある程度父親の表情が読み取れるようになってきた。
私が最初に父が驚いた顔をした、と判断したのも成果の1つである。
ちなみに、バタバタしていた冒頭のくだりだが、他の人からしたら2人とも真顔で話しているようにしか見えないはず。実におかしな光景だが、今の私達の表情筋のベストがこれなので致し方ない。

次に魔法のコントロール。
原作と同じく氷の魔法の適正を持つ私は、これまた父が呼んでくれた師匠とともに日々修行に勤しんでいる。
何故魔法のコントロールを重点的にするかって??魔法がまず何たるかは後々説明するとして、結論から言うと強くなるため、自分の身は自分で守れるようにするためである。

実は原作では、学力の成績だけではなく魔法の実力も成績として加味される他、魔物に襲撃されたり、他国とのいざこざがあったり、割とハードなイベントも存在する。
主人公は強い攻略対象達に守られるだろうが私自身はもう自分で身を守るしかない。
それに理由はもうひとつ、万が一追放エンドに行けたとしてもその後は魔物がわんさかでる辺境の修道院にぽいされて後は自分でご勝手にどうぞスタイルなのである。つまり、ある程度強くないと自分1人では生きていけない。

(まあ、クラウスとの婚約が無くなったらその追放エンドさえ辿り着けないかもしれないって思って焦っていた訳だけど…。)

その他にも基本的な社会マナー諸々、他国の情勢、歴史等頭にとにかく詰め込んで、生き残るにはどう立回るのが正解なのか永遠に頭を回転させていた。

少し脱線してしまったが、つまり本当に私はクラウスとの婚約が無くなる前提でこの1年必死に努力していた訳である。
しかしまあなんとそのクラウスとの婚約の話が上がって来たというでは無いか。

もしクレアが嫌だったら断ってもいいんだよ、と言ってくれる父だが、本編ルート、自分の知っている環境に近づける千載一遇のこのチャンス。逃してなるものか。

「この婚約お受けしますわ!!!」

「ず、随分と乗り気だね…?」

「おほん、そんなことございませんわ。」

「そうかい…?まあ、いい。婚約について後で話をしようと思っていたんだけど、ちょうどいいからここで話そうか。3日後に、お互いの顔合わせということでハイドリヒ家に伺うから、準備しておいてね。写真で見たことはあってもお互いに会うのは初めてだろう?」

「は、初めて…そうですわね…。」

いや本当はバリバリに会ってます。

「あの、お父様?」

「なんだい?」

「もう少し後…具体的に言うと私の顔立ちが変わってくるくらい成長した後に顔合わせではダメですの…?」

何を言っているんだ私の娘は、とでも言いたげな困り顔になる父。

いやでも限りなく低い可能性、相手が私の顔を知らないという可能性が…!

「それはちょっと難しいかな…。ごめんねクレア。」  

「いや、そうですわよね…。」  

これはどうやら覚悟を決めるしか無いらしい。
今度こそはしくじらないぞ!と心に決め、来たる顔合わせの日まで公爵令嬢としての仮面が剥がれないようにマナーを念入りに確認しながら過ごしたのであった。

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